| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

星河の覇皇

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第七十部第一章 外縁部の賊その三十三

「なかったからな」
「ちょっとでも独裁者を批判したらですね」
「それで終わりだったんですね」
「粛清か強制収容所行きだった」
 そうなったというのだ。
「それかな」
「最前線送りですね」
「懲罰部隊行きですね」
「そうなっていた」
 サハラではよくある話だ、懲罰部隊という犯罪者や国家にとっての異分子を最前線に送り危険な任務に就かせるというものだ。
「それで何人死んだか」
「そんなl国よりもですか」
「今の連合はずっといいんですね」
「ヤクザがいても」
「そうなりますか」
「人間の世の中ってのは完璧じゃないからな」
 曹長はこうも言った。
「完璧なものなんて一つだろ」
「アッラーだけですからね」
「もう一つって言われたらコーランですね」
「他にはこの世に完璧なものないですからね」
「それこそ全く」
 兵士達もムスリムなのでこう言う。
「アッラーは完全ですが」
「人間は完璧じゃないですからね」
「だから世の中もですね」
「完璧じゃないですね」
「そうだ、完璧だなんてな」
 それこそというのだ。
「この世にはないからな」
「だからヤクザがいてもですね」
「犯罪者がいても」
「独裁国家よりはまし」
「戦争ばかりしているよりも」
「ずっといいだろ、じゃあ御前等今度の作戦でもな」
 辺境外縁部の犯罪組織をまさに一掃するその作戦でもというのだ。
「死ぬなよ」
「わかってます、生きますよ」
「戦死なんてしませんよ」
「俺達まだまだ生きたいですから」
「世の中楽しみたいですからね」
「俺達義勇軍は死傷率が高いがな」
 理由は簡単だ、真っ先に火事場に飛び込むのが仕事だからだ。もっと言えば撤退の時には後詰を務めることになっている。
「それでもだ」
「頑張って生きろ」
「無駄に死ぬな、ですね」
「そうだ、死ぬな」
 作戦が実行に移されてもというのだ。
「いいな」
「わかりました、生きます」
「何かと難しいでしょうが」
「そうします」
「そうだ、戦って生きろ」
 こう言うのだった、兵士達に。
「何があってもな」
「はい、そうします」
「何があっても」
「そして生きます」
「絶対に」
「そうしろ、この船が沈んでもな」 
 それでもというのだ。
「頑張って生きろよ」
「そうしますね」
「最後まで諦めないで脱出します」
「そうします」
「そういうことでな、俺も家に帰ったらな」
 その時はというと。
「女房と一緒にお祝いするか」
「今度娘さん大学入学ですよね」
「そう聞いてますけれど」
「ああ、この間まで小さかったのにな」
 曹長は娘の話を振られるとだ、急に笑顔になって話した。
「もう大学行くんだよ」
「早いんですね、子供の成長って」
「そうなんですね」
「実際早いぞ、御前等も結婚したらわかるからな」 
 こう笑顔で話すのだった、まだ結婚していない彼等に。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧