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レーヴァティン

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第九十二話 堺からその五

「現実にな」
「そして堺の街もですね」
「当然だ、若し巨人が出てもだ」
「護って頂けますか」
「俺達はその為にこの世界に来ている」
 それならばというのだ。
「当然のことだ」
「そうですか、それでは」
 使者は英雄のその言葉を聞いて彼に申し出た。
「一度です」
「堺にか」
「いらしてくれますか」
「わかった」
 英雄は使者に一言で答えた。
「そうさせてもらう」
「では」
「一人で行く」
「お一人、ですか」
 英雄のこの返事にだ、使者は仰天して問い返した。
「あの、それは」
「何かあるのか」
「若しもです」
 使者は英雄に仰天したままの顔で語った。
「私共が含むものがあり」
「暗殺をか」
「そうされることは」
「考えているが」
 それでもとだ、英雄は使者に不敵な笑みで答えた。
「俺が毒や刺客に備えがないと思うか」
「だからですか」
「どの様な刺客も巨人以上か」
 時折出没し破壊の限りを尽くす彼等と、というのだ。
「どうだ」
「それは」
「俺には剣がある」
 天羽々斬、それがというのだ。
「そして素手でもだ」
「刺客については」
「何でもない、女も好きだが」
「女の刺客も」
「送りたければ送って来ることだ」
 不敵な笑みでの返事だった。
「毒でなく病で殺そうにもな」
「瘡毒ですか」
 英雄達の世界の今の時代では梅毒という、身体を徹底的に蝕み死に至らしめる恐ろしい性病である。
「あの病も」
「俺には術がある」
「癒すことが出来ますか」
「後々な、ましてや万が一があろうともこの連中がいる」
 使者を左右に並んで囲んでいる十二人も見て述べた。
「この連中が俺が死んでも骸を拾って復活させてくれる」
「だからですか」
「俺一人で行こうとも問題はない」
 例え堺に彼から見てよからぬ謀略があろうともだ。
「そして俺に何かあればだ」
「その時は」
「そちらがどうなるか」
「それで、ですか」
「それがわからぬ訳でもないな」
「はい、我々も貴方そして他の方々のことは聞いてです」
 そしてとだ、使者は英雄の言葉をここまで聞いて息を飲んで恐れを何とか隠している顔で彼に応えた。
「そうしたことはせずに」
「真剣にだな」
「考えてそのうえで、です」
「今俺のところに来たな」
「そうですので」
 だからだと言うのだった。
「そうしたことはです」
「しないな」
「はい、貴方ならばと見極めたつもりです」
「そうしてだな」
「今私はここに来ました」
「俺に堺の主を頼みたくてだな」
「左様です」
 こう答えたのだった。 
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