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蒼穹のカンヘル

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四十一枚目

セラフォルーの所に転移すると、サーゼクスとベルゼブブ様がいた。

出た場所は会議室のような場所だ。

「御初にお目にかかりますアジュカ・ベルゼブブ様。
頭上に光輪を浮かべての謁見どうかご容赦ください」

「構わない。そんなに畏まる必要もない。それとも俺は君がからかうに値しないか?」

「いえ、からかおうなど畏れ多い事です」

「どういう事かな少年? 私やサーゼクスちゃんはからかってもいいの?」

「………………………ふっ」

「っはっはっはっはっ! 面白い子だ。セラが気に入ったのもわかる。
さてカガリ君。仕事の話だ。掛けてくれ」

ベルゼブブ様が指差す椅子に座る。

両隣にミッテルトが座り、ソーナは退室した。

「来てもらった理由はこれだ」

モニターには<聖剣計画>と書かれていた。

「教会では悪魔に対抗する存在として長年戦士の育成が行われてきた。
この聖剣計画もその一環だ」

聖剣…計画……たしか…木場佑斗に関するエピソードでそんなのがあったな…。

「聖剣、つまりはエクスカリバーを扱える人間を育てる事を目的としている」

「それを何故私に?」

「君には彼等聖剣計画の子供達を救ってもらいたい」

「何故?」

「教会に潜り込ませたスパイからの情報だ。
この計画は前々からマークしていた。
近々彼等聖剣計画の子供達を殺処分するらしい。
いや、今すでに手が下っているのかもしれない」

「それはまた……物騒ですね。教会の闇ですか」

最も恐ろしいのは、いつだって人間…か。

「これを聞いたとき、ベルゼブブと呼ばれる私も背中におぞけが走ったよ。
人間がここまで残虐になれるのかとね」

「人間は残虐ですよ。なんせ、自身の娘ですら殺そうとするのですから」

そう、例えば、あの忌まわしい姫島の者達のように。

「君ならそう言うと思った。では直ぐにでも発ってくれ。
仮に生き延びた者が現れても、今度は教会の処刑人がうごくだろう」

「は、仰せのままに」

ベルゼブブ様から地図を受けとる。

場所は欧州。

「では行ってくるぞ。セラフォルー、サーゼクス」

「いってらっしゃい☆」

「武運を祈るよ」

『【ロスト】』










地図のポイント近くに転移する。

雪が降っていた。

「出でよ我が龍の血を分けし下僕よ」

ミッテルトの隣にレイナーレとカラワーナを召喚する。

「お呼びでしょうかごしゅ……寒い!?」

「こ、氷る! おいご主人様ここはどこだ!?」

レイナーレとカラワーナが揃って寒さに文句を言う。

「ヨーロッパだよ。今から罪のない子供を殺そうとしているカスどもを叩く」

「相手は教会? それとも悪魔?」

「教会だよ」

もう一つ魔方陣を展開し、黒歌を呼び出す。

「黒歌」

「寒いにゃぁ! なんでいきなりこんな所によぶにゃ!?」

何故って…だって近くに来てるかもしっrないじゃん。

あの赤髪のお転婆娘が。

「うるさいぞ。兎に角龍脈に繋いで近くに人が居ないか調べろ」

「にゃ?」

黒歌がロリボディを震わせながら、地面に手を着ける。

「ちべたいにゃー……にゃ?」

「どうした?」

「こっから600メートル先に悪意と幽霊が居るにゃ。
その直線上800メートルに死にかけが一…………にゃ? 何故かリアス・グレモリーが居るにゃ」

遅かったか!

「急ぐぞ! いや乗り込むぞ! プロモーション用意!」

各々が武器を構えた。

「【ロスト!】」

施設内部に強制転移する。

転移したのは大部屋だった。

嫌な臭いが立ち込めている。

そして、足元には倒れ伏す十数人の子供達。

「研究員を全て捕らえろ! 俺はコイツらを蘇生する!」

黒歌とプロモーションした堕天使組が部屋から出ていく。

「セルピヌス!」

『わかっている!』

カンヘルの底を床に叩きつけた。

神器を通し、子供達の状態が伝わる。

ガスによって肉体がダメージが受けていた。

更には聖剣の因子を抜き取られ、魂にも傷がついている。

「セルピヌス。彼等の足りない部分を補うくらい。お前にはできるよな?」

『私を嘗めるな。全てを祝福する者だぞ』

ああ、わかっているさ!

いくぞ相棒!

「我創造の龍なり! 世界を作りし同胞と万象を祝う我が身が命ず!
汝らいまだ冥界へ向かうことなかれ!」

『【リライブ】』

カンヘルから結晶が溢れ出る。

子供達の肉体を覆い、その傷ついた体を癒す。

抜き取られた因子の分の足りない部分をセルピヌスの祝福で満たす。

器と中身のどちらも欠かす事はできない。

体の奥底から何かがごっそり持っていかれた感覚と共に、子供達を覆う結晶が砕け散った。

「セルピヌス」

『問題ない。全員無事だ』

その言葉でふっと気が抜けた気がした。

カンヘルを消して倒れ込む。

「つかれた…。なんでだろう…」

『生命の理をねじ曲げる事は容易ではない』

「そっか…」

『これだけの人数を甦らせたのだ。その疲労も妥当なものだろう』

暫くして、カラワーナが戻ってきた。

「ご主人様。終わったぞ」

「はいはい…」

カラワーナの後をついていくと、防護服に身を包んだ者や白衣の者がいた。

「バルパーはどうした」

「居なかったわ。既に逃げた後みたいね」

チッ…。

研究員達に手を向ける。

「取り敢えず、お前ら全員俺の糧になれ」

研究員達を侵食していくと、様々な知識が流れ込んでくる。

教会の事。子供達の事。聖剣の事。因子の事。

全員の体が完全に結晶化し、粉々に砕けた。

「あとは…どうするかなぁ…」

「みゃ、少年。リアス・グレモリーが此処に向かってるにゃ。その後ろに白音と少年の姉もいるにゃ」

「わかった。出迎える」

side out







篝が四人を迎え入れた。

「ようこそリーアちゃん。人間の業を濃縮しまくったクソみたいな研究所へ」

「あらずいぶんなお迎えね。堕天使三人に囲まれて肝がひえたわ」

篝は研究員を拘束していた部屋で机に腰かけていた。

出迎えにいかせたレイナーレ達がリアスの後ろに控えている。

「いや、俺だって自分で行くべきかと思ったけど、色々準備があったからさ」

「そう? ま、それで納得しておくわ」

「それにもしレイナーレ達が暴走しても姉さんがどうにかするんじゃない?」

「あら、嬉しい事を言ってくれますね篝」

篝が簡易ベッドを指差す。

「その男の子はあっちね。それで? リーアちゃん達こんな所で何してたの?」

「別件で近くまで来ていたのだけど、偶々悪魔のエージェントと会ったのよ。
その人から話を聞いて、ここまで来たって訳」

「ふーん…」

「そうそう。そこの男の子は眷属にしたわ」

「俺も残りの子を甦らせたよ」

「大団円かしら?」

「さぁな。それは彼等が決める事じゃないのか?」

「ええ…そうね」

「兎に角セラフォルーやサーゼクスに指示を仰ごう。
この研究所は…直ぐにでも教会の処刑人が来るだろうから土地ごと俺の領地に持っていこうか」

篝がカンヘルでコツンと床を叩いた。

中からは確認できないが、この時研究所周辺の土地は丸ごと黒い球体に飲まれていた。

闇が晴れた後、そこには明らかに土壌も植生も異なる場となっていた。

「さぁ、これで追っ手を気にする必要もなくなった」

篝は少年をレイナーレに抱かせ、施設を出る。

施設の土地は屋敷の数十メートル隣に転移していた。

「残りの子供達も大部屋に布団か何か敷いてから寝かせる。
その時はロストで送るから、お前達は大部屋に布団敷いて。敷き布団だけでいいから」

篝がメイド(擬き)に指示を出す。

「OK。わかったっす」

「こんなのばっかりね私達」

「最近戦ってなくて体がなまっているな…」

「そら行け。【ロスト】」

四人が屋敷へ転送された。

「俺達は今から魔王の元に向かう。OK?」

篝が振り向くとリアスがこっそり逃げようとしていた。

「………………………………」

「おい。逃げるな赤髪のお転婆娘」

むんずとリアスの腕を取る。

「嫌よ放しなさいカガリ!」

「うるさいおとなしくヴェネラナさんに叱られろ!」

「偶々よ偶々!」

「疚しくなかったら逃げんなや!」

篝は翼を大きく広げ、朱乃と白音を包んだ。

「【ロスト】!」

リアスの視界が晴れた時、目の前には兄サーゼクスがいた。

「?」

きょとんとした顔のサーゼクス。

「任務完了。聖剣計画の子供達は一名を除いて蘇生のち保護。逃亡していた一名も偶然居合わせたリアス・グレモリーが保護。
死者は研究員のみ」

篝がアジュカに報告する。

「ご苦労だった。その子供達はどうするかね?」

「なんなら俺の領地に住まわせても構いません。
そこのバカが土地だけはくれましたから」

「うん。それはいいとして少年はなんでリアスちゃんを拘束してるの?」

「このお転婆娘が逃げようとするからさ。サーゼクス、お前からも危ない事はするなと言ってやれ」

「うん? 偶々なのだろう?」

「純真か貴様!?」

「私が何も言わなくても母上が叱るだろう。
私の役目は……そのあとでリーアたんをうんと甘やかすことだ」

「なんで劇画チックにセリフ吐いてんだテメェ!」

「それが兄の役目だからさ…」

「おふざけはそこまでにしておけサーゼクス」

「お、そうだなアジュカ」

「軽いなー…」

と篝がため息をついた。

「ところで少年」

「ん?」

「子供達を棲ませるなら屋敷増築しようか?」

「んー…そうだなぁ…。うん。宜しく頼む」

「だってよ。手伝ってねアジュカちゃん」

「ああ。任せろ」

「何故アジュカ様が?」

「カガリ君。悪魔で君の事をしっているのは私達四大魔王とグレモリー家だけだ」

サーゼクスがそう切り出した。

「私達は君を天界に対する切り札になりうると考えている。
情報はどこから漏れるかわからない。よって君にかんする全ての手続きは我々魔王だけで内々に行っている」

「っていうのは建前でね☆ アジュカちゃんの暇潰しだよ☆」

「あっと驚くようなギミックを容易している。改築後は屋敷を探検してみるといい」

「は、はぁなるほど…」

篝は内心で、この人も魔王(変人枠)なんだな、と感じた。

「では、行っていいよカガリ君。リアス」

「セラフォルー。後で子供達の生活に必要な物を一通り送ってくれ」

「魔王少女におまかせ☆」



『【ロスト】』
 
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