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レーヴァティン

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第七十九話 江戸の街その五

「町人の街でしたね」
「そうたい、それで福岡はたい」
「武士の街でしたね」
「それぞれ分かれていたとよ」
「今は同じ市でも」
 福岡市だ、博多はその中に博多区として存在しているのだ。
「そうでしたね」
「そうたい、そこは違うとよ」
「同じ様で」
「全然違うとよ」
「そうだな、そしてだ」
 幸正もさらに言ってきた。
「江戸は特にだ」
「武士が多く」
「この島の江戸はあそこまで多くはないが」
「武士は多いですか」
「そうだ、この島でとりわけ大きな勢力が治めていてだ」
 それでというのだ。
「その領主の武士達がだ」
「江戸にいますか」
「全体の二割か」
 江戸の者達のうちのというのだ。
「とかく武士が多い」
「二割ですか」
「我等の世界の江戸は半分が武士だった」
 江戸に住んでいる者のだ、当時から江戸は人口百万に達している世界一の大都市だったがそのうちの約五十万が武士だったのだ。旗本や御家人だけでなく各藩の大名屋敷にいる者達も含めてのことである。
「とかく多かった」
「だからですか」
「そうだ、武士の影響が強かったが」
「この島の江戸も」
「やはり影響が出ている」
 武士のそれがというのだ。
「そのことを話しておく」
「江戸に行く前に」
「今な」
「ではこのことを」
 英雄にもとだ、謙二は思ってだった。
 甲板でその江戸の方を見ている彼のところに行ってそのうえで江戸のことを話すと彼はこう返した。
「もう聞いている」
「そうでしたか」
「あいつからな」
 愛実を見て言うのだった。
「聞いていた」
「彼女も江戸に行ったことがあったのですか」
「その様でな」
「それで、ですか」
「もうだ」
 既にというのだ。
「聞いて知っている」
「そうでしたか」
「そしてだ」
「そして?」
「江戸に行きたくなった」
 その街にというのだ。
「是非な」
「江戸は江戸で面白そうだからですね」
「俺は関西にいたしこの世界でもだ」
「西国が多く」
「武士は見てもな」
 それでもというのだ、仲間である智とも共にいたがだ。
「そこまで武士が多くその文化の色が濃い場所もな」
「行ったことがなかったので」
「行きたい、そしてこの目で見たい」
「そうですか」
「だから行く、そして十一人目は」
「どういった方か」
「そのことも楽しみだ、では江戸に行こう」
「それでは」
「それで酒臭いが」 
 謙二の身体から漂っているそのことを嗅ぎ取ってだ、英雄は言った。
「今まで飲んでいたか」
「はい、三人で」
「そうだったか」
「焼酎を飲んでいました」
「今は魔物が出て来ないが」
「出て来れば」
 その時はとだ、謙二は英雄に笑って答えた。 
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