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レーヴァティン

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第八十一話 東国その三

「寿司に専念している、いや」
「いや?」
「ジャリ、米と酒の組み合わせがな」
「好きでないでありますか」
「俺はな」
 こう峰夫に話した。
「だから飲まない」
「そうでありますか」
「そこはお客さんの好きにしな」
 親父は英雄達にも言ってきた。
「おいらもそこまでは言わねえよ」
「そうなのか」
「酒でも茶でも好きなのを飲みな」
「店にあるものをか」
「ああ、西の島の酒は置いてねえがな」
 見れば置いてある酒は日本酒だ、他の酒はない。
「米の酒は色々な種類が置いてあるぜ」
「親父さん、あの酒あるかい?」
 桜子はかじきを食いつつ親父に笑って尋ねた。
「今日は」
「ああ、あるぜ」
 実際にとだ、親父は桜子にすぐに答えた。
「じゃあな」
「出してくれるかい」
「おう、何時頼むか待っていたけれどな」
「それが今だよ」
 まさにというのだ。
「それじゃあね」
「おい、出しな」
 親父は店の若い者に声をかけた。
「この人にな」
「わかりやした」
 若い者も応えた、そしてだった。
 すぐにその酒を出してきた、桜子は自分で杯に酒を出してそうして一口飲んでから目を閉じて笑みを浮かべて言った。
「これだね」
「美味いだろ」
「ああ、いつも通りね」
 桜子は親父に笑って返した。
「ここのお寿司にはね」
「それは何よりだ、じゃあどっちもな」
「お寿司もお酒もね」
「楽しめよ」
「そうさせてもらうね」
「それじゃあな、あんた達もどんどん飲めよ」
 飲みたい者はとだ、親父は英雄達にも言った。
「好きなだけね」
「そうさせてもらう、では俺はだ」
「あんたはお茶だな」
「もう一つ頼みたい」
「ああ、茶碗蒸しだな」
「わかるか」
「茶碗蒸しは欠かせない」
 寿司にとだ、英雄は親父に言った。
「だからな」
「それでだな」
「そうだ、それを頼む。それとだ」
 ここで今の寿司を食べ終わった、それでまた言うのだった。
「帆立を頼む」
「おう、わかったぜ」
 親父は英雄に笑顔で応えた、一行はそのまま寿司を食べ続け酒も茶碗蒸しも楽しんだ。そして店を後にしてだ。
 英雄は桜子店を紹介してくれた彼女に江戸の街を歩きつつ言った。
「親父は確かに関西向きの性格じゃないが」
「それでもだね」
「腕は確かだ」
 このことは間違いないと言うのだった。
「見事だった」
「そうだろ、実際に」
「寿司も茶碗蒸しも茶も美味かった」
「ついでに言うと酒も美味いよ」
「それもいいか、値段もな」
 英雄はこちらの話もした。 
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