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戦国異伝供書

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第二十話 東の戦その十

「そして駿府城で」
「是非ですか」
「幸せに過ごして頂きます」
「そうですか、それがしもです」
「同じお考えですな」
「国持大名になれば」
 その時にというのだ。
「そしてです」
「ですな、親孝行はせねば」
「左様です、それで母上がいつも言われることは」
「何でしょうか」
「子をと申されています」
 羽柴、彼にというのだ。
「そう言われています」
「そういえば羽柴殿は」
「どうも子だけは」
 どうにもとだ、羽柴は家康に困った顔で話した。
「授かっておりませんし」
「そういえばそうですな」
「はい、残念なことに」
「そう思うとそれがしは幸せですな」
 自分のことをしみじみとして言う家康だった、彼の場合はというと。
「嫡男に竹千代がいて」
「ご子息がですな」
「自慢の子です」
 自分で笑顔で言う家康だった。
「こう言うと羽柴殿に申し訳ないですが」
「いえいえ、構いませんぞ」
「左様ですか、しかもです」
「さらにご子息に恵まれてですな」
「姫もいますし」
 ただし息子の数に比べてかなり少ない。
「ですから」
「子宝にはですか」
「恵まれています、よいことに」
「それは何よりです、ではそれがしも」
「何時かはですか」
「元気な子をもうけ」
 そしてと言うのだった。
「母上にお見せして抱いてもらい」
「喜んで頂くのですな」
「弟がいて甥がいますが」
 弟の秀長と甥の秀次だ、羽柴にとっては特に弟の秀長はいつも自分を助けてくれる有り難い存在である。
「しかし」
「そこでさらにですな」
「子をもうけられれば」
「これ以上の果報はないですな」
「そう思っております、ですから」
 何としてもと言うのだった。
「今も何かと神仏にも願い」
「子宝をですな」
「そう思っております」
「では」 
 家康は羽柴のその話を聞いてこう述べた。
「それがし薬の調合もしておりまして」
「精の出る薬をですか」
「作りますが」
「そしてそれをですか」
「羽柴殿が飲まれれば」
「子が出来まするか」
「そうなるかと。如何でしょうか」
 こう羽柴に申し出るのだった。
「このことは」
「宜しいのですか」
「ははは、羽柴殿を見ておりますと」
 家康は共に飲む羽柴に友に語る笑顔で答えた。
「それがしにしてもです」
「そうして頂く様にですか」
「思えるので」
 助けたくなる、だからだというのだ。 
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