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レーヴァティン

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第八十一話 東国その五

「わしの祖父ちゃんの大好物の一つぜよ」
「そうでござるか」
「何故か関西、特に大阪では食わなかったぜよ」
「それは不思議でござるな」
「何でじゃろのう」
「関西で大豆といいますと」
 良太が言うそれはというと。
「お豆腐ですね」
「ああ、それだね」
「関東でもありますが」
「いやいや、お豆腐はそっちだよ」
「関西の方が美味しいですか」
「お水と土地が違うからね」
 その質がというのだ。
「もう全然違うんだよ」
「その味が」
「特にお水がね」
 これの違いが大きいというのだ。
「こっちは火山灰の上の土地だろ」
「富士山の噴火の」
「それでお水もよくなくてね」
 土地だけでなくというのだ。
「それでね」
「お豆腐はお水が命」
「お水次第なんだよ」
 豆腐は水でその味だけでなく固さも決まる、中国の豆腐は固いがそれは中国の水の多くが硬水だからである。これはアメリカでも同じでこの国では豆腐のバーベキューといった日本では考えられないものもある。
「これがな」
「だからですか」
「お豆腐はそっちだよ」
「関東ですか」
「ああ、後な」
「それとですか」
「湯葉とかもだな」
 豆腐と同じ大豆から造る食品である、長い間京都だけで食べられていたというかなり独特な食品だ。
「こっちじゃね」
「味が落ちますか」
「というかこっちで食ったことないよ」
 東京、そして江戸ではというのだ。
「ないね、お豆腐はあっても」
「ではおからは」
「あれ食わないしね、あたしは」
 おから、卯の花とも呼ばれる豆腐の搾りかすであるこの食品はというのだ。
「どうもぱさぱさしていてね」
「お口に合いませんか」
「お酒にはお豆腐だろ」
 こちらだというのだ。
「やっぱりね」
「だからですか」
「ああ、お豆腐は食うけれどな」
 それでもというのだ。
「関西だよ、それで関西じゃ大豆はか」
「納豆として食べることは」
「最近までなかったです、ですが」
「変わってきたんだね、関西でも」
「スーパーでも何種類もコーナーを設けて置かれていて」
 そしてというのだ。
「よく食べられています」
「そうなんだね」
「確かに匂いはきついですが」
 この匂いも何かと言われる原因であるがだ。
「食べて美味しく健康にもいい」
「大豆だからね」
「それで定着しています」
「いいことだね、それは」
「関西も変わります、ただ苦手な人は」
「苦手だね」
「どうしても」
「スパゲティにかけて食ったりもするけれどね」
 納豆スパゲティだ、言うまでもなく日本だけのスパゲティだ。
「あたしもあれは苦手だよ」
「左様ですか」
「メインはやっぱり熱い白い御飯の上にかけて」
「召し上がるのですね」
「それが一番だよ」
 こう良太に話した。
「あたしはね」
「お寺では出されたものは残してはならない」
 僧侶である謙二が言ってきた。 
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