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レーヴァティン

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第八十四話 ローマに戻りその四

「その団体からは今は半分いなかったことにされてるよ。そのおっさんの親戚の人が団体の人達と親しいが」
「その人は評判が悪いか」
「いや、その人は後見人の人もいて別に組織とかに文句言わなくてな」
「嫌われていないか」
「酒癖悪いけれどな」
 そうした短所があろうともというのだ。
「嫌われてないな」
「それは何よりだな」
「それでその人にも言われないんだよ」
「そのどうしようもないおっさんのことはか」
「半分いなかったこととして扱われているからな」
「そうか、黒歴史扱いか」
 正はここでこの言葉を出した。
「そのおっさんは」
「ああ、それでな」
「今は行方不明か」
「本当にどうなったか」
「御前も知らないか」
「また浮浪者だろ、というかな」
 それかというのだ。
「正直誰からも相手にされてないか嫌われていてな」
「生きていてもか」
「どうしようもない位の人だしな」
「御前も知らないか」
「まあ死んだなら死んだって知りたいさ」
 久志にとってもそれだけだというのだ。
「本当にそれだけだよ」
「そうか」
「ああ、こんなおっさんと結婚してもな」
「駄目だな」
「不幸になるだけだよ」
 そうなることが決まっているというのだ。
「むしろ悪い奥さんと結婚するよりな」
「悪い旦那と結婚する方がか」
「多くてな」
 そしてというのだ。
「俺達にしてもな」
「悪い旦那にはならないことか」
「それが大事だろ」
「心に沁みる言葉だな」
「現実に見たからな」
 久志は正の今の言葉に眉を顰めさせて返した。
「俺も言えるけれどな」
「そんな奴を見たからか」
「ああ、残念ながらな」
「残念ながらか」
「見ていて嫌になったぜ、人のお葬式の時も親戚だからって勝手に上座に上がってな」
 そんなこともして、というのだ。
「亡くなった人のお姉さんに色々言ったりな」
「それあかんやろ」
 美奈代は久志が話した葬式での話に呆れて言った。
「お葬式の時は上座はや」
「遺族の人達だけだよな」
「それで何で上座に行くんや」
「自分から平気で行ったんだよ」
「どれだけわかってないねん」
「ちなみに他人の家に今日行くと午後に電話で言ってきて晩飯たらふく食って風呂に入って朝飯もたらふく食って帰るんだよ」
「そうしたこともしたんか」
 余計に呆れる美奈代だった。
「何ちゅう図々しさや」
「人の部屋に勝手に入って本を漁ったうえでな」
「うちやったらぶん殴って二度と来るなや」
 こう言っているとだ、美奈代は目を怒らせて言った。
「家族の誰が言うてもな」
「そうなるのが普通かもな」
「そんな奴は家に入れたらあかん」
 絶対にと言うのだった。
「いつくで」
「何かあったらな」
「そうなるからな」
 それでというのだ。
「絶対に入れたらあかん」
「それがな」
 久志は美奈代に難しい顔で述べた。
「その家におっさんの母親がいてな」
「ああ、その母親が甘やかしててか」
「いい歳なのにベタベタ付きっきりで甘やかしててな」
「それでかいな」
「家にいきなり来て大飯食ってたんだよ」
「難儀な話やな」
「それで本当に母親以外の家族がいつくのかって心配したらな」
 その時にというのだ。 
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