星河の覇皇
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第七十部第一章 外縁部の賊その三十四
「子供はすぐに大きくなる、一番上は息子だけれどな」
「で、その息子さんは」
「一体」
「今度結婚するんだ」
大学入学よりもさらに先の話になっていてというのだ。
「早いだろ」
「結婚ですか」
「俺まだなんですけれど」
「俺なんか彼女すら」
「相手はタンザニア人でな」
連合のこの国の人間だというのだ。
「結婚と一緒に連合市民になるみたいだな」
「結婚して、ですか」
「完全に連合に入るんですか」
「そうなるんですね」
「みたいだな、俺はまだなってないがな」
連合市民にはというのだ、義勇軍の将兵は難民達から編成されておりその法的立場はサハラ各国の市民となっている。
「もう息子はな」
「曹長よりも先にですか」
「連合市民ですか」
「そうなるんですね」
「ああ、俺はな」
かつてサハラにいた彼はというのだ、祖国に馴染みがあるだけに。
「まだ迷ってるんだよ」
「連合市民になるか」
「どうなるか」
「それはどうしようかとですか」
「迷ってるんですね」
「そうなんだよ」
実際にとだ、兵士達に話した。
「俺はな」
「ですか、そういえば俺達も」
「実際どうしようか迷ってます」
「難民とはいっても」
「サハラに愛着があります」
「どうにも」
これは兵士達の考えだった、彼等にしてもサハラに愛着があるのだ。
「だから連合市民になるかっていうと」
「それはどうにも」
「迷いますね」
「連合はいい国ですけれど」
「サハラには愛着ありますから」
「実際のところ」
彼等にしてもそうなのだ、祖国であるからこそ。
「いい国かっていうと違いますけれど」
「戦争ばかりでしたし」
「そのせいであちこち荒れて難民多くて」
「貧乏で民間技術も低くて」
「いい国じゃないですけれどね」
「愛着はありますよ」
祖国としてというのだ。
「ですから戻りたいって気持ちはあります」
「俺達にしても確かに」
「戻りたいとも思います」
「ここも好きですけれど」
連合にも思いはあるというのだ、この辺りは複雑なところだった。
そうした話をしてだった、そして。
兵士達は曹長にだ、また言った。
「まあとにかく息子さんはですね」
「おめでとうですね」
「結婚しますし」
「連合市民にもなりますね」
「娘もそう言ってるんだよ」
娘の話もだ、曹長はした。
「連合にいるってな」
「ですか、娘さんも」
「連合に入るんですか」
「サハラに戻らずに」
「こっちで暮らすって言ってるんですね」
「若い子ってよくそう言いますね」
「御前等の間でもそうだろ」
曹長は兵士達にも問うた。
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