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レーヴァティン

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第七十八話 山の頂上の仙人その二

「そうした場所に感じます」
「全くです。どうやらこれは」
「十人目の趣味だな」
 率直にだ、英雄は言った。
「それでだ」
「術を使ってですか」
「そのうえで」
「整えたな、仙人は風情も好む者が多い」
 それ故にというのだ。
「自身の棲み処をこうしてだ」
「適度にですね」
「整えたのですね」
「見事にな。しかし家は」
 頂上の中には庵もある、英雄はその庵を見たが。
 小さく茶室を思わせる質素な造りだ、その庵を見て言うのだった。
「あくまでだ」
「質素ですね」
「小さなものです」
「囲いもしていない。そして」
 英雄は頂上全体を目だけで見回しこうも言った。
「果物の木々もあるが」
「どの木にもですね」
「柵等は置いていませんね」
「徒然草とは違うな」
 神無月のころからはじまる話だ、著者である兼好法師が旅をしている時に見た庵で果物の木の周りに柵があるのを見て思った言葉だ。
「どうも」
「そうですね」
「そこもまた」
「見事だ、俗物ならばだ」
「果物の木に柵もしています」
「こうした人が来ない様な場所でも」
「人は一人になった時にもその本質が出る」
 その者それぞれのというのだ。
「しかしな」
「木に柵もしていない」
「そのままであることは」
「この庭といいかなりだ」
「はい、まさに仙人に相応しい」
「そうした人の様ですね」
「調和がわかり欲がない」
 英雄はここにいる仙女の本質を見抜いた。
「まさにな」
「ではですね」
「かなりの方ですね」
「人格、そして力もな」
 仙人としてのそれもというのだ。
「かなりだ、ではな」
「今からその方に」
「会いますか」
「そうしよう」
 こう言ってだ、英雄は庵に近付き声をかけた。しかし返事はない。それで英雄はすぐにこう察した。
「今は何処かに出ているな」
「返事がないですか」
「そうですか」
「そうだ」
 まさにというのだ。
「だからだ」
「ここはですか」
「待ちますか」
「そうするとしよう」
「それではぜよ」
 当季は英雄が十人目の仲間となるであろう仙女は今はいないと聞いてだ、仲間達に対して笑って提案した。
「待つ間花札をするぜよ」
「それしてかいな」
「待つっちゃ」
「そうぜよ、これも面白いぜよ」
 耕平と愛実にも笑って言う。
「暇潰しには丁度いいぜよ」
「若しかしてや」
「賭けるっちゃか?」
「ここは仙人さんがおる場所やしな」
「賭けはまずいでないっちゃ?」
「花札は賭けなくても出来るぜよ」
 花札、それ自体を楽しむこともというのだ。 
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