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戦国異伝供書

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第二十話 東の戦その五

「わしもな」
「そう言ってくれますか」
「まさにな、それでじゃ」
「それで、ですか」
「武田との戦じゃが」
 それの話もするのだった。
「よいな、お主もじゃ」
「はい、戦に加わりますが」
 家康はここで強い声で信長に申し出た。
「是非共ここは」
「お主達徳川家にじゃな」
「先陣をお願いします」
 こう信長に申し出るのだった。
「どうかここは」
「お願いします」
「ここは我等に先陣を」
 家康の後ろにいる徳川家の家臣達も言ってきた、四天王を軸とする十六神将が勢揃いして黄色い具足と陣羽織が映えている。
「さすれば必ずです」
「武田の軍勢を打ち破ります」
「三方ヶ原の屈辱を必ず晴らし」
「あの戦で死んだ者能登村井合戦とします」
「ははは、それはよい」
 信長は十六神将達の申し出に笑って返した。
「気持ちだけ受け取っておく」
「では先陣はどなたですか」
「どなたが受け持つのですか」
「やはりここは織田家きっての武勇柴田殿ですか」
「それとも武のもう一人の看板佐久間殿ですか」
「二人共先陣にさせぬ」 
 信長は二人でもないと答えた。
「そもそもこの度の戦では先陣を用いぬ」
「攻めぬのですか」
「兵の数はこちらが遥かに多くなりましたが」
「守って戦うのですか」
「そうされるのですか」
「武田は兵の数がどれだけこちらが多くても勝てぬわ」
 その強さを考えればというのだ。
「武田信玄も二十四将もおって真田もおるわ」
「真田ですか」
 家康は真田と聞いて眉を曇らせて言った。
「あの家の者はどの者も強いですが」
「特にあの男じゃな」
「はい、真田源次郎という者が」
「わしも聞いておる、二本の十字槍を両手に一本ずつ持って戦うな」
「左様です、自ら馬を駆って真っ先にこちらに突っ込んできますが」
 幸村の戦振りについてだ、家康は信長に話した。
「その強さやるやです」
「鬼神の如くじゃな」
「一人の武芸も戦の采配も」
 そのどちらもというのだ。
「武田家の中で最も恐ろしいです」
「武田といえば」
 ここで柴田が言ってきた。
「甘利、板垣、原、飯富、穴山、山縣、高坂、馬場、内藤と猛将知将が揃い」
「武田大膳殿の弟君達もかなりのもの」
 林は信繁達のことを信玄の官位と共に話した。
「まさに名将揃い、政の時も働きも見事ですが」
「その中でもとりわけ強いというか、その真田の若武者は」
「まことに」 
 家康は二人にも真剣な顔で語った。
「他の者も恐ろしいですが」
「その真田源次郎なる者はですか」
「噂には聞いてますが」
「そこまで恐ろしいのでござるか」
「あの家の者の中で」
「左様です」 
 こう柴田と林にも話すのだった。
「しかもその下には十勇士達がいます」
「噂に聞く一騎当千の猛者達」
「三方ヶ原でも恐ろしい働きをしたと聞いてますが」
「あの者達もいる」
「だから余計に強いのでござるか」
「それがし若し吉法師殿に飛騨者達を送ってもらっていなければ」
 その三方ヶ原のことも話すのだった。 
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