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ロックマンX~Vermilion Warrior~

作者:setuna
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第38話:Scratch

モスミーノスを倒したエックスは精神的疲労によってふらつきながらもエイリアに通信を繋げて転送してもらおうとした。

「エイリア、任務完了…転送してもらえるかな…?」

『了解…少し待ってもらえるかしら?それまで休んでいて…スクラップ工場だから休もうにも居心地が悪いでしょうけど…』

「分かった、頼むよ」

レプリロイドやメカニロイドの墓場とも言える上にあのような目に遭ったスクラップ工場で安心して休めるのかと言えばそれはない。

「(“心の弱さ”…か、モスミーノスの言う通りかもしれないな…正義の名の元に俺はこのバスターでイレギュラーを…レプリロイドを撃ち抜いてきた…その痛みは今でも俺の中に残っている…)」

バスターに変形させたまま腕を見つめて俯くエックスだが、気配を感じて前を見ると…。

「ゼロ…?」

アーマーの色と形状が記憶の物とは違うが、間違いなくゼロであった。

髪の色も正反対の銀色に染まっていたが、先の反乱の際にゼロがライト博士によるパワーアップを受けたことで同じ配色になったことがあるためにエックスはそこは気にならなかった。

エックスはゼロに影があることを確認すると、ゼロの元へと歩いていく。

「影がある…と言うことは本物なんだね…ゼロ…」

ゼロの左腕がエックスにとって初見の物に伸ばされた瞬間にエックスも反射的にZXセイバーでゼロのZセイバーを受け止めていた。

「ほう、受け止めたか…真っ二つにしてやるつもりだったんだがな」

「ゼ、ゼロ…?」

今の一撃は本当に危なかった。

もし少しでも反応が遅れていたらエックスはセイバーによる斬擊で小さくないダメージを負っていただろう。

ルインの形見の武器を使いこなすための特訓が親友からの本気の一撃から身を守ることになるとは思わなかった。

そしてゼロは不敵な笑みを浮かべてエックスを弾き飛ばすと拳にエネルギーを纏わせていく。

「成る程な、話で聞いていた通りの甘ちゃんだが実力はそれなりにあるらしいな。だが、そんなボロボロのお前を倒したところで意味はない。もっと強くなったお前と戦い、打ちのめすことに意味がある…じゃあな!!」

アースクラッシュを床に叩き込んで粉砕し、余波で吹き飛ばされたエックスを地下へと落としていく。

「そんな…何故…何故なん…だゼロ…?」

アースクラッシュの直撃は受けなかったが、ゼロの技の中でも最高威力の技は余波だけでもエックスの意識を刈り取るだけの威力があった。

エックスが意識を失った瞬間、転送の光に包まれる。

しかしその光に別の輝きが混じっていたことに意識を失っていたエックスは気付けなかった。

「(何故なんだ…ゼロ…どうして俺に攻撃をしてくるんだ…一体…何故…)」

「ス…クス…エックス!!起きてエックス!!」

「っ!!ゼロ!!」

勢い良く起き上がるエックスに隣にいたエイリアは多少驚くが、エックスが起きたことに安堵の表情を浮かべた。

「大丈夫エックス?あなたかなりのダメージを受けて気絶していたのよ?」

「ダメージ…そうか、ゼロのアースクラッシュで…」

「悪いけど、あなたのその状態の経緯を知るために少しメモリーの内容を見させてもらったわ…データ反応は…間違いなくゼロだった…」

「そうか……ゼロを助けるために戦ってきたのに…何をしてるんだ俺は…ん?このアーマーは…?」

皮肉の笑みを浮かべて下を向くと、ボディが何時もの物とは違うものに変化していることに気付いた。

「新しいボディパーツ…?」

「多分、ライト博士からの贈り物よ。あなたが受けたダメージは相当な物のはずだった。でもライト博士は咄嗟にボディパーツを転送することであなたのボディへのダメージを回復させてくれたんだわ」

「そうか………」

「エックス、ボディパーツのバックアップは既に取ってあるから…トレーニングルームで体の調子を確認してもらえるかしら?」

「…分かった」

そしてトレーニングルームに到着し、エイリアが出した仮想エネミーとの戦闘が始まるが、ここでアクシデントが起こった。

「!?バスターに変形しない!?」

「エックス!!」

攻撃が当たる直前に訓練を強制終了させる。

「そんな…」

「回路には異常はないはずなのに…どうして…」

変形しないバスターにエックスとエイリアが動揺する中、ケインからの通信があった。

『大変じゃ!!シグマの軍団がシティ・アーベルに攻撃を仕掛けておる!!このままでは街が壊滅してしまうぞい!!』

「攻撃…でも今のエックスじゃ…」

エイリアは両腕を震わせるエックスを見遣ると、足をケインの元へと進ませる。

「エイリア…!!」

「Drと話して打開策がないか検討してみるわ。私達はあなたに頼りすぎていたし、今のあなたには休息が必要だもの」

親友から攻撃されたと言う事実はエックスの心を打ちのめして戦える精神状態ではない。

去ってしまったエイリアを止めようとしてもエックスの声には力がなかった。

「俺は…」

『助けるべき友がお前を攻撃したと言う事実が、お前の心を傷付けて、バスターを封じてしまったのじゃな』

「ライト博士…」

背後にはライト博士のホログラムがいた。

『じゃが、エックス…心の傷を理由にして目の前の現実から目を逸らし続ける訳にもいかないと言うのも分かっとるじゃろう?』

「…………はい」

『…武器を失ったなら、力なき者の盾となって守ろう…以前のお前ならそう考えたじゃろう…エックスよ…戦いは辛く虚しい…じゃが、それによって得られる平和…そして人々の笑顔の素晴らしさを忘れるでない…お前が望む未来を手に入れるためにお前に与えたボディパーツは必ず応えてくれるはずじゃ…』

「ライト博士…」

エックスに伝えたいことを伝えたライト博士のホログラムは消えてしまったが、エックスの胸に確かに届いた。

エックスはハンターベースのライドアーマー・ラビットに乗り込んで、シティ・アーベルを攻撃している軍団の司令官の元へと向かうのであった。 
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