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レーヴァティン

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第九十二話 堺からその四

「技術もな」
「手に入れていくな」
「あの島に優れたものは多い」
 ただ商いだけを見ているのではなかった、英雄はそれ以外のことにも目を向けているのだ。そしてこちらのことも話した。
「しかも境はこの島一の鉄砲と砲、空船の産地だ」
「そのことも大きいか」
「この三つが多ければ」
 自分達が率いる軍勢にというのだ。
「それでだ」
「軍勢はかなり強くなるか」
「だからだ」
 それだけにというのだ。
「堺は必ずだ」
「手に入れるか」
「ここでな、どうだ」
「異論はない、ただな」
「堺を手に入れることは難しいな」
「このことは尋常ではない」
 幸正は英雄に忠告する様にして告げた。
「それもわかっているな」
「大坂を手に入れるにも苦労したがな」
「あちらもだ」
「大坂よりは勢力は小さいがな」
 それでもとだ、英雄も幸正に応えて述べた。
「やはり大きな街だ」
「それだけにあの街もそうおいそれとはだ」
「俺達には降らないな」
「そうだ、そのことがわかっているならだ」
 それならばと言うのだった。
「軽率に進めていくべきではない」
「慎重にな」
「そうしていけ、いいな」
「わかっている、これからどうするかだな」
「ならここはです」
 謙二が言ってきた。
「堺の街に噂を流しますか」
「俺たちの噂をか」
「事実を」
 噂といってもそれぞれだ、事実無根のものもあれば事実のものもある。そしてこの度は事実をというのだ。
「我々の政のことを」
「ありのままだな」
「そしてその目指すものも」
 島を統一し救う、このこともというのだ。
「噂としてです」
「喧伝するか」
「そして実際にであります」
「俺達の行いを見せるか」
「ありのまま、我々が若し悪逆非道ならば」
 そうした行いをしているならというのだ。
「堺も従いませんが」
「善政を見ればだな」
「噂通りのそれを見れば」
「俺達に傾くか」
「そうなります、堺以外の街、そして村も手中に収めていき」
 このことはこれまで通りだった。
「そのまま内政を行うであります」
「その姿も堺に見せるか」
「そうであります、では」
「それでいこう」
 峰夫の考え通りにことを進める、英雄は決めた。そしてその決定に従ってだった。
 実際に英雄達は大坂と堺を行き来する者達に紛れさせて噂を流させる者達を送りこんだ。そうして自分達の噂を流させて。
 そのうえで内政を続け勢力も拡大させそちらの内政も行っていった。すると自然にだった。
 英雄達の人気は堺でも日増しに高まった、それであちらからだった。
 大坂に人を送ってきた、その使者が英雄に言ってきた。
「お話は伺っております」
「俺達のか」
「はい、この世界を救って頂けるのですね」
「そのことを目指している」
 英雄は使者、堺の大店の主の一人に答えた。 
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