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ロックマンX~Vermilion Warrior~

作者:setuna
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第37話:Weaknees

エックスがクラブロスを倒してから数日後、マザーセンターを後にしていたゼロはスクラップ工場に足を運んでいたが、その足取りは覚束なくなっており、シグマに近い実力者と呼ばれた特A級ハンターとは思えないくらいに弱っていた。

「くっ…このスクラップ工場でパーツを手に入れてシグマの入力したデータを消そうと思ったが…もう間に合わないかもな…」

意識も朧気になりかけた時、ゼロは気配を感じて前を向くと、そこにはいるはずのないエックスの姿があった。

『弱気になるなゼロ!頑張れ!!』

「エック…ス…」

疲弊によって見えてしまった幻覚なのかは分からないが、エックスの姿を見たゼロの心は隙が生じてしまったのかもしれない。

エックスの手を掴んだ瞬間。

『お前は逃げられんのだゼロ。私に従え!!』

「シグ…マ…!!」

エックスがシグマに変わり、ゼロの意識は完全に途絶えた。

そして一方、ケインの研究所では端末のモニターに映る後ろ姿に疑問符を浮かべているエックスの姿があった。

「この後ろ姿はカメリーオ?確かカメリーオはVAVAに破壊されたはずなのに…これを一体何処で?」

「うむ…ポイントY-O-S-H-I。世界一の規模を誇るスクラップ廃業処理工場じゃ!!」

そして現地に向かい、辿り着いたエックスは周囲を見渡しながら先に進んでいく。

「スクラップ処理場か…俺達の墓場だな…何時見ても慣れないものだな…」

更に奥に進もうとした時、スクラップの破片がエックスに飛んできた。

それに気付いたエックスはスクラップを吹き飛ばして突っ込んでくる複数のメカニロイドが合体したようなメカニロイドをギリギリでかわした。

「何だあれは!?機能停止しているメカニロイドがどうして…」

エネルギー反応を調べても機能停止しているのは間違いないと言うのにだ。

「どうなっているんだ!?ソニックスライサー!!」

確実に仕留めるためにソニックスライサーで真っ二つにして、完全に破壊した。

「何だったんだ…一体…ん?スクラップが崩れた場所に扉がある…ここから先に進めるのか?」

扉を開くと、そこにあるものにエックスは目を見開いた。

何故ならそこにはペンギーゴの墓標らしきものがあったからだ。

他にはマンドリラー、ナウマンダー、アルマージ…他にもエックスが倒してきたイレギュラーの墓標がある。

「俺が倒してきたイレギュラーの墓標…何故ここにこのような墓標が…?」

次から次へと現れる墓標にエックスは少しずつ精神的に参ってきていた。

そして天井に吊るされていたレプリロイドが落下したかと思えば突如動き出してエックスに襲い掛かる。

「来るなっ!!」

咄嗟にバスターを構えてショットを連射して撃ち抜いて行動不能にするが、エックスにしがみつくように倒れる。

「うっ…」

エックスは反射的に振り払い、背後から聞こえた足音に振り返るとそこにはエックスが倒したイレギュラーが立っていた。

「そんな!?倒したはずなのに…何故復活しているんだ!?」

先の戦いでは確かにシグマパレスで倒したイレギュラーが襲い掛かってきたが、それはボディのみを再生したデッドコピーである。

そしてイレギュラー達の攻撃がエックスに襲い掛かる。

「ぐああああっ!!くそ、本当に…どうなっているんだ…」

理解不能な事態の連続にエックスは精神的に追い詰められていく。

マンドリラーの拳を受けて吹き飛ばされ、次はヘチマールの蔓に足を絡め取られて引っ張られる。

「ヘチマール!?どうして君まで…ん!?この粉は…」

自身の周囲を舞う粉に気付いたエックスは天井にスクラップの塊のような存在に気付いた。

「あれが原因か!?」

スクラップの塊にエックスはショットを連射して浴びせていく。

するとイレギュラーの姿が廃棄されたメカニロイドやレプリロイドに変わっていき、他にも稼働しているメカニロイドの姿も確認出来た。

どうやらあの虫のようなメカニロイドが機能停止していたレプリロイドやメカニロイドを動かしていたようだ。

「なるほどな…あのイレギュラー達は粉による幻覚だったのか…人の心に付け入るなんて絶対に許さない!!」

ショットを連射して敵を殲滅し、スクラップの塊を見上げる。

「降りてこい卑怯者!!」

「卑怯とは心外な」

スクラップの塊はエックスにスクラップをばら撒いてぶつけ始めた。

「卑怯な手の次は姑息な手を使うんだな!!」

チャージショットを放って撃ち落とそうとするが、スクラップがバスターの銃口を塞いでしまい、暴発して左腕が破壊されてしまう。

「ぐああああっ!!」

「いやいや、姑息な手でも意外な効果があるものでしょう?これは時間を稼ぐ必要は無かったですかね?私が私になるための時間を稼ぐ…ね」

突如スクラップの塊が光を放ったかと思えば姿を大きく変えた。

「何!?」

「私がメタモル・モスミーノスになる時間をね!!」

「姿を変えただと!?そんなレプリロイドが…」

時間経過で姿を大きく変えると言う前代未聞の存在にエックスは驚愕する。

「先程のは進化のためのほんの時間潰しですよ!!」

「卑怯な手をばかり使っていながら良く言えるな!!」

「ふっ!!勝利こそ全てなのはあなたも同じことでしょう?そしてあの鱗粉はただ幻を見せるだけではありません。あなたの心の弱さを映すのですよ。つまり、先程あなたが見たのはあなたの弱さなのです!!」

「俺の心の弱さ…だと!?」

「心に隙がある自分を差し置いて良く言えるものです」

「黙れ!俺は貴様らのようにはなれないんだ!!」

無事な右腕をバスターに変形させてチャージショットでモスミーノスを狙うが鱗粉で弾かれてしまう。

「馬鹿な!?」

「私の鱗粉は幻を見せるだけではなくこのように防御にも扱えるのですよ」

つまりあの鱗粉をどうにかしない限りエックスの攻撃は届かないと言う事だろう。

ストライクチェーンを使うことも考えたが、簡単に捕らえられてくれる相手でもないだろう。

「私の攻撃は素通りしますがね」

「くそ、何処までも卑怯な奴だ!!」

「卑怯?精神攻撃も歴とした戦術ですよ。ただ無策に真っ向から向かっていくだけなのは無謀の極み!!このような搦め手も使いこなせてこそ強者なのですよ!!イレギュラーハンターならば無策に突っ込んで返り討ちにあった愚か者達を見てきたのでは!?」

エックスに向かって光線を放つモスミーノス。

「俺は貴様らのようにはなれないと言ったろう!!」

それをダッシュでかわしていくが、モスミーノスは再び鱗粉を飛ばしてくる。

それから逃げようとするが、スクラップに足を取られて転倒してしまう。

「うわっ!?」

転倒の際に床にアーマーが擦り付けられ、火花が散って鱗粉が燃えた。

「(鱗粉が…燃える…?まさか、あいつの弱点は…)」

「余所見とは余裕がありますね!!」

再び光線を放って来たためにエックスは何とかそれをかわしていく。

「まだ体力に余裕があるなら精神攻撃です」

再び鱗粉を飛ばすモスミーノス。

消耗によって鱗粉から逃れられずにエックスは鱗粉に包まれてしまう。

「(気をしっかり持て…これは…幻覚なんだ…!!)」

目を閉じて幻覚をどうにかしようとするが、全く効果はない。

「目を閉じたところで無意味です。私の鱗粉はあなたの“恐怖”を直接あなたの心に投影する。どれだけ高い戦闘力を持とうとあなたの“心の弱さ”が弱点となるのです!!」

モスミーノスの言う通り、目を閉じても弱まるどころかどんどん効果を増していく。

恐怖によって震えが止まらなくなり、歯の根が合わなくなる。

「歯の根が合わないようでは終わりですね、そのまま恐怖に飲まれて死になさい」

エックスに興味を失ったモスミーノスはエックスに背を向けた。

「(弱さ…倒した敵に心を痛めることが…俺の“心の弱さ”!?)くっ…!!うおおおおおっ!!!」

恐怖を振り払うようにエックスは叫ぶとある特殊武器を選択してバスターを向ける。

「お前の姑息な手に早々かかるか…!!みんなの幻に気を取られて俺が負けたら…倒してきたみんなに申し訳が立たないんだ…ラッシング…バーナーーーーッ!!」

放たれた火炎弾は粉塵爆発を起こしたことで今までのものとは桁違いの威力でモスミーノスのボディを燃やしていく。

「私の…鱗粉が…導火線に…なったのか…」

粉塵爆発とはある一定の濃度の可燃性の粉塵が大気などの気体中に浮遊した状態で、火花などにより引火して爆発を起こす現象である。

モスミーノスの鱗粉でそれを利用したのである。

落下したモスミーノスは全身を炎で燃やし尽くされ、DNAデータのみを残して灰となった。 
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