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レーヴァティン

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第八十八話 大坂に戻りその十二

「それでは」
「ではな、若し地図がないとな」
「その時は」
「その巨城は再現しない」
 豊臣時代のそれはというのだ。
「天守閣は築くが」
「それでもですか」
「それなりの城になる、堅固でもな」
 城攻めには定評があった豊臣秀吉が彼が持っている城への知識を全て使って築かせたその城でなくというのだ。
「太閤さんの城ではなくなる、だがな」
「それでもですね」
「地図はあった筈だ、大坂の街の本屋で見かけた」
「手近な場所にあるのですか」
「案外な、かなり高級な本屋の奥の秘蔵品の様だったが」
「大坂城のこともですか」
「何でも下の世界にあったらしい」
 英雄はさらに話した。
「今は海に覆われているな」
「あちらのですか」
「日本の大坂の城らしいな」
「その地図がですか」
「あった」
 その本屋にというのだ。
「だからだ、大坂に戻ればその本屋にも行ってな」
「そうしてですね」
「地図が載っている本も買ってだ」
 そうしてというのだ。
「築城に使う」
「旗揚げを果たした後で」
「この島を統一する拠点としてな」
「そうですか、しかし下の世界は」
 今は海に覆われている世界のこともだ、紅葉は思い言うのだった。
「大坂城もあるとは」
「その様だな、どうも地理は俺達の世界とな」
「あまり変わらないのですね」
「宙に浮く島があって随分広いらしいがな」
「それでもですね」
「地理自体はな」
「変わらないのですね」
 英雄にこのことを確認した。
「そうなのですね」
「そうらしい、だからな」
「大坂もあって」
「大坂城もあるらしいな、ならな」
「その大坂城をですね」
「再現したい」
 この島にというのだ。
「あれだけの巨城をな」
「ですか、天守閣も」
「勿論だ」
 城の象徴であるこれもというのだ。
「再現してだ」
「あの天守閣をですね」
「築く」
 こう答えたのだった。
「必ずな」
「そうされるおつもりですか」
「天守閣は遠くまで見えて戦略にも戦術にも使える」
 そもそもそれが目的だ、元々欧州の城にあった天主からはじまっているがこちらも高い場所から遠くを見るものだ。
「だからな」
「天守閣もですね」
「築いてな」
「遠くを見て」
「戦を考える、それにだ」
 英雄は天守閣についてさらに話した。
「天守閣のない城はな」
「それが日本のお城なら」
「意味がない」
 こうも言うのだった。
「鴨肉か鶏肉の入っていない鴨なんばうどんかそばだ」
「そうなりますか」
「そんなものは本当にな」
「味気ないですか」
「江戸城はいいがな」
 今は皇居となっているこの城はというのだ。 
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