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レーヴァティン

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第八十八話 大坂に戻りその十三

「皇居なのだからな」
「そうしたお城ではなくなっているので」
「俺はいいと思う、皇居は皇居であってだ」
「武士のお城ではない」
「江戸城の時はあってもよかった」
 ただし江戸城の天守閣は火事で焼失してから建てられないまま二百年以上経ち幕府が終わってしまっている、当時の大老松平正之が再建の費用を江戸の町の復興にあてた為であるという説があるが若しそうならこれは江戸の民を救った英断であろう。
「だが皇居は皇族の方々の場所だ」
「武士の場所ではないので」
「俺の考えではな」
「天守閣は不要ですか」
「そうだ、しかしな」
「他のお城は」
「必要だ」
 武士の城であるからだというのだ、
「当然俺が建てようと思っている大坂城もな」
「天守閣が必要ですか」
「太閤さんのものを建てたい」
 その天守閣をというのだ。
「黒い壁と黄金の瓦のな」
「あの天守閣をですか」
「築く、そしてだ」
「大坂城の象徴であり」
「この島を統一する俺達のな」
「象徴でもありますね」
「そうだ」
 まさにとだ、英雄は紅葉に答えた。
「そうなる様に考えている」
「象徴ですか」
「俺達のな、この島を統一して海の魔神も倒してだ」
 そうしてというのだ。
「世界を救う俺達のな」
「象徴として」
「建てる」
「大きいでありますな」
 峰夫はここまで聞いて述べた。
「英雄殿が考える天守閣の意義は」
「俺達の象徴だからか」
「そこまでお考えとは、つまり」
 峰夫は英雄にさらに話した。
「世界を救う象徴ですか」
「俺が考えている大坂城の天守閣はな」
「やはり大きいでござる、そこまでとは」
「太閤さんは日本を統一し戦国の世を終わらせた」
 それが豊臣秀吉の最大の功績だと言われている、他には奴隷として他国に売られていた民達を買い戻して救ったりもしている。
「それを思うと大坂にな」
「城を築くとなると」
「天守閣もな」
「築かずにはいられず」
「それを俺達の象徴にしたい」 
 島を統一し世界を救う自分達のというのだ。
「そう思ってだ」
「太閤さんの天守閣でありますか」
「あれを建てたい、もっとも既にこの世界に大坂城はあるそうだがな」
「今は海の中でござるな」
「そこにあるという、しかしな」
「この島でもござるな」
「建てて俺達の象徴にもしたい」
「太閤さんの様に」
「俺はあの人が好きだ」
 豊臣秀吉がだとだ、久志はこうも言った。
「天下を統一して奴隷を救ったからな」
「伴天連に売られていたでありますな」
「かなりいたそうだが」
 五十万もの日本の娘が奴隷として他の国に売られていたという、豊臣秀吉はその話を聞いてすぐに銀子を出して彼女達を救ったのだ。尚このことが切支丹禁制に直結したことは言うまでもないことだ。 
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