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英雄伝説~光の戦士の軌跡~

作者:トロイヌ
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第十話

 
前書き
シトナイが来なかった悲しみは閃光ライトさんと未来ホープ君が各二人来た事である程度癒されました。 

 
4月24日特別実習当日、他のメンバーよりも早起きしたカイムの姿は第三学生寮のロビー……ではなくトリスタの一角にある質屋《ミヒュト》にあった。


「で、お前みたいな小僧がここに何の用だ?言っとくがここは金貸し屋じゃねえしそうだとしても学生には貸さねえぞ。」

「何でいきなり金になるんですか……。クォーツとスタングレネード系統ありませんかね?」

「後半は金とは違った意味で学生らしくねえなおい。まあ『Ⅶ組』の人間なら必要になるか。」

「流石情報屋、話が早い。今回はこんなんでどうでしょう。」


そう言うとカイムは手に持っていた箱をカウンターに置き蓋を開ける。中身はあきらかに市販品ではなさそうな雰囲気を醸し出すワインボトルが数本入っていた。


「ふん、全く何処で仕入れてきたんだこんなもん。こっちの対価が安いくらいだぜ。」

「金使えませんし口止め料も込みならこんなもんでしょ。誰かしら寄っても何も言わない、鉢合わせても口裏合わせるですからね。」

「まあその条件を飲んだのは俺だからな。そら、持っていきな。」


そう言うと店主であるミヒュトはカウンター下からいくつかのクォーツと投擲用の爆弾を取り出して差し出した。
カイムはそれを受け取り礼を言うと店から出て、駅へと向かった。
中に入ったカイムの目に飛び込んできた光景は……


「…………」

「…………」


顔を合わせず無言且つ無表情で立っているユーシスとマキアス、それを見て頭が痛そうな他のB班のメンバー、その姿を同情の目線で見るA班のメンバーという状態であった。


(なあ、もしかして駅入ってからずっとあの有様か?)

(ええ、そう。)

(全く喋ってないのに凄く空気が重いよ……。)

(何か声を掛ければそれを切欠に口論になりかねないから下手に注意もできないしな。)

(もはや筋金入りというやつだな、あれは。)


カイムの質問にA班のメンバーが答える。そうこうしている内に駅構内にアナウンスが流れ出発の時間になった。


「……フン。」

「時間だ、行くぞ。」


アナウンスが聞こえるなり二人はさっさと電車の方に向かってしまった。どこか競うような歩き方になっているのは気のせいではないだろう。


「あー、エマもガイウスも大変だとは思うが頑張ってくれ。そっちは二人に懸かってるといっても言っても過言ではないだろうしな。フィーも出来る限り手伝ってやれよ?」

「ああ、やれるだけやってみよう。」

「私も何とかやってみます。」

「……今からでも班変われない?」

「サラもいないし諦めなさい。」

「……薄情者。」


残りの三人に励ましの言葉を送ると苦笑いしながらも腹を決めた二人と恨みを込めた目で見てくるフィーを尻目にカイムもケルディック行きの電車に乗り込んでいった。










全員で同地のお浚いをしたり途中会話に混じった後椅子で寝始めたサラに呆れたり皆でカードゲームをしながらケルディック行きの列車に揺られること約数十分、無事に現地に到着した彼らを迎えたのはのどかで落ち着いた町並みであった。
A班が雰囲気、風景を堪能している中、ケルディック名産の地ビール飲みたさにサラもA班にくっ付いて来ていた。


「このケルディックは、ライ麦で造った地ビールなんかが有名なのよね。因みに君達は学生だから飲んじゃ駄目だけどね~。」

「いや、勝ち誇ったように言われても……。」

「全然羨ましくなんか無いんですけど。」


サラが酒を飲める事を勝ち誇るもリィンとアリサが常識的かつ冷めた対応をする。
それはそうだろう彼らはまだ未成年なのだ、法を犯すつもりもないし飲んだところで美味と感じられる事は無い。
故に別段悔しいという感情は無かった。
サラの自慢を聞き流しながらケルディックの景色を見回していたカイムはある一点に視線を向けた瞬間、顔を引き攣らせた。
何せその視線の先には実に見覚えのある白い服に青い長髪の男がおりとても愉快そうに手を振っていた。
そして口を声を出さず話があると動かした。
それに対しカイムは下手に無視すれば絡んでくると判断し、同じく声を出さず後で時間を作るから今は去れと動かした。
すると男は肩を竦めやれやれと首を振り去っていった。










今回の実習でカイム達A班が世話になる事になった宿酒屋、《風見亭》。
サラの案内で中に入り、女将であるマゴットに泊まる部屋がある二階に案内された。
二階なだけあって眺めもよく広さも十分だったのだが……


「ま、まさか男子と女子で同じ部屋ってことですか!?」


そう、アリサの言うとおりベッドが五つ一緒にある五人部屋になっていたのだ。
彼女の言葉にある抵抗感も当然の事、ここにいるのは皆年頃の男女であり同じ部屋で寝るなど普通は有り得ない事だ。
仮に好き合っていて正式に付き合っていても学校の実習なのだからやはり有り得ない。
そんなアリサを窘めたのは意外にも同姓のラウラであった。


「アリサ、ここは我慢すべきだろう。そなたも士官学院の生徒。それを忘れているのではないか?」

「そ、それは……。」

「そもそも軍は男女区別なく寝食を共にする世界……ならば部屋を同じくするくらいいずれ慣れる必要もあろう。」


同姓であるラウラの真剣な表情で語られる正論にアリサも引き下がるしかなかった。


「――あなた達、不埒な真似は許さないわよ?」


最後に釘を刺す事は忘れはしなかったが。










話が纏まるとマゴットから特別実習の課題だという封筒を渡された。
一階でビールを飲んでいるサラに一声かけた後、外に出て封筒を開け中の紙を取り出し確認するとそこには『ケルディック周辺200セルジュ以内で執り行う事』という注意書きと共に


薬の材料調達


壊れた街灯の交換


東ケルディック街道の手配魔獣


といったような、まるで学院や遊撃士の依頼のような内容が書かれていた。


「な、なにこの内容!?」

「必須の項目とそうじゃない項目があるけど……。」


エリオットの言うように中の依頼はやらなければならないものとやらなくてもいいものに分かれていた。
一同が悩んでいたのでカイムは少し状況を動かす事にした。


「必須なのだけやればあとはレポートやら観光の時間に使えるかもな。」

「え?」

「そ、それはちょっと……。」

「こうして記されている手前それはどうかと思うぞ。」

「んー?悩んでるみたいだし意見の一つを言っただけだぜ俺は。」

「いや、それはそうだけど……。」


カイムの意見にアリサ、エリオット、ラウラがそれぞれの反応を示す中、リィンが口を開いた。


「あんまり悪ぶった言い方しなくてもいい、ようはそこも含めて特別実習って言いたいんだろ?」


その言葉に三人がリィンに視線を向ける。


「自由行動日にやった生徒会の手伝いが似たような感じだったんだ。旧校舎の探索ってハードなのもあったけど他は簡単な手伝いとかで一通りこなしてみると学院やトリスタの街について理解できたことが多かった。多分そういうのも目的の一つなんじゃないか?」


つまり依頼を通して自分の足でケルディック……実習先の実情を自分達なりに掴めということであるという趣旨なんだろうと結論を出して、一同はまず周辺を回りながら依頼をこなすことにした。


「やる事は決まったか?じゃ、行こうや。」

「私としてはなんで気付いていたであろう私達が出した結論を言い出さないであんな事を言ったのかを聞きたいんだけど?」

「そういえばカイムはリィンと一緒に依頼をやってたよね?」

「あの二人に注意しながら自分で不和を生もうとするのは感心しないと思うのだが。」


リィン以外の三人のジト目を受け、どうしたものかと思いながらリィンに助けろと視線を向けるが彼からの返答は素直に言っておけとのことだった。
カイムは溜息をつきながら白状し始めた。


「あれだ、サラに止められてたんだよ。できるだけ口を出すなってな。変に場慣れしてる人間の意見より同じラインの人間同士で出した意見のが実習らしくなるだろ?」

「そんな一人外れてるみたいな言い方しなくても……。」

「まあ色々あるんだよ、変に口滑らしたくないんだ。Ⅶ組の隠し事はいずれちゃんと分かるようになってるから我慢してくれ。」


カイムの言葉に不満はあるもののその場は納得しまずは依頼先が重なる為、薬の材料調達と街頭修理から行う事になった。










ケルディック礼拝堂の教区長と工房『オドウィン』のサムスから依頼を受け、皇帝人参と街頭修理の為に一同は西ケルディック街道出た


「確か街頭のある場所って皇帝人参貰いにいく場所の途中だよな?」

「そうだけどいきなりどうしたんだカイム。」

「いやなに、俺がパパッと交換して追いかけるから取りに行っててくれないか?」

「え?」

「流石に一人は不安なんだけど……。」

「うむ、街頭が壊れている以上、手間取れば魔獣も寄ってくるぞ。」

「なに交換だけだし腕も逃げ足もこの中じゃ一番だからな、時間の短縮ってやつだ。」


その後も正論と口八丁で四人を説き伏せ新しい街頭を受け取り見送ると、背後に向けて声を掛けた。


「時間を作ったぞ、手短にな。」


そういうと先刻街中で見かけた男が立っていた。


「ふむ気配は消していたのだが、流石と言ったところか。」

「そういう世辞はいい、本題に入れブルブラン。」


カイムがそう名前を呼ぶとブルブランと呼ばれた男は苦笑しながら首を振った。


「やれやれ、そう話を急かすのは君の悪い癖だぞ友よ。それにギャラリーがいては深い話はできないな。」

「何を言って「カイム!」そういう事か……。」

「そういう事さ。」


笑みを浮かべるブルブランから視線を外し後ろを振り向くと見慣れた金髪の少女がこちらに向かってきていた。


「どうしたよアリサ、一人で大丈夫だって言ったろうに。」

「他の皆とやっぱり少し心配だからって話し合って私が手伝いに行く事になったの。」

「そんなに信用無いかね、俺。」

「そんなんじゃないけど……って、知り合い?」

「まあそんな所だ、偶然会っちまったから少し話してたんだよ。」

「そんな言い方失礼でしょう?……すみません、気付いていなかったとはいえ無視する形になってしまって。」

「いやいや気にしてないさ。しかし……。」


そこで言葉を止めるとブルブランはなにやらアリサを眺め始めた。
その視線に妙な苛立ちを感じカイムはアリサを背後に庇う形で立ちブルブランを睨んだ。


「おい、何なんだ。」

「いや何、彼女が君が変わる切欠になった少女なのだろう?私としては実に気になる存在さ。」

「え?」

「……話が逸れたならもう行っていいんだな?」

「ふふふ、すまない。しかしそのような君を見れるとは新鮮な気分だよ。≪聖女≫殿も喜ぶんじゃないかな?いや、もしかしたら……。」

「行くぞアリサ。時間の無駄だったようだ。」

「え、ち、ちょっと!?」


どれだけ言おうともからかう様な態度をやめないブルブランにウンザリしたカイムはアリサの手を取り壊れた街頭に向かおうとする。
するとブルブランはからかい過ぎたなと少し反省しその背中に声を掛けた。


「待ちたまえ。行くなら伝言とこれを持って行きたまえ。」


そう言いながらブルブランは取り出した物をカイムに投げる。
アリサの手を引き歩いていたカイムは立ち止まって街頭を地面に置き、振り向いてそれを受け取った。
カイムが受け取ったものは……


「これは……剣?」

「……これは返却した筈だが。」

「それは既に君の物だと彼女が言っていただろう。遠慮なく持っていっていいそうだ。」

「そうかよ。で、伝言は?」

「うむ、伝言はいずれ様子を見る為に君を訪ねるそうだ、色々と覚悟を決めておけとのことだ。ではまた会おう。」

「マジかよ……。」


伝言を聞きカイムは顔を引き攣らせた。
彼の中で最もマズイ人物がいずれ来るという事、それも剣を渡した上で様子と言う事は恐らくそういうことだろう。


「またやっかいな事になったぞ。」

「……ねえ、さっきから気になってたんだけど≪聖女≫とか彼女って誰?同一人物なんでしょう?」

「いやそんな睨まれる様なもんは無いよ、昔の剣の師匠さ。半端なく強いからボコされると思うと正直、な。」

「まあそういう事にしておいてあげるわ。ところでその剣はみせてくれないのかしら?」

「……このまま部屋に隠したりトリスタに宅配は駄目?」

「駄目ね、隠しても私が皆にバラすから。色々内容にオプションつけて。」

「ああもう分かったよ、ただし合流して手配魔獣の方に行く時な。」

「よろしい。じゃあサクッと修理しちゃいましょう。」


アリサの脅迫に音を上げたカイムは後で見せると約束し、それに満足したアリサは先導して壊れた街頭に向かう。
その様子にやれやれと首を振り、剣を背中に移し変えの街頭を持ち上げ後を追うのだった。 
 

 
後書き
ハイスクールD×Dって割と設定ガバいから二次やりやすいって皆言ってますね。
まあ割と同意ですが。 
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