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レーヴァティン

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第八十一話 東国その八

「よく火を通した」
「それはいいことっちゃよ、あたりでもすればっちゃ」
 愛実もこう言ってきた。
「大変だっちゃ」
「そうだな」
「食あたり、虫もっちゃ」
「あたると恐ろしい」
「下手したら死ぬっちゃ」
 こうも言う愛実だった、当然愛実も猪の肉を食っている。
「だから火を通しておいて正解っちゃ」
「茸もたいな」
 香織は鍋の中から茸を取って自分の椀に入れて言った。
「下手に選ぶとたい」
「毒茸だったりする」
「あたったら死ぬより大変な種類もあるとよ」
「だからだ」
「茸も慎重に選んだたいな」
「そうだった」
 英雄は香織にも答えた。
「気になってな」
「いいことたいな」
「順調だと油断する」
「あんたそういうの本当に気にするたいな」
「性分だろうがな」
「いい性分だと思うよ」
 香織は笑って英雄に話した。
「うちは」
「そうか」
「好事魔多したい」
 実際にというのだ。
「上手にいっていると油断するとよ」
「だからそこでだな」
「失敗もするたい、けれどそういう時に気を引き締めるなら」
 それならばというのだ。
「余計にいいとよ」
「油断大敵とも言うしな」
「そうたい、調子がいい時こそ」
 まさにというのだ。
「それがいいとよ、ただ」
「それでもか」
「油断しなくてもやられる時はやられるとよ」
 その場合もあるというのだ。
「その時はどうするとよ」
「しくじった場合は仕方ない」
 これが英雄の返事だった。
「それからだ」
「それからどうするかたいな」
「それが大事だ」
 こう言うのだった。
「失敗はある」
「どんな時もたいな」
「今も用心して肉に熱を入れてだ」
 じっくりと煮てというのだ。
「茸や山菜も選んだがな」
「それでもたいな」
「あたる時はあたる」
 かなり慎重に食材を選んで調理してもというのだ。
「そしてあたったならだ」
「その時にたいな」
「どうするかが問題だ」
「薬を飲むとよ」
「そうすることだ、備えはしておくことだ」
 何かあったその時はというのだ。
「災害でもそうだ、魔物と闘う時もな」
「あらゆる場合にたいな」
「失敗や突然の事態は起こるものだ」
「気をつけていても」
「それは覚えておくことだ、今も食っているが後でな」 
「あたったらたいな」
「薬を飲むことだ」
 食あたりのそれをというのだ。
「それか術で治癒することだ」
「そういうことたいな」
「そうだ、ではな」
「そうしたことまで考えてそのうえで」
「食って旅をしてな」
「十二人目も集めて」
「そのうえでだ」
 まさにというのだ。
「旗揚げもするぞ」
「わかったたい」
 香織は笑ってだ、猪肉を食いつつ英雄に応えた。そうしてそのうえでその日は寝た。鍋を残らず食って満腹してから。 
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