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戦国異伝供書

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第二十話 東の戦その八

「これまで待っていました」
「まさにそれがです」
「律儀ですか」
「そう思いますが」
「ならいいですが」
「いいと思いますぞ、しかし徳川殿が言われた真田の」
 秀吉は幸村のことを興味深げに尋ねた。
「あの者は」
「くれぐれもご注意を」
「そこまで強いですか」
「真田はとかく知将猛将揃いですが」
 武田家の中でもというのだ。
「その中でもです」
「特にですか」
「知勇を備えた者で」
「家臣の十勇士も含めてですな」
「恐ろしい強さなので」
 だからだというのだ。
「ご注意を」
「戦う時には」
「はい、あの者はどうもそれがしでは」
「勝てませぬか」
「そう思いまする」
「徳川殿はそう言われるとは」
「何をしても勝てぬ様な」
 例え家康がどれだけ武略を尽くそうともというのだ。
「そんな気がします」
「気がするだけと言いたいですが」
 羽柴にしてもだった、だが家康の口調を耳にするとだった。
「その真田源次郎なる者があまりに強く」
「勝てぬと感じます」
「まさに天下の武ですか」
「当家であの者に対することが出来るのは」
 それが出来る者はというと。
「平八郎だけでしょう」
「本多殿だけですか」
「あの者なら対することが出来ます」
 徳川四天王の一人で徳川家の中でも最も武に秀でた彼だけだというのだ。
「ですが他の者では」
「四天王の他の方々でもですか」
「向かえば死にまする」
 幸村に倒されてというのだ。
「そうなりますので」
「だからですか」
「平八郎以外は」
「無理ですか」
「はい、とても」
 家康を含めてというのだ。
「向かえば死ぬだけです」
「武田に恐ろしい将は多くいれど」
「あの者は別格です、ですが」
「それでもですか」
「織田家なら個人の武辺では慶次殿、可児殿がおられ」
 家康はまずは彼の名を挙げた。
「知略では竹中殿に黒田殿がおられますし」
「采配でもですな」
「柴田殿や滝川殿が攻め、退きなら佐久間殿に羽柴殿、それに明智殿や丹羽殿といったお歴々がおられるので」
 それでというのだ。
「真田源次郎とてです」
「勝てますか」
「あの二十四将にも、織田家といえば」
「人ですな」
「人が揃っておりまするので」
「天下一ですな」
「まことに、人は城であり堀であり石垣である」
 家康は羽柴にこうも言った。
「この言葉は武田信玄の言葉ですが」
「当家もですな」
「人は国です」
 信玄の言葉はこの通りなのだ、まずは人がいてこその国であるというのだ。
「その人があるので」
「それも天下で最も」
「強いのです、ですから」
 織田家、この家はというのだ。 
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