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レーヴァティン

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第八十三話 ローマに戻りその十二

「それでもな」
「奴隷制はなく」
「反対していたよな」
「はい」
 事実としてとだ、順一は答えた。
「そうでした」
「それだけ日本人に奴隷制が馴染まないからな」
「この島で奴隷制がないことは」
「有り難いな」
「ただ待遇が悪いことはあるので」
「それの改善もな」
「重要です、富裕層を育てると社会が豊かになりますが」
 資産をより多く生んでだ。
「所謂貧困層を豊かにしても」
「そうして貧困層でなくしたりな」
「労働条件を改善すれば」
「社会の底上げになるよな」
「そして支持も得られます」
「貧困層の数が多いのはな」
「多くの社会でもそうで」
 マルクス主義ではないがそれもまた社会ではよくあることだというのだ。
「その貧困層への政策もです」
「大事だよな」
「彼等の底上げもしていきましょう」
「社会全体の豊かさの為にな」
「これも重要です、ですが」
「それでもか」
「はい、一気に行うのではなく」
 貧困層への対策もというのだ。
「徐々にです」
「行うべきだよな」
「そうしないと」
「一気にやるとな」
「それはそれで弊害が出ます」
「革命か」
「聞こえはいいですが」
 革命、その言葉の響きはというのだ。
「しかしです」
「革命っていうのはな」
「フランス革命やロシア革命でわかりますね」
「社会が無茶苦茶になってな」
「多くの血が流れます」
「粛清でな」
 フランス革命ではジャコバン派がギロチン政治を行った、ロシア革命では共産党が粛清に次ぐ粛清を行った。
 そうしたことを知っているからだ、久志も順一に応えて言うのだった。
「とんでもないことになるからな」
「ですから」
「革命なんて起こさずにな」
「むしろ避けるべきです」
 革命はというのだ。
「急激な改革も」
「本当に徐々にか」
「はい、人間の身体でも病を急激に治そうとしてです」
「劇薬飲んだらな」
「確かに身体は治るでしょうが」
 それでもというのだ。
「しかしです」
「副作用も出たりするな」
「ですから」
「劇薬と一緒だな、革命は」
「避けるべきです」
「革命ってのは人がかなり死んでな」
 久志はまたこのことを言ってさらに話した。
「文化財とかもな」
「かなりなくなりますね」
「後で悔やむことになるからな」
「すべきではありません」
「そうだよな、じゃあな」
「はい、穏やかな薬で」
 まさにだ、徐々にというのだ。
「国家を徐々によくしていきましょう」
「それじゃあな」
 久志も頷いた、そしてだった。
 白ワインを飲んだ、そうして今度はこう言った。
「ワインも飲み方で一気に酔うな」
「そうなりますね」
「一気に酔うよりもな」
「徐々に酔った方がいいですね」
「そうだよな」
 こう話してだ、そのうえでだった。
 一行はデザートも楽しんだ、そうしつつローマまでの旅を楽しんだ。旅を楽しむその中でもこれからのことを考えていた。


第八十三話   完


                   2018・9・23 
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