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【完結】猫娘と化した緑谷出久

作者:炎の剣製
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猫娘と神野区異変編
  NO.087 嵐の記者会見

 
前書き
更新します。 

 



「生徒の安全……先ほどそう仰いましたね? イレイザーヘッドさん。事件の最中に生徒に戦うように促したそうですね」

一人の記者がそう相澤に話しかける。
少しでも隙を見せればすぐさまにそこを徹底的に突こうという魂胆を胸の内に秘めて。
このヒーロー社会、誰かが今回の責任を負うとなれば真っ先に雄英の、しかも実際に関わった人間を生贄にすれば後はどうにかなるだろうというあくどい考えもある。
……逆に言えば今している質問で下手な質問をしてしまえば記者としての人生も終わってしまうかもしれない。
だというのにこの記者の今から聞こうとしている事はある意味で核爆弾だったと……後の評論家がこう評価することになる。
それがどんな内容かは続きを見ていけば分かることである。

「意図を聞かせていただいてもよろしいですか?」
「私どもがヴィラン連合の襲撃によって混乱する状況を完全には把握することが叶わなかったために、最悪の事態を避けるべく、そう判断して各生徒の皆さんに戦闘の許可を下しました」
「その最悪の事態というのは……? 27名もの被害者と1名の拉致は最悪だったとは言えませんか?」

相澤はその質問に内心で煮え切らない感情を感じながらもそれを決して表には出さずに次の言葉を発する。

「…………私があの場で想定した“最悪”とは……生徒達が成す術もなくヴィラン連合の人間たちによって殺害されてしまう事でした」

それを聞いて質問をした記者は不満そうな顔をする。
決定打になりえるミスをまだ零さないことにこちらも煮え切らない感情を抱く。
これはもうどちらが先に根を上げるかの戦いになりつつある。

それから相澤に代わって根津校長が生徒達の現状や活躍によって被害は結果的に小さくできたと説明する。
現状では精神的に負荷を負った生徒はいないとも。

「不幸中の幸いだったと……?」
「未来が侵されることが最悪だと考えております」

ミスのない回答に先ほどから連続して質問している記者はとうとう深淵に踏み込もうとしてくる。

「攫われた緑谷さんについても同じことが言えますか……?」

そう、何人もの記者が質問に対する責任から逃れようと中々しなかった出久についてついに足を踏み込んでしまったのだ。
それが帰り路のない片道切符になるとは知らずに……。
もっと冷静になれていればこの記者はこの先も生き残れたことだろう。
だが、もう質問してしまったからには今更引き下がれないと、火蓋は切って落とされてしまったと、そんな歪んだ記者魂がこの記者を走らせた。

「体育祭準優勝……ヘドロ事件の時に遅咲きの個性の開花……あのインゲニウムの治療……上げていけば彼女の功績はキリがないかもしれません。
ですが私は常々不思議に思っているのですよ」
「不思議、とは……?」
「本来個性は基本一人一つが当たり前の世の中で彼女は複数の個性を持っています。体育祭で判明したもの以外にもおそらく持っている事でしょうね」

来たか……。
相澤はこの質問は来るものだとあらかじめ予測していたために覚悟はしていた。
記者は続けて話す。

「ですが、たとえ突然変異だとしてもそれで彼女をヴィラン連合が誘拐するのには理由足りえる決定打がありません。
なにか、彼女の過去にはとてつもない陰謀があるのではないかと思っているのです」
「…………」

敢えて無言でやり過ごす三人。
だが、ここでとうとう記者は言ってはならない一言を言ってしまう。

「……話は変わりますが、ヴィラン連合には改人・脳無という複数の個性を操るヴィランが複数確認されています。もしかして……緑谷さんはその脳無と同じ存在なのではないですか?」
「…………―――はっ?」

相澤の口から呆けた声が出る。
出久の個性について言及してくると思っていたが、まさかこんな斜め上からの質問が飛んでくるとは思いもしなかったために呆気にとられる。
それで記者会見の場は少なからず騒然としだす。

「考えてみてくださいよ。ヴィラン連合がわざわざ誘拐したのは彼女の事を回収する目的でもあったかもしれないと……そして、雄英は実は彼女がヴィラン連合のものだったと一般には隠していたかもと……私は推測するのですが、そこのところはどうなのですか?」

フォウについては少なからず覚えがあるが、出久個人に関してはかなりの的外れも甚だしい。
相澤は俯いてしまい表情が見えなくなっていた。
根津とブラドも慌てだしそうになっていた。
そして少し時間が経過して相澤は少なからず険の籠った視線をその記者に浴びせながらも、煮えたぎるような怒りに苛まれようとも、それでも冷静に言葉を発する。

「…………あなたの質問はかなりの的外れな部分が多いです。そうですね……緑谷さんの親御さんにも事前に許可は貰っています。いずれ彼女もヒーローを目指すのなら個性の開示も必要不可欠な事……緑谷さんには悪いですが、それが多少早まったと思ってもらい、今この場で彼女の個性とその由来についてお話します。
最後まで聞き逃さずにお願いいたします。特に、あなた……これを聞いた後、二度と質問は出来ないものと思っておいてください」

相澤は質問してきた記者に警告……いや、最後通牒を言い渡した。
そして話始める。

「皆さんは超常黎明期以前に世間を賑わせた『猫又の怪』という都市伝説をご存知ですか……?」

それから相澤はまるで事前に計画していたかのようにフォウという猫の生涯、猫又という怪異になった事、高い知能を得て様々な妖術を会得、超常黎明期に入り妖術がすべて個性へと置き換わってさらには新たな個性も宿したこと、個性を奪うという男に捕まり幽閉生活と延々と生命力を吸わされ続けた事、ある時をきっかけとして逃げ出すことに成功したが死ねない体になっていた事、出久との出会い、そして最後に出久と融合してしまい今に至ることなど……それらを短めに、淡々と相澤は話しきった。
当然、オールマイトからワンフォーオールを引き継いだ事だけは伏せる形で。

「…………これで緑谷さんの事は以上です」

それでシン…………となる記者会見会場。
特に先ほどの質問をした記者は顔を青くして体をガクガクと震わせている。
……もう、この記者に未来はないであろう。
バッシングを受けることは確定した事であるのだから。
そんな記者の事を相澤はもう目に入れない。そしてまた言葉を発する。

「最後に、ヴィラン連合が今説明した緑谷さんの個性を利用しようと狙っているのだとしたら、彼女は決して諦めずに今も抵抗を続けているでしょう。
私は、私どもはそんな彼女の事を決して諦めません」
「その通りです。我々もただ手を拱いているわけではありません。現在警察とともに捜査を続けております。我が校の生徒は必ず取り戻します」

根津が相澤から言葉を引き継いでそう宣言する。









それをテレビ越しに聞いていた死柄木達はというと、

「デクちゃんってそんな過去があったんですねー。血まみれになる姿、見たかったですぅ!」
「うっせーぞイカレ野郎。それより死柄木……どうするんだ? 今この場にはその肝心の緑谷がいない。お前の言う先生とやらは緑谷をどうするつもりなんだ……?」

トガがそれで想像してか頬を染めている中で荼毘は荼毘で死柄木にそう問いかける。

「知らねーな……。先生には先生の考えってもんがあるんだろ? それよりなー、緑谷にそこまで貴重な個性があるだなんてな……『与える』に『生命力を奪う』……ヒーローにしとくには勿体ねぇとは思わないか?」
「いいや、それは違う」

そこでスピナーが声を上げる。

「そんなヒーローともヴィランともとられない個性を持っていて、それでも人々のためにあろうという志は真のヒーローに必要不可欠なものだ。
だからこそステインはそんな彼女を生かしたのだろう……」
「スピナーは根っからのステイン信望者ね……」

マグネがそれでため息を吐く。












そんな一方で、アジトに周りにはすでにヒーロー達と警察が手配しているのを死柄木達はまだ知らない。
まさか記者会見が行われていると同時に攻め込まれるなどと考えもつかないだろう。
オールマイト等トップヒーロー達以外にもグラントリノや若手のヒーロー、同じく誘拐されたラグドールを救出するために虎などが複数いて発信機の方やアジトの前で今か今かと突入するのを待ち構えていた。

「グラントリノ……今回は必ず奴も動き出します」
「オールフォーワンか……」
「ええ。ですから用心にかつ大胆にいきましょう」
「うむ。あの小娘も救い出さんと行けないしな」
「はい!」

二人がそう話をする。

「今回はスピードが命だ! ヴィランにはなにもさせるな!」

塚内がそう叫ぶ。
そして事前に根津の仕込みやしておいたことを全員に伝えて、

「流れを覆せ!! ヒーロー!!」

そしてとうとうその瞬間が訪れようとしていた。

 
 

 
後書き
とうとう始まります。 
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