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戦国異伝供書

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第十七話 大返しの苦労その十

「そうした奴じゃ」
「謀は常で」
「それは己の為のものじゃ」
「宇喜多殿はそうではない様ですが」
「あ奴は違う」
「己の為に謀を使ってきた」
「毒をな、まことに蠍じゃ」
 松永、彼はというのだ。
「蛇よりも危ういというな」
「南の国々におるという」
「剣呑な虫じゃ」
 正確には虫ではないが長益達はそこまで知らないのでこう言ったのだ。
「毒針で刺してくるわ」
「音もなく近寄り」
「それを防ぐ為にはな」
「見ておくことですな」
「常にな、そして何かしようとすれば」
「刺される前に」
「殺すことじゃ」
 蠍即ち松永をというのだ。
「そういうことじゃ」
「ですな、そして蠍の巣に入っても」
「毒針の前には出ぬ」
「それも大事ですな」
「全てな、ではな」
「はい、これからは」
 古田も応えた。
「あ奴の茶は飲まず」
「そうしてじゃ」
「いざとなれば」
「消すのじゃ、よいな」
「それがしもその時を狙います」
「頼むぞ」
 長益も茶を愛する者として古田に言う、とかく松永に対しては織田家の殆どの者が警戒していた。そうしつつ備前を進んでいた。
 織田家の進軍は鳥取城からも行われていた、長政は自ら兵を率いてそのうえで西にと進んでいたが。
 本陣で山中と十人衆にだ、困った顔で言っていた。
「いや、そこまではな」
「急がぬ」
「浅井殿はそう言われますか」
「今は」
「焦りは禁物じゃ」
 こう言うのだった。
「むしろな」
「それがし山陰のことはよく承知しております」 
 山中は長政に必死の顔で話す、その後ろに十人衆実は十人以上いる彼等が真剣そのものの顔で控えている。
「この辺りで戦ってきましたので」
「だからか」
「はい、我等に先陣を任せて頂いていますが」
「今以上に速く進むことを許せばな」
「必ず月山富田城を攻め落とし」
 出雲のこの城をというのだ。
「山陰の要である出雲をです」
「完全に掌握出来るというのじゃな」
「左様です」
 まさにというのだ。
「ですから」
「先陣は本陣と離れてか」
「我等に任せて頂ければ」
 そして出雲に向かうことを許してくれればというのだ。
「出雲を手に入れて」
「山陰を攻め取ることが出来るか」
「出雲の後は石見ですが」
 山中はこの国のことも話した。
「こちらもです」
「お主達はよく知っておるか」
「尼子家の領地でしたから」
 それだけにというのだ。
「よく知っております」
「今伯耆に入ったところでもか」
「出雲に素早く入り」
 そうしてというのだ。 
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