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レーヴァティン

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第八十四話 ローマに戻りその五

「母親が死んでおっさんも生活苦で宗教団体に入ってな」
「ああ、その悪口言うたっていう団体か」
「それでその家に居座るどころじゃなくなったんだよ」
「ええことやな」
「それで今はな」
「宗教団体にもおられん様になってか」
「行方不明だよ」
 そうなったというのだ。
「今はもう死んだのかもな」
「そういうおっさんは死んだ方がええわ」
 美奈代は心からこう言った。
「さもないとな」
「迷惑かけるだけだからな」
「そや、何の努力もせんで文句ばっかり言うんやろ」
「偉そうにな」
「そんなんものの役にも立たんからな」
「そんな人間になりたくないしな」
 そう思うからだとだ、また言う久志だった。
「結婚してもな」
「努力が必要だね」
 剛も久志に応えて言った。
「ただ結婚するだけじゃなくて」
「ああ、結婚する前も結婚出来る様に努力してな」
「結婚してからも」
「ちゃんとした人にならないとな」
「いいご主人にならないとね」
「今話したおっさんみたいとか暴力振るう奴になったらな」
 それこそというのだ。
「他人様、奥さんもお子さんも不幸にするだけだからな」
「注意しないとね」
「本当に駄目だぜ」
「同感だよ」
 剛は久志の言葉に強い声で頷いた、そうしてエヴァが待つ屋敷に全員で帰るとハンナはまずは夫に笑顔で挨拶をした。
「お帰りなさいませ」
「長い間留守にして悪かったな」
「いえ、必ず帰ってこられるとわかっていましたので」
「だからか」
「私はお家を護り」
 そしてというのだ。
「この時を楽しみにしていたので」
「だからか」
「はい、寂しい思いはです」
「しなかったんだな」
「左様です」
「そうか、もうここを拠点にして冒険は出ないからな」
 それでとだ、久志はハンナに笑顔で話した。
「これまでみたいに家を空けることはないからな」
「長い間はですか」
「安心してくれよ」
「それでは」
「あとな」
 夫は妻にさらに話した。
「暫くはこの屋敷を拠点にするけれどな」
「それでもですか」
「まずはローマだ」
「この街をですか」
「俺達のものにしてな」
「そうしてですね」
「この島を統一するからな」
 こう妻に話すのだった。
「暫くこの屋敷を拠点にしてもな」
「それでもですね」
「やがてはな」
「この屋敷からですか」
「ああ、ローマ全体をそして島全体を治める様な」
「そうした場所にですね」
「移るからな」
 住む場所、そこをというのだ。
「そうするからな」
「わかりました、それでは」
「その時はまた頼むな」
「そうさせて頂きます」
「じゃあこれからな」
 久志は自分に応えてくれた妻にさらに話した。
「俺達はこの屋敷にいてな」
「ここからですね」
「動くな、家のことは使用人の人達もいるよな」
「はい、あなたが雇ってくれた方々が」
「その人達と一緒に頼むな」
 家事やそうしたことはというのだ。 
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