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提督はBarにいる。

作者:ごません
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磯風に教える、提督流オトコ飯・1

「司令官、頼む!この通りだ!」

「って言われてもなぁ……」

 目の前には土下座のまま、有らん限りの声量で叫ぶ磯風の姿がある。いつかは来るんじゃないかと予想してたが、出来れば来ないで欲しいなぁと思っていたイベント。

『磯風に料理を教える』

「浜風や浦風、それに諸先輩方から聞いたのだ!司令はあの比叡さんの料理下手を克服させたと!」

「あ~、まぁ、そんな事もあったなぁ」

「あの比叡さんだぞ!?飯マズ過ぎて『御召艦』ならぬ『汚飯艦』なんて呼ばれてる比叡さんが治せたんだ!私の食べられないような料理も、食べられる物に出来るはずだ!」

「サラッと比叡ディスんのやめーや」

 確かに、ウチの比叡に泣き付かれて料理の指導をした事はある。そして今では決して料理が上手いとはお世辞にも言えなくとも、人並みには出来るようになった。その評判を聞き付けて、他の鎮守府の比叡にまで料理を教えてくれ、と頼まれる程だ。

 だが、それは本人の意識改革と絶え間ない努力のお陰だ。俺もきっかけ作りと技術的な指導はしたが、基本は比叡本人が料理が上手くなりたいと純粋に学んで、それを未だに実践している結果だ。

「お前、本当に料理が上手くなりたいと思ってんのか?」

「……もう、嫌なんだ。私が台所に立とうとする度に浜風や浦風、他の皆の顔が僅かに歪むのを見るのは」

 ……皆必死にポーカーフェイスを演じようとしてるんだろうなぁ。だが、本能的な忌避感は拭い切れない。それは生物的な危機回避をしようとする本能の部分だからだ。

「解った。料理は教えてやる」

「ほ、本当か!?」

「ただし!その前にお前がどんだけ飯マズなのかをキッチリと自覚させる事から始める」

「わ、わかった……」




 使うのは俺が比叡に飯マズを自覚させる為に見つけた、『飯マズ6ヶ条』だ。これに半分以上当て嵌まると、そいつは飯マズの可能性が非常に高い。

1.飯マズは味見をしない。

 よく聞く話だが、飯マズの人間は料理は作るクセに味見はしない。それも、頑ななまでに。味見は摘まみ食いではなく、味の調整に必要不可欠な物だ。だから味見をしてくれ、死人が出る前に。




2.飯マズは計量道具を使わない。

 『調味料は目分量で入れる』。プロの料理人や何十年も家庭料理をこなしてきたベテラン主婦(主夫)の人達なら安心して見てられるが、料理をあまりした事が無い人やましてや飯マズがそれをやると大惨事を引き起こすのがお約束のパターン。なのに計量道具を使わない。なんでや。知り合ってすぐの人が怪しいと思ったら、『大さじって何mlだったっけ?』としれっと聞いてみよう。『量った事無いから解んない』『大さじってスプーンの奴でしょ?5ml位じゃないの?』という返事が来たら少し怪しんだ方がいいだろう。



3.飯マズは不味くて料理を捨てた事が無い。

 『飯マズは味見をしない』というのは大概の飯マズに当てはまる不文律だ。味見をしないからこそ、自分の料理が不味いかどうかが解らない。では飯マズがどういう観点で料理を捉えているかというと、

『この食材は健康に良いから食べよう』

とか、

『残り物を使い切れてラッキー☆』

 等、味は二の次三の次位に考えている事が多い。それでも、自分の作った飯マズ料理を自分で食べて完食するならまだ善良な方だ。最悪な飯マズは『作っている最中にお腹一杯になっちゃって……』等と言って自分の作り出したバイオ兵器を処理せず、他人に押し付けておいて、数時間後に腹が減ったと菓子パン等をかじったりする奴がいる(実体験)。




4.飯マズは料理の美味しさ=努力の量と思っている事が多い

 文章の通りだ、クソッタレ。飯マズの奴は『努力をすれば料理は美味くなる』という謎の信仰心を持ち合わせていやがるから、料理をするという事に、更に努力してしまう……それも、明後日の方向への努力をな。例を上げると、『レシピにはない謎の余計な一手間』とか、『傷んだ食材の再利用』なんていうどう考えても飯が不味くなる要素しかない努力をしやがる。

 飯マズか否かをを見破る為の簡単な質問を考えてみた。料理をしていると高確率で発生する、『余った食材の扱い方』を尋ねてみると、その人が飯マズか否かを判断しやすくなる。

Q:料理をしていて余った食材をどうしていますか?

料理上手な人「品数とか栄養バランス考えて、簡単な副菜にしちゃうかな。または常備菜とか」

普通の人「腐らせると勿体無いし、冷凍してるよ?」

料理が苦手な人「余らせちゃって腐らせたりしちゃう。どうすればいいかな」

飯マズ「え、余らないよ?全部使い切る為に全部突っ込むから」

 ここで重要なのは、『料理が苦手な人と飯マズは別の生き物』という考え方だ。余らせてしまった食材の処理に困ってしまって、腐らせるというのはまだ可愛い方だ。勿体無いのは勿体無いが、料理をぶち壊しにして誰も食べないで捨てられるよりは無駄が少ないからな。だが、飯マズは味を犠牲にしてでも食材を余らせない方がいい!という謎の思考パターンに陥る事が多い。それは『料理の美味しさに繋がる(ハズの)努力』に当たる行為だからだ。




5.飯マズはレシピ通りに作れない

 何を当たり前な事を、と思うかも知れないが、俺の友人の飯マズ女子の話をしよう。ある日、俺は彼女に料理が上手くなりたいと相談を受けた。今時調べれば幾らでもレシピサイトやらレシピ動画とか出てくるんだから、それを参考に作れば良いだろ?と言うと、彼女は

『そもそもレシピ動画とか見ても意味が解らない』

 と逆ギレしてきた。理由を尋ねてみると、

『そもそも大さじとかひとつまみとか書かれても、量んないから解らない。切り方も火加減もちゃんと料理をする人に向けて書いてあるから読んでもちんぷんかんぷん』

 と言われた。切り方や火加減、調味料の量り方等は小学校の家庭科の授業で教わるハズなのだが……。小中と同級生だったので、同じ授業で学んでいるハズなのに、彼女の料理に関する知識は何処へ行ってしまったのか?永遠の謎だ。ともかく、飯マズは知識が足らずにレシピを読めない場合がある。『レシピ通りに作れば良いだろ?』が地雷の場合があるんだ、注意しよう。






 長々と飯マズの生態について語ってみたが、重要なのは磯風がどれだけ当てはまっているかだ。

「まさか、パーフェクトとはな……」

「め、面目次第も無い……」

 結果は惨憺たる物だった。大さじ・小さじはお玉だと思ってやがったし、味見はいつも姉妹任せ、食材は余らせるなど論外だ!まで言い切りやがった。

「こりゃ相当に骨が折れるな……」

「どうにもならないのか?司令」

 だがまぁ、意識は矯正してやればいいし、他の連中との味覚のズレも直せなくは無いからな。

「とりあえず、作業行程の少なくて済む料理を教えてやっから、暫くはそれで誤魔化せ」

「そ、そんな料理があるのか!?」

 独り暮らしの野郎の強い味方。作業量が少なく、大体の体裁が整えば大惨事になりにくい。それに、複数人分もいざとなれば作りやすいジャンル。それは……

「丼ものに、ご飯ものだ」

 主食であるご飯を直接調理する事で、おかずを作る手間を省き、なおかつ洗い物も少なく出来る。そこに何か汁物でもつければ、立派に1食の食事になる。丼ものやご飯物は、実は飯マズにも優しい料理なんだ。 
 

 
後書き
続きが気になるかも知れませんが、この続きはホワイトデー企画の後で!w 
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