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ウルトラマンゼロ ~絆と零の使い魔~

作者:???
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黒魔術-Dark Majic- Part5/大魔獣VS光の巨人


「みんな、無事か!?」
「黒崎先輩!!」
シュウも、アンリエッタからの連絡を聞いて、街に向けて急いでやって来た。
「あれが、例の悪魔とやらか」
町の建物よりもさらに巨大な怪物の姿を見てシュウが尋ねると、アンリエッタは頷いた。あのおぞましさと邪悪な気配、もはやビーストと遜色ない。現に街を破壊して回っている。
シュウはエボルトラスターを取り出そうと、懐のポケットに手を伸ばす。が、他にもまだ自分たちの影の事情とは無縁のテファたちの存在に気づいて一時変身を思い留まった。まずは避難を促す必要がある。
「ねぇ、ちょっと!」
すると、そこへ突然の来訪者が急ぎ足で訪れた。
タバサの友人でもあるキュルケだ。
「キュルケ!?」
「あなたたち、タバサと会わなかった!?さっき連絡を取ったけど、あの子からの応答がなかったの!あの子、あたしからの電話ならいつも応じてくれてたのに」
タバサの名前を聞いてシュウ、アンリエッタは返答に困った。彼女はタバサが自分達と共に秘密裏に怪物と戦っているとは知らないのだ。
だが、逃げたり話し合う暇さえ与えまいと、ビシュメルが破壊した瓦礫が飛沫を上げるように舞い散り、頭上からサイトたちを襲ってきた。
「危ない!」
次々と降りかかる瓦礫から、サイトたちは頭を両手で覆いながらそれぞれ散っていった。
「っく…皆、無事ですか!?」
無事に瓦礫の雨をかいくぐり切ったアンリエッタが、共にあの場にいた者たちが生存していることを信じて返事を求める。
「わ、私はなんとか…」
「会長こそお怪我は!?」
今の呼びかけで生存の確認が取れたのは、ルイズにテファ、そしてハルナの三名。だが、直後にキュルケの青ざめた声が響く。
「シエスタ!ちょっと、しっかりなさい!」
ルイズたちが注目したその先には、頭から血を流して倒れているシエスタが、キュルケの腕の中で意識を手放している姿であった。今の瓦礫の雨に晒されたことが原因で、頭に大きめの石が直撃したせいに違いない。
「あれ、黒崎先輩たちは!?」
「サイトもいないわ!」
「平賀君!?」
加えてテファが、シュウの姿がないことに、続いてルイズやハルナもサイトがいないことに気づいた。さっきの瓦礫を避けてる際にそれぞれはぐれてしまっていたのだ。
「絶望してる暇はありませんわ!シエスタさんを急いで運ぶ必要もあります!クリスのこともウルトラマンがなんとかしてくれます!いいから早く!キュルケさんも!」
「タバサ…っ!」
アンリエッタは、今の間際にサイトたちの姿が消えたことに焦燥しきっているテファを叱責、今にもタバサを案じるあまり立ち止まりかけていたキュルケにも避難を促す。
(先輩、平賀君。ご武運を…)
アンリエッタは内心でウルトラマンたちの武運を祈りつつ、やや強引に彼女らを引っ張ってその場から離れていく。キュルケもタバサが気がかりだが、ここできることがなにもないので共に避難した。



(く…!)
このサイズの瓦礫ではウルトラゼロアイのガンモード、ブラストショットで撃ち抜くのも無理だ。落下する前に、シュウはエボルトラスターを取り出し、鞘から短剣を引き抜いた。
瞬間、刀身が放つ赤い光に身を包んだ彼は、ウルトラマンネクサス・アンファンスへと変身、瓦礫を拳で即座に弾き落とした。
「デュワ!」
サイトも同時にウルトラゼロアイを折り畳んだ状態から開き、目に装着。ウルトラマンゼロへ変身した。
変身が完了し、ゼロとネクサスはビシュメルと対峙する。
「む…?」
ビシュメルはゼロたちの存在に気がついたのか、街の破壊を一旦止めた。
「…貴様らを見ると虫酸が走る。我の野望を止めた、あの男を見ているようだ…!」
ビシュメルは忌々しそうに二人のウルトラマンを睨み付ける。
「はっ、何を怒ってるのか知らねぇけど、てめえの怒りになんの正当性があんだよ。とっととぶっ飛ばしてやる!
行こうぜ先輩!」
「……」
ゼロはビシュメルの怒りをものともせず、ネクサスも特に何も答えず、ビシュメルの攻撃に備えてじっと身構えた。


先にビシュメルの方から向かってきた。ネクサスに飛び掛かり、その体をつかもうとすると、ネクサスはその手を即座に払い、逆にビシュメルの体を捕まえ腹に膝蹴りを加えて押し出し、さらに後ろ蹴りでビシュメルを蹴りつけた。
次にゼロが追撃しようとパンチを繰り出すと、ビシュメルは突き出された腕を受け流し、頭突きでゼロを押し返す。
腹を抑えながらのけぞるも、すぐに持ち直したゼロは再度向かってきたビシュメルに空中回転蹴りを放つも、同時にビシュメルが前転したために空振りに終わる。
転がった状態から立ち上がった瞬間を狙い、ネクサスの光刃、ゼロの額のビームランプからの閃光が飛ぶ。
〈パーティクルフェザー〉
〈エメリウムスラッシュ!〉
「シュ!」
「デェリャ!」
二人の光線は直撃、ビシュメルを怯ませた。
ビシュメルはダメージこそ受けたが、直ぐに姿勢を整え直し、足下に自らの魔力を注ぎ込むと、街の至る所から鋭く尖った無数の電信柱や柵の棒が、浮かび上がる。ビシュメルが手を前に突き出すと同時に、それらは矢となってゼロとネクサスに襲い掛かった。
二人は手で払い落し、時に足蹴りで弾き落とす。後ろからも向かってきた柱にも、〈ハンディショット〉、〈パーティクルフェザー〉を放って相殺した。
すると、ネクサスがその際に後ろを向いたところで、隙を突くつもりかビシュメルは手から放つ稲妻をネクサスに放った。
「させっかよ!」
「グフ!!」
だがそれを身逃がさなかったゼロが、咄嗟にゼロスラッガーを2本とも引き抜き投げつけ、1本はビシュメルの稲妻を相殺、もう一本は体に切り傷を負わせた。
間一髪ゼロの機転で守られたネクサスはジュネスブラッドにチェンジ、振り向きざまに光線を発射する。
〈クロスレイ・シュトローム!〉
「ジュア!!」
「グオオオォォ!!」
ネクサスの光線を受け、ビシュメルは押し出されていった。



「なんて戦いかしら…こんな光景が、現実になるなんてね…」
負傷し意識の無いシエスタを背負って避難する中、キュルケはウルトラマン二人とビシュメルの戦いの激しさに思わず呟いた。怪獣映画の光景が現実のものとなったような光景だ。
テファは黙ったまま、ビシュメルに挑む二人のウルトラマンの戦いを見ていた。
なぜだろう。銀色の巨人を見た途端、彼女の中に更に一層、得体の知れない不安が過った。
(なんなの…この、変な感覚…)
既視感?それとも未知なる存在に対する、恐怖心?
いや、それは今更だ。私はあの日、あの巨人たちに子供たち共々命を救われた。それをどうして恐ろしいと思える?でも、それならばこの胸の中に込み上げる不安はなんなのだ。銀色の巨人の後ろ姿…それを見て妙に自分の心を締め付ける。まるで何か、忘れてしまっていた辛い過去を思い出しそうな、そんな嫌な感覚があった。胸の奥がざわざわして、とても落ち着けなかった。
「…そうかしら」
そんな中、口を開いたのはルイズだった。
「私、どこかで見たことがあるような気がする」
なんと、巨人っちについて既視感があるのだと告げるルイズ。でも現実的にあり得ない。あんな存在、一人でも見覚えがあるなら、ネットやニュースを経て大多数が知りえるはずだ。
「え、ルイズも!?」
でも、やはりと言うべきか彼女たちに、以前からあの巨人たちを見た記憶はない。なのに、どこかで見たことがあるという既視感がぬぐえなかった。テファは、既視感を持っていたのは自分だけではなかったことに戸惑いを隠せない。これは一体どういうことなのだ。
「おーーい!テファ!!」
すると、遠くからティファニアを呼ぶアスカの叫び声が聞こえた。後ろの方から、赤くてやや派手なデザインの車が走ってきてテファたちの前に停まった。
「アスカさん!」
彼の名前を呼んだので、ルイズたちはテファの知り合いなのだと察した。
「ふぅー…よかった、無事で。マチルダも子供たちも、君がまだ戻ってこないから心配してたぞ。友達にも、怪我はないみたいだな」
運転席の窓を開け、テファたちの顔を見たアスカは安堵する。
「よかった!アスカさん、今から」
負傷したシエスタを運んでいるこのタイミングでアスカが車に乗ってやってきたのはまさに幸運であった。いざ彼女を車に乗せようとしたちょうどその時、ネクサスは頭上に向けて光線を撃とうとしていた。



街が滅茶苦茶になっていく。これ以上互いに市街地で暴れ回ったら、街の被害が重なっていくだけだ。それにテファたちも危険に晒され続ける。
ここは、異相空間を展開すべきだろう。
ネクサスは亜空間メタフィールドを展開しようと、頭上に向けて右手から〈フェーズシフトウェーブ〉を放とうとした、その時…
「クックッ…優位に立ったつもりか?光の者どもよ…貴様らが我に勝つことは決してできぬ」
劣勢であるにも関わらず、突然ビシュメルは笑いだした。
「この期に及んで強がりかよ!みっともねぇぞ」
「ならその証拠を見せてやろう」
ハッタリだろうとゼロは見なしたが、ビシュメルは変わらず気味の悪い笑みを浮かべ出した。すると、ゼロとネクサスの目に、奴の能力なのか、奴は体か闇をら吹き漏らした、その中に、彼はあるものを見た。

死人のような呻き声をあげながら、闇の中で、誰かが苦しんでいた。
その顔の中に、タバサとクリスも存在していた。

「ッ…!」
「くそ、人質かよ…!」
ゼロとネクサスは腕を止めた。さらにビシュメルは笑い声を漏らした。少しでも抵抗したら、こいつらの命はない。奴はそう告げていた。
やむを得ず、無抵抗をせざるを得なかった。下手に攻撃すれば、奴は人質を盾にしてくる。
「これが我が切り札、絶対の肉壁よ。死ねい!」
「グアアア!!」
ビシュメルは、ウルトラマンたちが手出しできないことをいいことに、自ら無防備になるしかない彼に炎を浴びせた。




優勢だったのに、突如として攻撃を躊躇い出したことで劣勢に陥ったウルトラマンたちに、一同は困惑した。
「どうして!?」
「ちょっと、何ボサッとしてるのあいつら!」
思わず口に出るハルナとルイズ。
これまで発生した行方不明者たちが、あの魔人に人質に取られているとは露知らず、なぜ優勢だったのに無防備になったのか疑問が尽きなかった。そんな疑問に真っ先にアスカが当てにきた。
「そうか…人質を取られてるから、手が出せなくなったのか!」
「人質!?」
アスカの言葉に、ルイズたちは目を見開く。
「あの悪魔は、これまで待ちで発生していた行方不明事件の犯人だ。あいつがさらわれた人たちを自分の中に封じていて、それを盾にウルトラマンに手出しさせなくしているんだ」
「そんな…」
人質とは、卑怯者が劣勢に立たされた時に使う効果的で卑劣な盾。人命を救うために戦うウルトラマンにとって厄介極まりない手口だ。
が、ここで一つ気になることに気づく。
「え?でもどうして、アスカさんがそんなに詳しいんですか?」
「へ?あ…あれ…なんでだろぉな…?」
テファの指摘に、言われたアスカ自身がなぜかしどろもどろになる。
「でも、アスカさんの仰るとおりだと思います。でなければあの状況で攻撃の手を彼が緩めるはずがない」
一度優位に立って自らそれを捨てる愚を犯すような男ではない。アンリエッタは二人の状況を見て合点がいくものを感じた。
「このままじゃ、巨人たちが…!」
ビシュメルから一方的な攻撃を受け続け傷ついていく二人のウルトラマンを見て、次第に最悪の事態が現実のものとなり始めていることにテファが青ざめ始めた。
テファはビシュメルに苦しめられる巨人…ウルトラマンネクサスを見て、次第に頭の中に、見覚えの無い記憶が浮かび上がる。
『グアアアァァ!!』
森にポツンとたたずむ小さな村に現れたムカデの化け物、空に浮かぶ島の港町に現れた悪魔の巨人と対峙する、銀色の巨人を、そして…
白い短剣を鞘から引き抜いて巨人へと姿を変えた、シュウの姿を。
それを見て、強い胸の痛みを覚えた。
(何、今の…!?)
アンリエッタは、サイトたちにこの場を託した一方で、このまま見ているだけの身で終わるつもりではなかった。
ビシュメルを召喚した者がまだいるし、タバサや、目の前で悪魔に連れ浚われたクリスのことも気になる。
「皆さん、家に戻って事が済むまでやり過ごしましょう。それまで家から出ないように。よろしいですね?ではまた…」
アンリエッタはこの場の皆に向けて警告を告げ、そのまま去ろうとすると、その前にルイズがアンリエッタを引き留めた。
「会長、待ってください!クリスさんのことはこのまま見殺しにするんですか!?っというより、もしかして知ってたんですか!あんな化け物が実在するって!!」
すると、アンリエッタは目付きを変えてルイズに言った。
「ルイズ…これ以上はあなたたちのような、戦いとは無縁の方々が踏み込むべきことではないのです。御身を大事に思うなら、この先のことは決して知ってはなりません」
ルイズは息を詰まらせる。その先のことは、知ってはならないことだと。
「ティファニア、キュルケさん。あなたも同じです。これ以上は危険が伴うことになります。たとえこの夜を切り抜け明日を迎えたとしても」
危険が伴う以上、関わってはいけないと再三警告するアンリエッタ。だが、キュルケが一歩前に出てきた。
「あたしは引き下がりませんわよ」
「キュルケさん…!?」
「タバサのことも、今回のことと何か関係がありますよね?何か事情があって隠しておいででしょうけど、秘密主義も過ぎれば、納得を得られませんわよ」
アンリエッタは悩んだ。キュルケはタバサのことを気にかけており、仲が良いことや好奇心が強いこともあって、彼女のことを知らなければならないと言う思いも強いのだ。ここでなんの説明もせず帰れと言っても納得はしないだろう。でも、だからといってホイホイと説明に入るのもまた違う気もする。ビーストという、人間の恐怖を糧に繁殖する怪物と戦っているのだ。納得はさせられても、危険が同時に伴うこととなる。
「…私も行くわ」
「ルイズ!」
「ツェルプストーが行くってのに、ヴァリエール家の私がおとなしく逃げたら、格好がつかないじゃない!」
ルイズも引き下がらろうとせず、キュルケ同様にこの事態の解決に乗り出そうと名乗り上げた。
「ルイズ、でも…」
「会長…こうなったからには、ルイズたちは引きませんよ」
アンリエッタが、ルイズまでも事態の収拾に乗り出そうとしていることに戸惑っていると、深いため息と共にハルナが、これ以上は隠し事はできないと言いたげに言った。
「そう、ですね。これこそルイズらしいですわ」
その視線に、アンリエッタはふぅ…と息を吐いて手を上げる。呆れのため息ではない。昔からルイズを知っているかこそ、ルイズが危険と承知で飛び込むことについて納得させられた。
「ん……?ちょ、ちょっと待ってもしかして会長だけでなく、ハルナも知ってたの!?あの巨人や化け物について!」
が、ルイズは今、ハルナが口にしたその言い回し方を聞いて、ハルナがあたかも、このような非現実的な事態への心当たりがあることに動揺を繰り返した。あの怪物や巨人について知り尽くしているかのごとく語るアンリエッタ、それに対してハルナもあたかも知っていたかのように言い出している。すると、ハルナは後ろ髪をポニーテール型に結ぶと、シエスタの疑問に肯定した。
「何を隠そう、あたしも会長と同じ、ナイトレイダーの一員だからさ」
「ナイト、レイダー?」(っていうか、ハルナの口調、なんかいつもと変)
「今の状況下、詳しい説明は省きますが、簡単に言えば、あのような怪物より人々を秘密裏に守る組織です」
今はウルトラマンへの助力のためにも、詳しい説明をしてる場合ではない。簡潔にアンリエッタが、自分たちの立場をルイズらに説明した。
「会長、あたしが奴の攻撃からゼロたちを守って時間を稼ぎます。それまでの間、お願いします」
「お願いします。どうか気を付けて」
「はい」
「ちょ、ちょっとハルナ!」
見送りの言葉を送ると、ハルナ…否、アキナはウルトラマンたちのもとへと走り出す。無謀だとルイズの制止が飛ぶが、同時にハルナの体が光に包まれ、二人のウルトラマンたちと同じサイズにまで巨大化し、彼らに似た容姿の二本角の女型の巨人となって現れた。
「は、ハルナ!?」
ハルナが目の前でウルトラマンたちに似た巨人へ姿を変えたことにルイズたちは目を剥いた。
(人が巨人に姿を変えた…じゃあ、やっぱりあの巨人って!)
ハルナが変身したこともあって、テファの中に、銀色の巨人の正体について、ある確信が生まれた。
「あなたはどうするの?」
ファウストがゼロたちを、身を呈して守る中で、キュルケはそれを一瞥した後にテファにも話を振った。
「え?」
「さっきから手、ずっと悔しそうに握ってるわよ。何かできることがないのかって」
「!」
指摘を受け、テファは自分の右手に目を落とす。汗ばんだ手が、ぎゅっと握りしめられていた。
反論できない。というかしたくなかった。
巨人を見てから、ずっと心がざわついている。あの巨人…銀色の巨人の戦う姿を見ていると、どうしてか『彼』が痛みを受けているように感じてしまう。…いや違う。
さっきの覚えの無い記憶の景色、それに加えて、今目の前でハルナが二本角の黒い目型の巨人確信を得ていた。
あの銀色の巨人は…シュウだ。
(シュウ、先輩…)
自分は確かに巨人を助けられない。あんな化け物を相手に戦うなど、戦う力のないテファには到底無理だ。
悔しかった。ウルトラマンは恐らくあの力でたくさんの人たちを守ってきたのだろうと。その一方で、目の前でクラスメイトがピンチに陥ったのに何もできない自分の無力さを呪っていた。
その感情が、ずっと前から抱いていた願望のように渦を巻き、何かをしたいという衝動に駆られていた。
「…会長、私にもできることはないですか?」
「何をおっしゃるのです!?ただの一般人であるあなたがかかわっていいことでは…」
「確かに私にあの化け物と戦うことなんてできないです。でも、それは会長だって似たようなもんでしょう!武器も持たずに、私たちに危険が伴うからって警告してる自分が危険に自ら飛び込もうとしている。
だったら、私にも手伝わせてください!その方が寧ろ、この町は、私たちの大切な居場所なんです!!」
キュルケから自分の気持ちへの指摘は、背中を押す言葉となった。テファは絶対に何と言われようと、引き下がらないと決めた。
ルイズに続いてテファも事態収拾に行動することを選ぶとは。とはいえテファの言う通り自分も戦う術を持たない。それでも自分の代わりに戦ってくれる彼らためにできることをしたい。同じ思いを抱いているため、拒絶する権利はない。それに、自分一人でビシュメル召喚した、この事件の元凶と対峙するには心細いものだ。
「…あの魔物を召喚している者が、学校にいるはずです。タバサさんもそこで消息を絶った可能性があります」
「学校に、あんな怪物を呼び出した人がいるんですか!?」
テファは恐ろしいことを聞いてしまったと思った。人間自らの手で、街を無残に破壊する怪物が召喚された。そんなことをしでかす人間の心はきっと恐ろしいものに違いない。
「ルイズ、ティファニア、キュルケさん。私はこれからその者を突き止めるため、学校へ向かいます。恐ろしい罠が仕掛けられても不思議ではありません。己の身に危険が差し掛かったらすぐに逃げること。それだけは約束してください」
アンリエッタの言葉に、ルイズたちは頷く。
「なら一刻も早く…」
「ちょっと待ちな」
ルイズたちがアンリエッタと共に学校の方へ向かおうと思ったところで、アスカは彼女たち引き留め、車の後部座席の扉を開く。
「乗りな。こっちの方が早いだろ?」
もしや学校まで送ってくれる、ということか?テファたちは目を丸くした。
「いいんですか?」
「あんな化け物が暴れてたら、どこに隠れてたって危ねぇさ。それを君たちでどうにかできるっていうんなら、それに賭けてみるよ。テファも乗れよ。一人ここで残すわけにいかないからな」
「ありがとうございます!」
「そうと決まったら早速出発ね!」
テファはアスカに強く感謝した。これでクリスのことを助けてやれる。怪我をしたシエスタの安全も確保できた。キュルケも一刻も早くタバサを助けたいという思いから、真っ先にアスカの車に乗った。
「…」
テファは後ろを振り返り、ネクサスの姿を目で追う。
彼は今も、ビシュメルの攻撃に耐え続けていた。人質の命を盾にされ、反撃できず、それでも逃げることなく戦う姿勢を保ち続けている。
「テファ、早く!」
「あ、はい!」
アスカの呼び掛けで我に帰った彼女は車に乗り、アスカの車は発進した。
 
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