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レーヴァティン

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第八十九話 大坂に戻りその二

 酒も頼み十三人全員で大きな卓に座って飲み食いをはじめた、英雄は海老玉を食ってこんなことを言った。
「これはな」
「美味しいっちゃ」
「そうだな」
 こう愛実にも応えた。
「ソースも効いていてな」
「マヨネーズもかけていてっちゃ」
「濃厚な味でだ」
「しかも量も多くてっちゃ」
「楽しめるな、酒も美味い」
 英雄は焼酎を飲みつつ述べた。
「今夜も飲むか」
「そうするとね、しかし」
 香織は焼きそばを食べつつ英雄に言った。
「前から思っていたたいが」
「どうした」
「こっちのお好み焼きはこれたいな」
「大坂のものだな」
「そうたいな、広島のはないたいな」
「この島では安芸だな」
「あっちのお好み焼きはなかとよ」
「あるにはあってもだ」
 それでもとだ、英雄は海老玉を食べつつ答えた。
「わかるな」
「大坂はたいね」
「お好み焼きといえばだ」
 まさにというのだ。
「これだ」
「挟むものじゃなかとね」
「混ぜて焼くものだ」
「それが大坂のお好み焼きたいね」
「そうだ、広島のものはな」
 そちらのお好み焼きはというと。
「広島焼きという」
「こっちでは安芸焼きたいか」
「そうなる、だが俺はそちらも嫌いじゃない」
「ああ、お品書きにもあるわ」
 耕平はそのお品書きを見て述べた。
「広島焼きってな」
「はい、それも何種類も」
 謙二も店のお品書きを見て言う。
「ありますね」
「そやな」
「ではこれも頼みますか」
「そやな、一人一枚ずつな」
「それでいきましょう」
「おばちゃん、ちょっと来てや」
 耕平は早速店の者を呼んだ、するとおばちゃんではなく若い娘が来た。耕平はその娘に広島焼きを十三枚注文した。
 それからだ、彼は他の面々にこんなことを言った。
「あっちじゃこっちのお好み焼き大坂焼きっていうんやったな」
「そうみたいだね」
 桜子は豚玉を食べつつ耕平に応えた。
「あっちじゃね」
「どっちもこだわってるんやな」
「ああ、そっちもそっちでね」
「まあそれはな」
 どうかとだ、耕平は桜子に話した。
「譲るに譲れんな」
「ものがあるね」
「大坂と広島って仲悪いかっていうとな」
「別に違うね」
「野球でもな」
「阪神と広島ってね」
「別に仲悪くないで」
 この二チームはというのだ。
「阪神がどれだけカープに負けてもな」
「毎年負け越してるよね」
 桜子は清酒を飲みつつ耕平に言葉を返した、言いながら彼の杯に清酒を入れてそうして飲む様に促している。
「惨敗続きで」
「けどや」
「お互い仲悪くないね」
「何かあまり嫌いになれへんのや」
 耕平は焼きそばを食べつつ桜子に答えた。
「巨人やったら別やけどな」
「ああ、巨人ね」
「自分江戸っ子やったな」
 耕平は今度は飲みつつだ、桜子をジロリと見て問うた。
「ってことは」
「ああ、あたし燕だよ」
 桜子は豚玉をまた食べつつ答えた。 
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