| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

星河の覇皇

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第六十九部第四章 国境外縁部その三十四

「ここにいるのもいいな」
「ですね、サハラと比べて」
「全然違いますからね」
「スラム街でも立派なものですよ」
「サハラから見たら」 
 このことはアッディーンやシャイターンが見た通りだ、彼等が見ても連合のスラム街は見事なものなのだ。
「いい家で」
「家具もよくて」
「いい車に乗ってて」
「何処がスラムか、ですよ」
「全く違いますよ」
「そうだろ、だから連合にいてもな」
 そうしてもというのだ、市民権を得て。
「別にいいだろ」
「そうですね、サハラに戻っても」
「仕事もないですし」
「家もどうだか」
「もう生活基盤ないですからね、あっちに」
「向こうの政府が用意してくれてても」
「正直不安ですよ」
「だからな」
 それで、というのだ。
「もうな」
「連合にいてもですか」
「いいですか」
「別に連合市民になっても」
「それでも」
「いいかもな、まあとにかく酒飲んでストレスは解消だ」
 兵士達に言った、そうして。
 こうした話をしてだった、兵士達も下士官の言葉に頷きバーに入った。そこで連合のワインを飲んで言うのだった。
 テーブルに座ってだ、ワインをボトル単位で飲み肴のハムやチーズを楽しみつつだ。言ったのだった。
「美味いな」
「ああ、いいワインだな」
「これが安物だなんてな」
「信じられないな」
「ハムやチーズだってな」
「どっちもな」 
 肴のこちらもというのだ。
「美味いな」
「そうだよな」
「味が違うな」
「サハラのと比べてな」
「全然違う」
 尚ハムは羊肉のハムだ、豚肉のハムは戒律上で避けたのだ。
「こんなに美味いのが普通か」
「連合は凄いな」
「どれだけいいもの食ってるんだ」
「サハラじゃこんなの金持ちしか食えないぞ」
「それこそな」
「兵隊が食えるか」
「飲めるか」
 全く、というのだ。そして。
 目の大きな兵士はだ、傍を通った店のウェイトレス軍のバーに勤務している彼女に対してこう問うたのだった。
「姉ちゃん本当に注文したワインだよな」
「はい、そうですが」
 即座にだ、ウェイトレスは兵士に答えた。
「皆さんの」
「そうなんだな」
「ハムもチーズもです」
 そちらもというのだ。
「注文されたものです」
「そうなんだな」
「間違えていませんよ」
 ウェイトレスは確かな声で兵士に答えた。
「勿論お勘定もです」
「そっちもか」
「間違えていません」
「わかった、そうか」
「はい、そうです」
「ならいいけれどな、悪いな呼び止めて」
「いえいえ」
 ウェイトレスはこう返して義勇軍の兵士達の席を後にした。そしてこのやり取りの後でだった。兵士達はまた話した。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧