八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第二百十三話 明るい宗教その八
「面白いって思ってるわ」
「面白いんだ」
「ええ、面白いわ」
言いながらにこりと笑った。
「そう言われるのってね」
「それだけインサイを使ってるから?」
「あれ入れると本当にお料理が美味しくなるから」
「そう思うんだね」
「そうよ、ベトナムもタイもインサイがないと」
それこそというのだ。
「物足りないわ、どんな美味しいもの食べてもね」
「ベトナム料理だとだね」
「まずはインサイよ、それでね」
「インサイの匂いが好きで」
「その匂いがするって言われると嬉しいわ」
「そういうことなんだね」
「そうなの、あとベトナムも変わったわ」
ダオさんは僕に今度はこんなことを言ってきた。
「よくお祖父ちゃん達言ってるわ」
「昔のベトナムと今のベトナムは違うんだね」
「ええ、昔のベトナムは戦争ばかりで」
その二次大戦後の長い戦いの歴史だ、尚ベトナムはカンボジアに侵攻したりしてとかく長い間戦争と関わっていた。
「国を守るだけで必死だったから」
「生活も苦しかったんだ」
「そうだったの、けれど戦争も終わって」
カンボジアからも軍を撤収させてだ。
「平和になってソ連も危うくなって」
「そこから崩壊したしね」
「これからは経済ってなって」
「ドイモイ政策はじめたんだったね」
ドイモイとは刷新という意味だ、中国みたいに市場経済を取り入れて貿易や他国の企業の誘致を積極的に行う政策だ。
「そうだったね」
「そう、それでね」
「内政とか経済の政策に力を入れて」
「そうなってね」
それでというのだ。
「随分変わったって言われてるわ」
「今は観光にも力入れてるしね」
「これが大成功してるの」
観光を前面に出してというのだ。
「世界中から観光客来てくれてね」
「ベトナムの名所を観て回って」
「お金落としてくれてね」
そうなってというのだ。
「ベトナムはそちらでも儲けてるのよ」
「経済政策成功しているんだね」
「戦争の暗いイメージは」
ベトナム戦争に代表されるそれはというのだ、日本でも六十年代後半から暫くベトナムのイメージは戦争だったらしい。
「もうなくなったって言われてるわ」
「そのことはいいことだね」
「そうした意味で変わったって言ってるの」
ダオさんのお祖父さん達はというのだ。
「随分とね」
「実際に変わったんだね」
「ダオも思うわ、空爆とかゲリラとか枯葉剤ってもう日本でもイメージしないでしょ」
「イメージするのはアオザイとか生春巻きとかだね」
僕はダオさんに笑って答えた。
「あと水牛」
「その三つよね、水牛って台湾でも有名だけれど」
「ベトナムでもだね」
「そう、ベトナムの象徴って言っていいわ」
「そうした生きものなんだね」
「そうなの、とにかくもうね」
「戦争のイメージはなくなったんだね」
こうダオさんに尋ねた。
「ベトナムも」
「そうなったわ、有り難いことにね」
「やっぱり戦争のイメージはね」
「暗いでしょ」
「どうしてもね」
「実際ベトナムって明るい国よ」
ダオさんははっきりと言い切った。
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