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最後のティーゲル

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第三章

「これからな」
「そうしますか」
「俺も見付けてきました」
 シュナイダーはソーセージを出してきた。
「これを」
「いいな、ソーセージか」
「俺はこれを」
 ハイドリッヒはザワークラフトの瓶詰を出してきた。
「いいのがありましたね」
「そうだな、食わないとな」
「どうしようもないですからね」
「だからな」
 今はというのだ。
「こうしたものをな」
「食ってですね」
「何とか飢えを凌いで」
「そのうえで」
「やっていこう、略奪になるかも知れないが」
 ケンプはこのことが気がかりだった、誰もいないとはいえ民家にあったものを手に入れてきたからだ。
「しかしな」
「それでもですね」
「今はそうも言っていられないですね」
「正直なところ」
「そうだ、だからだ」
 それでというのだ。
「ここはな」
「はい、食いましょう」
「パンにソーセージに缶詰を」
「そうしていきましょう」
「全く、部隊からはぐれるとな」 
 今の自分達のことも話したケンプだった。
「大変だな」
「全くですね」
「戦車も一両ですと心細いです」
「どうにもなりませんね」
「ヤーヴォも狙ってくるしな」
 昨日の襲撃の話もした。
「昨日は運がよかった」
「全くですね」
「隠れる場所もありましたし」
「ヤーヴォもしつこくなかったですし」
「ああ、全くだ」
 ケンプはこのことには神に感謝していた、そしてだった。
 四人で見付けてきたものを食い何とか見付けてきたまだ水が出る水道水で喉を潤した。そうしてこの日は自然にだった。
 建物の中で休んだ、そしてだった。
 次の日だ、ケンプは朝起きると部下達にこう言った。
「じゃあな」
「今日はですね」
「どうするかですね」
「そのことを話しますか」
「まずはな、正直燃料も弾も少ない」
 このことも言うのだった。
「そんな状況だからな」
「下手に動いても」
「そうしてもですね」
「どうしようもないですから」
「相当賢く動かないと死ぬぞ」
 現実問題としてそうなるというのだ。
「東西から敵が来るだろうしな」
「ソ連軍か連合軍か」
「どっちが来るかわからないですから」
「ここにいても駄目ですね」
「ソ連軍が来たらな」
 来る危険はあった、何しろベルリンを包囲しその周りに進出しさらに西に進んでいる状況だからである。
「厄介だぞ」
「シベリア送りですね」
「そうなってしまいますね」
「だからですね」
「西に逃げるが」
 それでもと言うのだった、部下達に。
「ヤーヴォに見付からない」
「一昨日みたいにですね」
「そのことも忘れない」
「そうですね」
「そうだ、そして連合軍にも見付からずに」
 そうしてというのだ。
「部隊と合流するぞ」
「そうしましょう」
「何とか」
「生きる為に」
「そうだ、死にたくないな」
 ケンプはホルンシュタイン、ハイドリヒ、シュナイダーの三人の顔を見た。そうしてそのうえで言った。
「そうだな」
「はい、絶対に」
「やっぱり生きていきたいです」
「まだ結婚もしていないですし」
「そうだな、だったら生きるぞ」
 何としてもと言ってだ、そしてだった。 
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