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レーヴァティン

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第七十八話 山の頂上の仙人その十

「それはその時も疲れるが」
「後でもじゃな」
「くる、それでだ」
「あの人達の多くが六十過ぎた頃でか」
「そうなったのだと思う」
「だから徹夜はじゃな」
「しないことだ、若しもだ」
 英雄は強いがそこに残念さも込めて述べた。
「あの人達がより長生きしていれば」
「もっと描いてくれたかも知れんのう」
「どの人達もな」
 手塚治虫も藤子不二雄も死ぬまでペンを手にしていた、その時に描いていた作品達がその手で完成していればと思う者も多いだろう。
「そうなった、そして俺はだ」
「そうした話を知ってか」
「徹夜はしない様にしている」
「決してじゃな」
「そうだ、少しでもな」
「寝る様にしとるか」
「夜はな」
「そうか、じゃあわしも遊郭に入っても」
 当季は右目を閉じ考える顔になって述べた。
「徹夜はせんことじゃな」
「朝になるまでお酒と女の人ならたい」
 香織がまた言ってきた。
「自殺行為とよ」
「それに他ならんか」
「本当に体を鉋で削る様なものたい」
「酒に女もじゃしな」
「確実に身体を壊すかたい」
「早死にの元じゃな」
「早死にしたいと?」
 香織は半ば笑って半ば真剣に当季に問うた。
「あんたは」
「どっちの世界でもぜよ」
「長生きしたいたいな」
「そうじゃ、わしは百歳まで生きてじゃ」
 そうしてというのだ。
「やしゃ孫の顔を見るのが夢ぜよ」
「そう思うならたい」
「徹夜なんぞせんことじゃな」
「そうたい、それよりもたい」
「強精の丹薬よりもじゃな」
「性病の方たい」
「遊郭行くならそっちじゃな」
「長生きしたいんならたい」
 当季が今言った様にそう思うならというのだ。
「そうするたい」
「徹夜と病気を避ける為にもじゃな」
「その時はあげるたい」
「頼むぜよ、それじゃあ」
「今からたいな」
「下山してな」
 そうしてというのだ。
「後はな」
「船に乗ってだ」
 英雄もまた言ってきた。
「それからだ」
「島を出てじゃな」
「次の場所に行くが」
「十一人目は何処にいるか」
 考える顔になってだ、智が言ってきた。
「果たして」
「それが問題だ」
「では本土に戻って」
「また情報収集だな」
「そうなるでござるな」
「それならたい」
 ここで香織が言ってきた。
「うちに知恵があるとよ」
「どういった知恵だ」
「この島から北に行けばたい」
 そうすればというのだ。 
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