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戦国異伝供書

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第十八話 道を走りその二

「それは後でよい」
「手に入れた諸国を治めますな」
「山陽、山陰、甲信、北陸、関東を」
「そこにある諸国を」
「東海、遠江と駿河は竹千代のものとする」
 家康に与えるというのだ。
「これまでわしの友としてよく働いてくれておる、だからな」
「三河のご領地にですな」
「遠江、駿河も加え」
「あらためて百六十万石」
「そこまでにされますか」
「竹千代には東海の三国を与え」
 そしてというのだ。
「大名としては天下最大の家じゃ」
「その家になってもらって」
「そうしてですな」
「天下の柱の一つになってもらう」
「そうなのですな」
「そうじゃ、それにそれだけの大身になれば」
 百六十万石にもなればというのだ。
「あの節約癖も治るやも知れぬ」
「そういえば徳川殿の質素さは」
 このことについてだ、前田がどうかという顔で述べた。
「凄いものですな」
「服も飯も住む場所もな」
「何かと質素で」
「贅沢はただひたすら避けておるな」
「そうとしか思えませんな」
「うむ、長い間苦労してきたからのう」
 三河と遠江の西だけ、五十万石で二百四十万石の武田家と対してきた。この苦労は並大抵のものではなかった。
「だから仕方がないがな」
「傾くなぞは」
 佐々が傾奇者のことを言ってきた。
「徳川家にとっては」
「生真面目な家風じゃしのう」
「そのこともあって」
「傾く、派手なこともじゃ」
「ありませぬな」
「兎角じゃ」
 徳川家はというのだ。
「贅沢を避けてな」
「傾きもせず」
「何につけても節約とじゃ」
「言っておられその通りにされていますな」
「家臣達と共にな、しかしな」
「それが、ですか」
「治ればよい」
 三河、遠江、駿河三国の主となってだ。
「居城は駿府城を薦めたいとも思っておる」
「あの城をとは」
 雪斎が言ってきた。
「よいことです」
「政によいな」
「はい、駿府の地から治めますと」
「三国が無事に治まるな」
「海と陸の便がよいので」
 その為にというのだ。
「是非です」
「竹千代の居城はじゃな」
「あの城にすべきです」
「それにあの地は竹千代に縁が深いしのう」
「懐かしいですな」
 ここで笑みを浮かべて言う雪斎だった。
「拙僧は徳川殿にも教えさせて頂きました」
「そうであったな」
「はい、今川様に言われて」 
 そしてというのだ。
「徳川殿に学問を教えさせてもらっていました」
「他のあらゆることもじゃな」
「左様です、徳川殿は努力される方で」
「最初は駄目なものでもじゃな」
「辛抱強く身に着けられる」
「そうした者であるからのう」
「これは大器になる」
 その様にというのだ。 
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