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星河の覇皇

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第七十部第二章 同士討ちその二十

「それでも美味いな」
「はい、いけますね」
「これも密造酒ですよね」
「それかどっかからかっぱらった酒」
「そんなのですよね」
「それでもな」
 そうした酒でもとだ、古参の海賊は言った。
「いけるな」
「はい、幾らでも飲めます」
「これはいけますね」
「じゃあどんどん飲みますか」
「そうしますか」
「海賊は酒だ」 
 このことは古来からだ、何しろ水ではなく酒を飲んでいた位である。
「だからな」
「はい、どんどん飲めばいいですね」
「酒については」
「もうあるだけ飲む」
「そうすればいいですね」
「そうしろ、そうして気分転換もしろ」
 こう言って下っ端達にも飲ませる、そしてだった。
 彼等は酒も飲んでいった、海賊本来の仕事ではなく内輪揉めや粛清それに海賊同士の抗争が続く中で。
 このことはテロ組織やカルト教団でも同じだった、外縁部には様々な狂信的なカルト教団が連合から逃げてきて活動しているが。
 彼等も粛清が続きだ、多くの組織が弱体化していた。
 その状況を見てだ、ある教団の教祖は言っていた。
「おかしいぞ、最近」
「狭義に反する者が多いですね」
「尊師のお教えに反発する者が」
「何かとです」
「多いですね」
「多過ぎる、信者達からのお布施もだ」
 見れば丸々と太った醜い中年男だ、その男が上座から言っていた。
「減ってきている」
「上納を渋る様になってきています」
「尊師を嘘吐きだと言ってです」
「そのうえで教団を離れようとする者も出て来ています」
「幹部の叛乱だけではなく」
 そうしたことも起こっているというのだ。
「結果として我が教団の勢力は衰えてきています」
「それは無視出来ないものです」
「近頃そうしたことばかり起こっています」
「奇怪なことに」
「何故だ」
 尊師と呼ばれる男は言った。
「続けて起こっている」
「何かあるのでしょうか」
「神の啓示でしょうか」
「それでしょうか」
「そうやもな」
 カルトとはいえ宗教団体としてだ、尊師は言った。
「これは」
「ではどうされますか」
「ここはどうされますか」
「怪しい、神に反する者達をだ」 
 教団の中のというのだ。
「生贄にするのだ、いいな」
「はい、片っ端からですね」
「神への生贄にしますか」
「生贄も減っていましたし」
「そうしますか」
「都合がいい、余裕があれば近くから人を攫ってそうしていたが」
 生贄にしていたのだ、この教団は彼等が信じる神に生きた人間を生贄として捧げる教義なのだ。その為連合でカルト教団と認識し取り締まられたので連合の外に逃げてそのうえで活動を続けているのだ。
「しかしだ」
「今はですね」
「それが出来る状況ではないですね」
「叛乱が続き」
「それで生贄の確保どころではなくなっています」
 外への活動を行える余裕が出来なくなっているのだ。
「では、ですね」
「不穏な者達を消していきますか」
「片っ端から」
「生贄を捧げる為に」
「そうしますか」
「うむ、そうしよう」
 こう言って実際にだった、教団は次から次に教団内の少しでも怪しい者を捕まえ彼等の神への生贄としていった。それが結果として彼等の力を弱めていった。 
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