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蒼穹のカンヘル

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四十枚目

セラフォルーが建てたこの館にはバカデカイ書斎がある。

今日はヴァーリだけがアザゼルに呼ばれていたので、俺は書斎で術式を編んでいた。

「ミッテルト。三番四段目右から四つ目取って」

「ちーっす」

ミッテルトから受け取った資料を元に古文書を読み解く。

今研究中の物にどうしても必要な物なのだ。

「ご主人様ー。暇なんすけど」

脚立に乗ったミッテルトがパタパタと脚をふる。

メイド服のミニスカートがめくれて中のかぼちゃパンツが露になる。

「ん? そこら辺の本でも読んどけ。為になるぞ」

「いや、読めないっす」

「はぁ? お前も龍魔天使だろうが。読め」

「えー…」

悪魔になったならば、如何なる言語も理解できる。

ただ、理解できるから読める訳でもないのが古文書やら魔導書というやつだ。

「あのねぇ、お前プロモーションしたらビショップだろう?」

「それっすよ。なんでアタシらポーンなんすか。一番の雑魚っすよ?」

「バカか。ロストで送り込んで一瞬でプロモーション出来る」

「えー…アタシ後衛…」

「光の槍術使いじゃなかったのか?」

「ジャベリンだし!」

「まぁどっちでもいいけど」

「きー! ムカツクっす! そりゃご主人様は幹部級なんすから強いのはあたりまえっすけど! アタシらだって四枚羽なんすよ!」

「あ、俺十枚」

「んなこたぁしってるっすよ!」

「いいじゃん…つかお前らも龍魔天使の翼入れたら六枚だろ?」

翼の数は力の度合いそのものだ。

ミッテルト達三人は下の上から中の下。

今となっては貴重な動ける中級堕天使だ。

戦争で主力を失い、幹部としたっぱだけになったグリゴリ。

アザゼルが三人を消さなかったのはそういう理由だろう。

「そうっすね…でも使ったら服が破けるのどうにかならないっすか?」

「?」

服が破ける?

「新しいメイド服にはちゃんと翼と尻尾用のスリットが入ってるはずだが」

三人が初めて龍魔天使になった日、せっかくのメイド服が破れたのでセラフォルーに頼んだのだ。

俺も確認した。

「え? なんすかソレ?」

「試しに今やってみ」

ミッテルトが脚立から降りて、脚を肩幅に開く。

「リベレイション!」

ミッテルトの背部にバサリと爪のある純白の翼が広がり、腰から尾が伸びる。

そして幽かな光を放つエンジェルハイロゥが浮かんでいた。

服は全く破れていない。

きちんとスリット部分から出て居るようだ。

「わっ本当にやぶれてないっす」

「だろう?」

ミッテルトがクルリと体を回す。

「ま、暫くそのままで慣れろ」

「うぃーっす」

そのあとミッテルトは小説を読み出した。

小一時間ほどして、ミッテルトは小説を読み終えたらしい。

「ご主人様ー」

「なんだー」

「今はどんな魔法作ってるんっすか?」

「んー。エロい触手を召喚する魔法」

「ぶふっ!?」

「冗談だよ冗談」

「はぁ…びびったっす…」

「ま、そんな魔法あってもお前には使わないよ。
そんな貧相な体辱しめた所でねぇ…」

「はずっ…ご主人様ド変態っすか!?」

「んー? ふつうじゃね?」

「はぁ…。で、本当は何を作ってるんっすか」

「お前らがアザゼルの所からぱちろうとしたやつの一つさ」

「疑似セイクリッドギアっすか?」

「ああ」

いま書いているのはそれに仕込む術式だ。

名はルガーランス。

万象を貫く雷の槍………になるはず。

ミッテルトに術式の内容と陣を見せる。

「うへぇ…訳わかんねぇっす」

「だろうね」

俺はサハリエル先生やジュスヘルに術を習っている。

それは月の真理だったり妖術の奥伝だったりが含まれる。

そのあとミッテルトと色々駄弁った。

そんな折だ。

部屋の中に魔方陣の輝きが生まれた。

「カガリ。迎えに来ました」

それは眼鏡をかけた少女だった。

「ソーナ、わざわざ来なくても印章紙で知らせてくれればいいのに…」

「お姉様がそうしろと」

セラフォルーが?

「まぁ、いいや。で? 魔王からオーダー?」

「はい。詳しいことはあちらで話したいとの事です」

「了解。じゃぁ、すぐ行くよ」

ソーナがミッテルトにめを向けた。

「どうしたんっすか?」

「貴方…カガリの駒ですか?」

「ポーン一個っすよ」

「これほどの堕天使をポーン一つで……」

「ドラグーンピースについてはセラフォルーから聞いてないか?」

セルピヌスの力の影響で、もんのすごい強化されてるっぽい。

「聞いていますよ。なんでも主に逆らう駒だとか」

いやそれ俺が悪いんじゃないから。

「ミッテルト、来るか?」

「行くっす。どうせ暇っすから」

椅子から立ち上がり、カンヘルを召喚する。

『【アポート】』

今着ている半袖半ズボンから、ゆったりしていてかつ背中が大きく空いたワンピースに着替える。

「解放」

押さえ込んでいた物を顕す。

三本の角。鎧のような龍の四肢。背中を走る鱗のライン。尾てい骨から伸びる尾。二対の翼。輝く光輪。

「じゃ、セラフォルーの所行こうか」

『【ロスト】』 
 

 
後書き
あの三人のなかでミッテルトが一番なつきそう。
あと口調がわからないからミッテルトは後輩口調だけど勘弁してください。 
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