| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

レーヴァティン

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第八十六話 票田その四

「では誓いの酒を」
「それをですか」
「飲みますか」
「そしてその酒を飲み合い」
「絆を深める」
「そうするというのですね」
 この島でこうした時に酒を飲むことはまさに絶対に約束を誓うに等しい、握手の後で誓いの酒同じ杯で共に飲むことは。若しこの時の誓いを破ったことがわかればその者の信頼は地の底に落ちてしまう。
 久志もそのことを知っていてだ、老貴族に問うたのだ。
「絶対の」
「はい、それでは」
「宜しくお願いします」
 彼も頷いてだ、そしてだった。
 二人は同じ杯、それもミスリル銀のそれに満たされた赤いワインを交互に飲んだ。こうして彼は一人の有力者を支持者に得た。
 この老貴族だけでなく他の貴族や有力者達もだった。
 多くの者が久志への支持を約束していった、その結果彼は護民官への地位に近付いていったがそれと共にだった。
 久志は選挙の途中でだ、指輪を見て言った。
「ちょっと身を隠すか」
「まただね」
「ああ、近くにな」
 まさにとだ、彼は共にいる剛に話した。
「いるな」
「刺客だね」
「毒を塗った刃を塗ったな」
「君を狙ってるんだね」
「ああ、例え近付いてもな」
 それでもと言う久志だった。
「今の俺だったらな」
「あっさりとだよね」
「倒せるけれどな」
「指輪で事前にわかると」
「余計にな」
 ただ襲われる時よりもというのだ。
「楽に対応出来るからな」
「いいよね」
「ああ、さて刺客が来たら」
「どうするのかな」
「倒してな」
 そしてと言うのだった。
「誰の手か吐かせるか」
「そうするんだね」
「ああ」
 実際にとだ、久志はまた剛に答えた。
「いつも通りな」
「今度は誰の刺客かな」
「さてな、前は何とかいった大司教だったな」
「ローヴェレ大司教だね」
「選挙に出ていないのに刺客を送ってきたな」
「それはあれだね」
「俺の政策がか」
 政教分離のそれがとだ、久志はすぐに察した。
「気に入らなくてか」
「そう、それでね」
「刺客を送ってか」
「一時動けなくしてそれを時間稼ぎにして」
「動くつもりか」
「そうだろうね」
「生き返ることが出来る世界でも刺客ってあるのがな」
 これがとも言う久志だった。
「人間ってやつを考えさせられるな」
「その業をだね」
「ああ、それも真剣にな」
「やっぱり人間ってね」
 剛も久志にさらに話した。
「生きているとね」
「色々あってだな」
「そう、邪魔な相手は命を奪ってても」
「生き返ることが出来てもな」
「何とかしたいって思ったりするんだよ」
「政治の世界では特にだな」
「暗殺は最もいい政権交代の手段である」
 正も言ってきた。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧