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ロックマンX~Vermilion Warrior~

作者:setuna
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第34話:Possibility

 
前書き
ある意味このステージはシグマの正体の伏線になってたんですね 

 
突如エックスの前に現れたレイダーキラーの攻撃をかわしながらタイミングを見計らってチャージショットを撃つためにチャージを開始し、レイダーキラーはエックスのパターン検索を行った。

『シミュレーションパターンNo.1~17検索…パターンNo.7。回り込む素振りから反転…』

レイダーキラーにインプットされたデータ通りの動きをエックスはしてしまう。

「あの巨体では素早くは動けないはず!!この動きには対処出来ない…なっ!?」

エックスがレイダーキラーにチャージショットを放とうとしたバスターを向けようとした瞬間、レイダーキラーのレーザーを受けてしまう。

『シミュレーションパターンNo.93~No.127検索中…』

エックスに攻撃を当てたレイダーキラーは攻撃を受けた直後のエックスの次の行動のパターン検索を開始した。

「もらった!!」

『パターンNo.106、煙に紛れて上空からの攻撃』

そしてエックスのチャージショットがレイダーキラーに迫るが、既にレイダーキラーはチャージショットへの対策を取っており、バリアを展開した。

「バリアだと!?」

そして攻撃直後の隙を突いてレーザーを放ち、エックスはまともに喰らってしまう。

「くそっ!!何とかしなくては…ぐあっ!!」

起き上がろうとしたところでレーザーを受けてまた吹き飛ばされる。

『これは当然の結果だ…敵は確実にエックスの動きを先読みしている。どう足掻いても……』

その時、マザーの端末の後ろから現れた人物にバスターを向けられた。

「おい…エックスに奴の倒し方を教えろ…でないと風穴が開くぜ?」

エックスには聞かれないように小さい声で端末に脅しをかける。

『わ…分かった…エックスよ…良く聞くのだ…今のままでは敵には勝てない…』

すぐにエックスの電子頭脳とリンクし、エックスに自身の声を届かせる。

「(電子頭脳の中に直接話しかけてくるのは…誰なんだ?)」

『私はマザー…このセンターのメインコンピューターだ。尤も私はその端末だがな。』

「マザー…」

エックスは自身に語りかけてくるマザーの言葉に意識を向ける。

『今、お前が戦っている敵は私の端末のカメラを通して得たお前のデータが入力されている……つまり、お前の戦い方は既に読まれているのだ…敵に勝つためにはお前が“入力されているデータ”にないことをするしかない』

「(データに入力されてないこと…?)それなら…ラッシングバーナー!!」

エックスは腕をバスターに変形させるとラッシングバーナーの火炎弾を自分に当てた。

『!?』

『!?エックスの行動、理解不能。理解不能…理…解…不Noーっ!!』

自分への攻撃にレイダーキラーがパターン検索をしても出てこず、とうとうレイダーキラーに搭載されたコンピューターが暴走を始めた。

「入力されてない行動と言えばこれしか咄嗟に思い付かなかった。入力外の俺の行動によってお前のコンピューターは暴走を始めた。これで終わりだ!!」

暴走しているレイダーキラーにチャージショットを放って破壊するエックス。

「まあ、尤もラッシングバーナーの威力はミニマムだったけどな。それでも少し焦げたけど」

ショットではなくラッシングバーナーを選んだのはエックスのアーマーが熱に高い耐性を持っていたのもあるし、ショットではアーマーを破壊してしまう可能性があったから念には念をだ。

「マザー…助けに来たつもりが反対に助けられてしまったね。ありがとう…待っててくれ。すぐに君をウィルスから解放してみせる。それでは行くよ」

エックスは急いでこの場を去ってメインコントロールルームへ向かう。

完全にエックスがいなくなったのを見計らってマザーは自身にバスターを向けている人物に話しかけた。

『そろそろ、その物騒な物をどけてくれないか?』

マザーの言葉にバスターを向けていた人物はバスターを腕に戻した。

「悪かったな」

そして、そのまま踵を返す人物にマザーは問いかけた。

『傷付いた体を押して来たのに何故名乗りでない?』

「…さてな……(体の中に巣食っている“シグマの呪縛”を解くまであいつらの元へは帰れない!!)」

『ガッ…ギ…』

「?」

彼の言葉を待っていたマザーだが、異変が起きた。

『ウィルス…か…今までプロテクトで押さえ込ん…でた…が…ついに…活動を始め…たっ。私は直に活動を停止する…それは私の“死”を意味する…私の繋がっているコンピューターも同時に“死ぬ”。そうなればコンピューター制御されていた世界中の軍事施設は簡単にシグマの手に落ちて世界はシグマの手中に収められるであろう』

マザーの言葉に彼は肩を押さえながら立ち去ろうとするが、その際に口を開いた。

「安心しろ、直にあいつが助けてくれる」

『あんな若造に何が出来ると言うのだ!!』

「全てだ…。そう、あいつの持つ“可能性”は無限大だからな」

それだけ言うと彼はこの部屋を後にした。

『ま…待て!!どういう事だ!!』

マザーが止めるも、彼は足を止めずにマザーセンターを離れるために重い足を動かした。

『………“可能性”…?我々コンピューターは設定された能力以上のことは出来ない。それはレプリロイド…エックスとて同じことだ…なのに“可能性”だと?…信じているのか…あの男は…可能性を…』

そしてメインコントロールルームに辿り着いたエックスはウィルスを止めるために周囲を見渡す。

エイリアへの通信も考えたが、通信妨害がされているために不可能であった。

その時、メインコンピューターに誰かがいることに気付く。

「ん?誰かいる?大丈夫ですか…え?シ…シルキー!?しっかりするんだ!!」

取り敢えずエックスは椅子から彼女を床に下ろすと、彼女の状態を確かめようとするが、エックスは一度考えるべきだったのだ。

あれだけのマザーセンターのトラップを何故非戦闘型の彼女が潜り抜けられたのかを。

「!?」

突如シルキーの右腕が変化し、尾のような物のトゲがエックスの背中に突き刺さる。

「な…何…」

「ふっ…」

笑みを浮かべたシルキーを突き飛ばすが、体が痺れて蹲るエックス。

「ぐっ…体が…痺れて…」

「いきなり突き飛ばすなんて酷いわエックス!!」

「貴様…シルキーじゃない…な…」

痺れる体に苦しみながらもシルキーを睨むエックス。

「え?私よ、シルキーよ?助けを求めたシルキーよ!でもね…」

「………」

彼女の表情が不敵な物に変わり、エックスは表情を顰めた。

「それは仮のす・が・た。分からないかしら、全てはあなたを倒すためのチャ・バ・ン。このマグネ・ヒャクレッガー様の作ったお芝居さ!!」

シルキーの変装を解いて本来の姿を現したヒャクレッガーは直後にエックスを蹴り飛ばす。

「何時まで痺れてる!!」

「うわあっ!!」

蹴り飛ばされたエックスだが、その衝撃によって麻痺が解けて自由に動けるようになった。

「よし!麻痺が解けた!よくも卑怯な真似を!!これでも喰らえ!!」

チャージショットを放つエックス。

放たれたそれはヒャクレッガーに命中し、着弾点に爆発が起こる。

「やったか!?…な!?椅子だと!?」

爆煙が晴れると、チャージショットで破壊したのはヒャクレッガーではなく椅子である。

「残念だったな、第0特殊部隊。別名“忍び部隊”…“変わり身の術”くらいは“忍び部隊”のB級にも出来る基礎中の基礎だ。まあ、第0特殊部隊は表には一切出ないから表のお前が知らないのも無理はないがな。」

「天井なんかに逃げたつもりか!?そんなところは壁蹴りを使えば…」

壁蹴りを使おうとするが、何故か上手くいかずに失敗してしまう。

「失敗した!?うあっ!!」

床に落ちるエックスにヒャクレッガーは壁蹴りを使えない原因の説明をする。

「私のトゲには秘密があってな。」

「何?」

「このトゲには相手のデータを消去するウィルスがインプットされる仕組みになっている。勿論、マザーに流したウィルスを消すのにも有効だ。」

「え!?」

ヒャクレッガーから聞いたマザーを救う方法にエックスは目を見開く。

「マザーを救いたいなら使うがいいさ、この私を倒した後にな」

「く……」

しかしエックスはその言葉に顔を顰めた。

ヒャクレッガーがそう簡単にやられるような相手ではないと悟ったからだ。

「ただ、それまでにマザーの防衛プログラムが保てばの話だがな」

「絶対に間に合わせてみせる!!」

「それは感心だな」

壁蹴りが使えないならチャージショットを放つが、ヒャクレッガーはエックスでも反応仕切れない速さで移動してチャージショットをかわした。

「くそっ!!何処だ!?何処にいるんだ!?」

周囲を見渡すが、ヒャクレッガーの姿は何処にもない。

「(何処なんだ…)」

突如背後にヒャクレッガーが姿を現した。

「うわっ!?」

「せいぜい…足掻いてみることだな!!」

尾のトゲでエックスを掴むと持ち上げると、再びエックスにウィルスを流し込む。

「さあ、次はどの機能が消えるのかな!?」

「ぐああああっ!!」

流し込まれるウィルスに苦しむエックスを床に叩き付けると、ヒャクレッガーは距離を取る。

「くそ…舐めるなあっ!!」

立ち上がってチャージショットを放つエックスだが、ヒャクレッガーの機動力には掠りもしない。

「ふん、バスターはまだ生きているか。悪運の強い奴だ。ならば次に消えた機能はどれだろうな!?マグネットマイン!!」

複数の小型の機雷をエックスに投擲するヒャクレッガー。

「くっ!!ダッシュで回避だ!!」

ダッシュですり抜けようとするが、今度はダッシュ機能が消去されてしまい、機雷の直撃を受けてしまう。

この戦いを見ていたメインコントロールルームのマザーは諦めかけてしまう。

『やはり私はこのままウィルスに侵されていくのか……!?』

しかしエックスは少しふらつきながらも立ち上がる。

「多少は効くがオストリーグの蹴りに比べれば大した攻撃じゃないな」

「ほう、流石は今までの刺客を倒してきただけのことはあるな。だが、それも何時まで保つかな!?」

今度は尾を分離させ、それを浮遊させるとエックスにぶつけていく。

「うぐっ!!」

何度も攻撃を受けたエックスは床に勢い良く叩き付けられる。

『やはり無理なのだ…』

しかし再び立ち上がるエックスにマザーは驚く。

「この程度じゃ、俺はまだまだ倒れないぞ…」

『愚かな奴だ。何故立ち上がるのだ…膝が笑っているではないか…勝てる“可能性”など全くないと言うのに……“可能性”!?』

ふと、マザーのメモリーに刻まれた彼の言葉が過ぎる。

『あいつの“可能性”は無限大だからな』

そしてエックスは再び、ヒャクレッガーの尾に捕らわれて機能が消去されてしまう。

「ぐああああっ!!」

再び投げ飛ばされるが、何とか体勢を整えてバスターを構えるエックス。

「くっ!!当たってくれ!!」

ショットを放とうとしてもバスターは全く反応しない。

どうやらバスターの機能が消去されてしまったようだ。

「そんな…バスターまで…!!」

「バスターが使えないと言うことは特殊武器も使えなくなったな。頼みの綱はルインの武器だが…それは既に使えない」

ヒャクレッガーの手にあるのはルインの武器であった。

どうやらエックスの機能を消去している最中に奪ったようだ。

「くう…っ!!」

「さあ、いい加減楽になれ!!」

再び機雷を投擲し、エックスに直撃させる。

「まだだ…俺は諦めないぞ…!!」

何度もヒャクレッガーはエックスに機雷を投擲してダメージを蓄積させていく。

『無駄なことを…直に私はウィルスにやられ、世界は滅ぶのだ。例えお前が何度立ち上がっても、もう遅いのだ。』

「まだだ…」

何度も機雷を受けても立ち上がるエックスの姿にマザーはデータにはない何かを抱いた。

『なのに…何故…』

「諦め…ない…っ!!」

そして限界が間近でありながら立ち上がるエックスの姿にマザーはエックスの“可能性”に気付いた。

『そうか…彼が立ち上がるのは…立ち上がることによってのみ“可能性”が生まれるからか!!彼の“可能性”は“諦めない”ことなのだ!!』

「まだ…俺は…戦える!!」

激痛に震える体を叱咤して立ち上がったエックスにヒャクレッガーは拳を震わせて叫んだ。

「な…何故こんなに攻撃してるのに倒れないんだーーーっ!!?」

普通のレプリロイドならとっくに機能停止しているような攻撃を絶え間なく浴びせているのに立ち上がるエックスにヒャクレッガーは苛立ちを覚えてエックスに突撃する。

「それならこの手でその首を引っこ抜いてやるわーーーっ!!!」

「(どうする?バスターは使えない。ルインの武器は奴に奪われている…武器になりそうな物もない。)いや、諦めるな!!諦めなければ活路は開ける!!今までもそうだった!!」

『エックスよ…』

電子頭脳に響くマザーの声にエックスは意識をそちらに向ける。

「!?(マザー?)」

『エックスよ…聞こえるか?私も君と一緒に戦わせてくれ。私がウィルスに侵されるのも時間の問題だ。ならばその時までは…抗うのが私の責任だから…私が床の一部を爆発させて敵に一瞬だが、隙を作ろう。その隙に敵に突進しろ!!ダッシュ機能が使えないなら全力で走れ!敵を捕らえるのだ。』

マザーの指示通りにエックスは動き、床の突然の爆発によって吹き飛ばされたヒャクレッガーを捕まえる。

『全力で走れ!!』

「うおおおおおっ!!」

『そして敵を傷ついている穴に押し込むのだ!!私の剥き出しの回路から敵にウィルスを流し込み、敵を倒す』

ヒャクレッガーを穴に押し込み、マザーが剥き出しの回路からヒャクレッガーにウィルスを流し込む。

「うぁあぁぁあ…ウィルスが…ウィルスが…流れ込んでくるぅう…!!ふぅぅうおおおおぉぉぉぉっ!!!」

ヒャクレッガーに凄まじい勢いで流れ込むウィルスはマザーセンターの制圧のために用意された物であるためにレプリロイドであるヒャクレッガーには一溜まりもない。

「こんな…ことでっ…私の活動は…停止…する…の…かっ」

自らが用意したウィルスによって自身が機能停止すると言う最期を迎えたヒャクレッガーは力なく倒れ、エックスはヒャクレッガーの尾の先端部分を回収してマザーのシステムに接続するのであった。 
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