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レーヴァティン

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第八十九話 大坂に戻りその五

「この世界だとよくわかることだな」
「ああ、神様も仏様もいるぜよ」
 その通りだとだ、当季は肉玉を食べつつ答えた。
「だからわし等もこの世界に寝たら来るぜよ」
「そうだな」
「それで、ぜよ」
 さらに言う当季だった。
「お寺も神社もじゃな」
「壊すつもりもない、そして商人達もな」
 大坂の彼等もというのだ。
「俺達の政に従ってもらう、商売は好きにしていいが」
「兵は持たせないで、じゃな」
「持っている商人からは取り上げる」
 その兵達をというのだ。
「そして力を持ち過ぎている座等はな」
「抑えるんじゃな」
「そうする」
「独占は許さんか」
「そこまで力をつけられるとな」
 街、ここで言うのは大坂の街を牛耳るまでの力を身に着ける座等の組織やそこまでの豪商が出てはというのだ。
「他の者の商売にも害を与えるしだ」
「政にもじゃな」
「影響を与える」
 つまり邪魔になるというのだ。
「だからだ」
「独占するまでは許さんか」
「そこまではな、しかしそれはな」
「殆どないのう」
「商売も日進月歩で栄枯盛衰がある」
 この二つの要素があるというのだ。
「競争が行われていてな」
「その競争の中でぜよ」
「商人も浮き沈みがある」
「独占するまで殆どならんでな」
「独占してもな」
「落ちるのう」
「そうなることも多い」
 資本主義経済では実際はそうなっていく、マルクスが言う独占資本かというものはまず生まれず生まれても泡沫となる。
「だからな」
「その政は殆どすることはないのう」
「考えてはいるが」
「殆どすることはないぜよ」
「商売は好きにさせて儲けれもらう」
 ある程度以上はというのだ。
「ただ俺達は貧しい者はな」
「底上げじゃな」
「それをするとさらによくなる」
「そうじゃな」
「格差社会という言葉は嫌いだが」
 英雄はそこに露骨にマルクス主義めいたものを感じているからだ、事実この言葉を言っていた者達の多くはそうした思想の残党達か何故かそちらに転向していった者達だという。
「だが貧富の差はな」
「出来るだけ縮めるべきぜよ」
「政としては」
「仕事与えたり待遇よくしてのう」
「そうした政もしていく」
 是非にというのだ。
「大坂を手に入れるとな、ではな」
「まずは商売だな」
 幸正が英雄に応えてきた。
「そうだな」
「そうだ、全員稼げる手段でだ」
「今は銭を稼ぐな」
「用心棒でも魔物退治でも情報屋でも博打でもだ」
 とにかくあらゆる手でというのだ。
「今俺達が持っている銭の二十倍はだ」
「儲けてか」
「確かな財源も手に入れてな」
 勿論その中には商売も入っている。
「そうしてだ」
「さらにだな」
「儲けていくぞ、いいな」
「わかった、では我とこいつはだ」
 幸正は当季も見つつ英雄に応えた。 
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