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ロックマンX~Vermilion Warrior~

作者:setuna
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第35話:Emotion

メインシステムにヒャクレッガーの尾の先端を接続したエックスは不安そうにメインコンピューターを見る。

「大分時間が経過した上に派手にやられたからな…間に合うかな…?」

しばらくするとマザーのシステムが復旧していき、正常な状態に戻った。

「ふう…どうやら間に合ったようだな…」

『ありがとうエックス君。助かったよ』

自身を救ってくれたエックスに敬意を示すマザーにエックスは笑みを浮かべる。

「礼を言うのは俺の方だよマザー。君の助けがなければ間に合わなかったんだ。」

『私はただ、君達の行動に感銘を受けたに過ぎない。私はスーパーコンピューターだが、“無”から“有”を作ることは出来ない……しかし、彼の言っていた君の可能性とは“無”から“有”にすることを諦めない“心”のことと分かった』

「っ!彼…?」

マザーの言葉に引っ掛かるものを覚えたエックスはマザーに尋ねる。

『そう…最初の助言も実は彼に頼まれたものだった。』

破損はしたが、機能は生きているモニターにマザーにエックスへの助言を頼んだ人物の姿が映し出された。

「こ…これは!!」

その人物の姿を見たエックスは椅子から勢い良く立ち上がり、拳を握り締めた。

『“友情”と言う感情なのだろう?今まで私のデータには入力されていなかったものだ。これから“心”と言うものを学んでいくことにしよう。君達の“心”を見習って!!』

「(ゼロ…)」

この場にいない…助けてくれた親友にエックスは一筋の涙を流した。

そしてケインの研究所に帰還すると、激しく傷付き、消去されたデータを戻すためにエックスはメンテナンスルーム行きとなった。

「うーむ、随分とやられたのう。まさか、第0特殊部隊にまでシグマの手が及んでいたとはな…一度チェックすべきかもしれんな」

「エックスが消去されたデータは壁蹴りとダッシュ機能とバスターの機能ね…他にも体に違和感はない?」

ケインと共同してエックスのデータを復旧するための準備をしているエイリアに尋ねられるものの、エックスは首を横に振る。

「いや、大丈夫だよ。データを消去されたのは3回だけだし…」

「そう?なら良いんだけど…念には念を入れて精密検査をしましょう」

「…うん、分かった。頼むよ」

「エックスは素直じゃのう。これがゼロかルインならば嫌がるに決まっとるからのう…」

体を弄られるのを嫌う2人は余程のダメージを受けない限りはメンテナンスルームに足を運ぼうとはしないので、メンテナンスを担当する医師レプリロイドを困らせている。

「ゼロか…」

「マザーセンターにゼロがいたんでしょう?マザーが嘘を吐くとは考えにくいし、シグマの所から逃げ出せたのならどうしてエックスと合流しないのかしら?」

エックスの呟きに反応したエイリアは、ゼロの考えが分からず、首を捻って顰め面をするしかなかった。

「分からない…でも、ゼロにも何か理由があるんだと思う。だから俺と合流せずにマザーセンターを後にしたんだ。」

エックスとしても不思議に思うが、ゼロが助けてくれたのは事実のために出来れば何か事情があるのだと思いたかった。

「そうね…」

「それにしてもエイリア、機嫌が直ったね…シルキーに変身したヒャクレッガーがいた時は何処か不機嫌だったけど」

「え?あ、どうしてかしらね?自分でもどうしてあんな風になったのか分からないのよ」

自分でも理解不能の感情にエイリアは疑問符を浮かべ、エックスは少し不安そうに口を開いた。

「きっと戦いが長引いたせいで疲れているんだ。エイリアも少し休んだ方がいい」

エックスの発言にケインが転けているが、エックスとエイリアもそれに気付かずに話を進める。

「そうね、この作業が終わったら軽く仮眠を取るわ。」

そしてヒャクレッガーの攻撃によって破損したボディの修復のためのパーツを取りに向かうエイリア。

それを見たケインはエックスに歩み寄って嘆くように溜め息を吐いた。

「エックス…お前さんは鈍い!!エイリアもそうじゃが鈍すぎるぞ!!何故そうなるんじゃ!!」

「え?鈍い?…確かに今回はヒャクレッガーに何度も油断を突かれてしまいましたが…」

「そういう意味では…」

「それじゃあエックスのデータを元に戻すからスリープモードに移行してもらえる?」

「了解」

戻ってきたエイリアにそう答えると、エックスはスリープモードに移行して眠りについた。

「あ、これ!!まだ話は…はあ~…」

「?」

溜め息を吐くケインに首を傾げるエイリアだが、ケインと共同してエックスの消去されたデータをかなりの勢いで元に戻していく。

レプリロイド工学トップの名に恥じない見事な手腕にケインも感心する。

「ほっほーっ、相変わらずお前さんのプログラミング技術は見事じゃのう。エイリア、わしの後継者にならんか?」

「もう、冗談を言わないで下さいDr。私よりも優秀な人はいますよ…ただ評価されていないだけで…」

「人格面も含めてとなるとお主以外はいないと思うがのう。まあ、これはドップラーとも相談して決めるとするかの。さあ、エイリア。エックスが退屈しないうちにさっさと済ませてしまおうぞ」

「はい…」

こうしてエックスの消去されたデータは数時間後に完全に元通りになった。

「凄い、本当に元通りになってる」

トレーニングルームで試してみたが、機能は完全に元通りになっていた。

「それにしてもウィルスを攻撃手段に用いるなんて、ワクチンプログラムやそれに対するブロテクトプログラムの構築も考えないといけませんね」

「うむ、特に高いウィルス性能を持つエックスのデータも消去するほどの強力なウィルス…対策を取らぬ訳にもいかぬしな」

生半可なウィルスなど通用しないエックスに直接攻撃込みとは言え効果を発揮したウィルスにケイン達は警戒心を抱かせたのである。 
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