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レーヴァティン

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第八十九話 大坂に戻りその七

「自信があるたい、分身の術を使うたい」
「ああ、それで同時に何ヶ所も歩いてか」
「情報を集められるとよ」
「では私も式神を使って」
 陰陽師の良太も言ってきた。
「彼等の目や耳からです」
「情報を集めるんやな」
「そうします」
 こう耕平に答えた。
「是非」
「ほなな」
「三人で情報を集めていきましょう」
「それがええな」
「これからは」 
 情報収集は三人となった、そして実際にだった。
 彼等が情報収集を担当することになり幸正と当季が商売をしてだった。他の面々も情報を集めていった。
 一行は動きはじめた、それは英雄も同じで。
 あちこちを動き大坂の町の状況を頭に入れていっていた、今彼は桜子と共に夜の神社の本堂で開かれている賭場に入っていた。
 そしてそこでだ、桜子にこう言われた。
「ここを仕切ってるヤクザ屋さんだけれどね」
「どういう連中だ」
「賭場系の方じゃ大坂で一番大きな組らしいよ」
「そうなのか」
「ああ、ヤクザ屋さんっていっても色々でね」
 一口にヤクザといってもというのだ。
「賭場や人足斡旋、テキ屋に土木にね」
「色々だな」
「色々な仕事で暮らしててね」
「ここを仕切ってる組はか」
「そっちなんだよ」
 賭場系だというのだ。
「それで大坂で一番大きな組だよ」
「そうか、それでこの連中もか」
「賭場はこっちが握るからね」
「やがて仕事を失うな」
「その時どうするかだよ」
「ならだ」
 英雄は賭場の中で男達が丁半に興じているのを見つつ述べた、皆刺青を入れた男の威勢のいい声に乗り酒や鉄火巻きを摘みながら賭けを楽しんでいる。
「ここを仕切っている連中はな」
「別の仕事に送り込むね」
「ヤクザで罪を犯していない奴はな」
 殺人等重罪を犯していないならというのだ。
「カタギに戻す」
「そうしていくんだね」
「そうだ」
 そうするというのだ。
「仕事がないと何をするか」
「ヤクザ屋さんがそうなるとね」
「賊になる」
 英雄は確信を以て言い切った。
「そうなる」
「だからだね」
「そうだ」
 まさにという返事だった。
「別の仕事をやる」
「手に職を与えるんだね」
「そうしてでもな」
 そこまでしてというのだ。
「カタギに戻す」
「それいいね」
「ヤクザを減らすにはその仕事を奪ってだ」
 そしてというのだ。
「別のカタギの仕事に回す」
「そうしていくんだね」
「ヤクザは厄介だがな」
 それでもというのだ。
「何とかしないとな」
「街にとってはよくないしね」
「だからそうする、そしてだ」
「そしてだね」
「俺は今ここにいるが」 
 賭場、この場所にというのだ。
「しかしだ」
「あんた博打はしないね」
「酒と女は好きだが」
 この二つの遊びはというのだ。
「しかしだ」
「それでもだね」
「博打はしない」
 これはというのだ。 
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