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【完結】猫娘と化した緑谷出久

作者:炎の剣製
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猫娘と神野区異変編
  NO.088 突入

 
前書き
久しぶりに更新します。
お待たせしてすいませんでした。 

 


……目を、覚まさないと……。

こんなところで寝ていたら、きっと……オールマイトや、みんなに迷惑をかける……。

でも、意識が暗い闇の中で抜け出せない……。

フォウ……僕は、どうすれば……。




―――大丈夫だよ……。

―――イズクは今は安心して眠っていて。その時がくるまで……。





そんなやり取りが出久の深層心理内でされていた。
フォウは一体なにをしようとしているのか……。
出久はいったいオールフォーワンになにをされてしまったのか……。









爆豪達は八百万の発信機を頼りにとある倉庫まで足を運んでいた。
こんな辺鄙な場所だから目立たないだろう、最初はそう思っていた、だがしかし、だからといってまったく人が通らないほど田舎でもなくむしろ都会の一角にある場所なのだから、たまに酔っている通行人に声を掛けられることが数度。
特に変装をしている事もあってお茶子はともかくドレス姿の八百万は特に多く声を掛けられていて相当参っていた。
そんな事があったが、なんとか狭い路地道に入ることに成功して一同は発信機が示す場所を目視で確認できる位置までこれた。

「……それで、やおもも。発信機の示す場所はこの廃墟倉庫なのか?」
「間違いありませんわ。発信機もここだと正確に示しております」
「なにか中を確認できるものはないか……?」

轟がそう話すと待ってましたと言わんばかりに切島がとあるものを取り出した。

「おい、切島……おめぇいつの間にそんなものを買ったんだ……?」

切島が持っていたのは暗視鏡だった。
通販サイトで買っておいたんだというが用意がいいと言わざるを得ない。

「必要だと思ったんだ……なんに役に立つか分かんねーけどな」
「いいや、切島君。いい判断だと思うぞ」
「確かにな。おめぇもやればできるじゃねーか」
「まぁ、今は時間が欲しい。爆豪に切島。俺達がお前らを担ぐから中を覗き込んでみてくれ」
「わかったぜ」
「おう」

爆豪が轟の、切島が飯田の肩にそれぞれ乗って中を伺い見てみる。

「うぉっ!?」

そして開口一番で暗視鏡で見ていた切島が驚きの声を上げた。

「切島君! どしたん!? なにか見えたの!? デクちゃんいた!?」
「い、いや……緑谷はいなかったんだが、代わりにすげーもん見つけちまった。爆豪、おめぇも中見てみろ」
「お、おう……」

切島から暗視鏡を受け取った爆豪が中を覗き込むと、そこにはなんと剥き出しの培養液の中で保存されている大量の脳無の姿があったのだ。

「あれ! 全部が脳無だっていうのか!?」

さすがの爆豪もその光景には唖然とするしかなかった。
もしあれがすべて解放されたら混乱どころの話ではない。





……一方で、死柄木達がいるアジトには今か今かとオールマイト等ヒーロー達が突入を試みようとしていた。
景気づけにオールマイトはピザの配達員を演じながらも、

「―――どうもー。ピザーラ神野店です!」
「あ……? そんなもの頼んだ覚えは―――……」

死柄木が疑問に思う前にそれは起こった。
突如として盛大な破裂音とともにアジトの壁がぶち破られて、しかもなんとそれを行った人物はあのオールマイトだったのだ。
砂塵が舞い、アジトの中は一瞬にして廃墟と言わんばかりの惨状になり、ヴィラン連合の幹部達も慌て始める。

「な、なんだぁ!?」
「ちぃ!? 黒霧!」
「はい!」

死柄木の指示で黒霧がゲートを展開しようとしたが、それよりも早く動いた人物がいた。

「先制必縛! ウルシ鎖牢!!」

シンリンカムイによるウルシ樹の束縛によって全員が縛られてしまう。
その中でもやはりまたいち早く抜け出そうと荼毘が炎を展開して束縛を燃やそうとしたのだが、突入してきたヒーローの中にはそれくらい簡単に予測していたために、

「逸んなよ!」

そうして高速の蹴りによって荼毘を一瞬で気絶させてしまったのがグラントリノというオールマイトの師匠であった。
こうして脅威になりえるだろう個性を持っているものは全員はほぼ拘束できたことになった。

「さすがだシンリンカムイ。そしてグラントリノ! さて、もう逃げられんぞヴィラン連合。なぜかって? 我々が来た!!」

そう、オールマイト達は記者会見を見ているだろうヴィラン達の隙を見計らってタイミングよくアジトに突入したのだ。
こうなれば後は一網打尽というもの。

「攻勢時ほど、守りがおろそかになるというものだ。ピザーラ神野店は彼らだけではない……」

そう言ってまるでドアの隙間から抜け出てくるようにエッジショットが姿を現して、ドアのカギを開ける。
それを皮切りに突入してくる警察の突入部隊達。
外には中距離で支援包囲ができるエンデヴァーなどが待機しているために逃げ場はないというものだろう。

「さて、こうして会うのは初めましてだな。死柄木弔……よくも今まで好き勝手をしてくれたものだ」
「…………ッ! なにラスボスが直接来てるんだよ……色々とこねくり回してやったってのに……」

そう言って憎らしい表情でオールマイトの事を睨む死柄木。
オールマイトは涼しい顔をしながらも、

「死柄木弔……君にどういう事情があってこういう事を起こしたのかは知らない……だが、もう君でいうゲームオーバーなんだよ。諦めたまえ」
「うるせぇ!! 黒霧!! 全部だ! 全部持ってこい!!」

脳無の事だな? とオールマイトは思う。
だが、一足遅かったみたいである。
黒霧が汗を垂らしながらも動揺した風で、

「すみません死柄木弔……呼び出そうとした脳無なのですが、ないのです……」
「ないだと!?」

その言葉に死柄木も動揺を隠せない。
なんせヴィラン連合にとって脳無は切り札に違いないのだから。
そんなヴィラン連合の事を憐みの瞳でオールマイトは見ながらも、

「情報通り、やはり君はまだまだ青二才のようだね。死柄木!」
「あ?」
「ヴィラン連合よ。貴様達は舐めすぎた。我々ヒーローを、警察のたゆまぬ捜査を、そして我々の怒りを!!」




オールマイトがそう話している間に、爆豪達が隠れて見ていた脳無保管倉庫には、ベストジーニスト、ギャングオルカ、Mt.レディ、虎、インゲニウムなどの精鋭のヒーロー達が突入していた。
そして、

「脳無格納庫、制圧完了!」

ベストジーニストが個性である糸を幾重にも展開して脳無を縛り、Mt.レディなども巨大化して手掴みで脳無を捕獲していて、虎も捕まえられていたラグドールの奪還に成功してインゲニウムやギャングオルカは周辺を警戒していた。




「おいたが過ぎたようだな、ここで終わりだ死柄木弔!!」

そうしてオールマイトが威圧感を全開にしてヴィラン連合の幹部達を睨みつける。
その圧倒的な存在感で委縮してしまっている幹部達。

「終わりだと……? まだ、始まったばかりだ!正義だの平和だの……生きにくいものにとってはこれ以上の格好なフタはない掃き溜めをぶっ壊すために、そのためにオールマイト(フタ)はぶっ殺して取り除く! 仲間も増え始めて来たんだ! こんなところで! 黒ぎッ!!」
「ッ!?」

死柄木が黒霧になにかを命令する前に、その一瞬の間に黒霧の体を通過したものがいた。
それは自身の体を薄く細く引き伸ばせる個性を持つエッジショットであり、エッジショットが通過した後の黒霧はまるで糸の抜けてしまった人形のようにぐてっとして気絶してしまっていた。

「中を少々いじらせて気絶してもらった……死んではいないが当分は意識の復帰は出来ないだろう。これぞ秘儀、忍法『千枚通し』!……この男はヴィラン連合のブレーンであり最も我らが警戒し厄介な男……よって眠っていてもらおう」
「大人しくしておいた方がいいって事だ……」

そしてグラントリノは一人ずつヴィラン連合の幹部達のあだ名ではなく本名を次々と言っていく。
まるで逃げ場などもうないかのように……。

「これらは少ない情報の中、警察の方々が必死になって集めた事だ。もう逃げ場はないって事よ……なぁ、死柄木、お前さんのボスの居場所を教えてくれないか? ついでに緑谷の小娘の居場所も教えてくれればありがたいんだがな……」
「……………………」

死柄木は無言でやり過ごす。
その無言の中では過去の出来事がまるで高速で回想されていく。
味方が誰もいなく、冷たい現実の中で誰も助けてくれない中で、そんな己に手を差し伸べて救ってくれたオールフォーワン。
『君は悪くない』と言って引っ張り上げてくれた。

そしてとうとう小言で憎しみの言葉を言い出し始める死柄木。

「死柄木……奴の場所を教えろ! 奴は今どこにいる!? 死柄木!!」
「おまえが!! 嫌いだ!!」

死柄木の憎しみが臨界点に達し、大声で叫んだその瞬間だった。
ゲートの個性を持つ黒霧が気絶しているはずなのに、まるでヘドロのようなものが出現して次々と脳無が姿を現し始めた。

「これは!?」

次々とヘドロの液体から現れる脳無。
それで現場は混乱し始める。
アジトの中だけならまだしも外で待機していた警察やエンデヴァー達の場所にも脳無は出現して暴れ始めているのだ。

「脳無格納庫はどうなっている!? ジーニスト!…………、ジーニスト!?」

ベストジーニスト達からは応答がない事に緊急事態を悟った一同。






そして数分前に少し時間が戻り、脳無を確保していたヒーロー達は、突如として誰かの気配を感じ取り、そちらへと視線を向ける。
そこには……。

「…………」

なんと、出久が虚ろの目をしながらもゆっくりとヒーロー達のもとへと歩いてくるのだ。

「緑谷さん! よかった、無事だったんだね!」

インゲニウムが駆け寄ろうとするが、

「待て、インゲニウム! 様子がおかしい……緑谷の後ろにいる奴は誰だ!?」

そう、出久の背後に薄っすらとだが大柄の人影が見える。
男は無言で立っていたのだ。
すかさずベストジーニストが糸を展開しようとするが、

「おっと……この子がどうなってもいいのかな?」
「ッ!!」

それで動きを封じられてしまう一同。
そして次の瞬間、脳無格納庫をまるで地震が起きたかのような衝撃が襲ったのであった……。

 
 

 
後書き
更新が止まっていた理由はつぶやきでも書いたのですが、それ以外にも様子を伺うというものがありまして、最近の原作で出久のOFAが暴走しがちな件で、どうなるんだろうと思っていたら、蓋を開けてみたらなんと出久強化!
先代の六つの個性が使えるようになるというもので面白くなってきたなぁ、と。
最新話では早速『黒鞭』という個性を使う姿が見られてなんともな気分ですね。

そして、思ったのがもし、この猫娘の出久が次の後継者にOFAを引き継がせた場合、この出久(フォウ)の個性も後継者がすべて強化済みで使えるようになるという事ですよね!?
まじでハザードオン!ヤベーイ状態になるのは目に見えていますよね!?
 
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