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阪神教

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第四章

 二人はここから少しお互いのことを話してから再会を約束して別れた、その後お互いの学校生活を過ごしたが。
 翌年一時期離れていたがまた江田島に戻った中西はそこで阪神の優勝を見て多くの者に携帯で電話をかけたが牧場にもそうした。
 牧場はこの時横須賀に戻っていたが彼にこう返した。
「まさか俺もな」
「今年、ですね」
「阪神優勝するとかな」
 それはというのだ。
「本当にな」
「想像してなかったですか」
「暫く、あと十年位はな」
 それこそというのだ。
「最下位だって思っていたよ」
「そうでしたか」
「それがな」
「まさかでしたか」
「優勝するなんてな」
「真珠湾が成功してパグラチオンも」
 中西はこれまで挙げた作戦をここでも挙げた。
「成功しましたね」
「ああ、そうだな」
「後は日本シリーズだけですね」
「それも勝つっていうんだな」
「絶対に勝ちますよ」 
 中西は根拠もなく言い切った。
「そうなります」
「そうか、しかしな」
「シリーズはですか」
「どうなるかわからないからな」
 だからだというのだ。
「ダイエー相手に四連敗とかな」
「なるっていうんですか」
「しない様にしろよ」
「九十年の巨人みたいにですか」
「ああなるなよ」
 こう言うのだった。
「いいな」
「何か怖い忠告ですね」
「阪神は何があるかわからないからな」
 だからだというのだ。
「ストレートで四連敗、敵チームに甲子園で胴上げとかな」
「嫌な展開ですね」
「そうなるなよ」
「ならないですよ、絶対に」
 中西はこの時この年の二年後のことは想像もしていなかった、この時も阪神は優勝すると思っていたが。
「それは」
「そう言ってろ、けれどな」
「シリーズはですか」
「どうなるかわからないぞ」
「何が起こるかわからないですか」
「一方が有利でもな」
 下馬評でそう言われていてもというのだ。
「あっさり負けてとかあるしダイエー強いぞ」
「打線強いですよね」
「ああ、ピッチャーも揃ってきたしな」
 かつてはよく打たれ連勝と連敗を繰り返す原因になっていたがだ。
「だからな」
「強いことはですか」
「覚えておけよ」
「はい、じゃあ日本一になったら」
「また電話してくるつもりか」
「駄目ですか?」
「そうしたいならそうしろ、ただな」
 ここでこうも言う牧野だった。
「若しダイエーが優勝したらな」
「その時はですか」
「俺の方からかけるからな」
「牧野さんの方からですか」
「ああ、その時はな」
 まさにというのだ。
「俺の方からだからな」
「それじゃあその時は来ないということで」
「そうなる筈ないだろ」
 ここでも即座に返した牧野だった、そうしてだった。 
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