ベル・クラネルが魔剣使いなのは間違っているだろうか

ベルはシルを探すために人波の中を歩いていた。

「うーーん。ダメだ。ヒトが多すぎて全然見つからない」

祭りというだけあって賑わいは凄いものでヒト一人探すのに手こずるほどだ。

「うん？おーーい。ベルくーーん！」
「あれ、神様？こんなところで何してるんですか？あとお隣のヒトたちはどなたでしょうか？」
「おっと、そうか初対面だったんだよね。彼女はボクの神友のヘファイストスだよ。そしてその隣にいるのは彼女の眷属(こども)さ」
「初めまして、知ってると思うけど私はヘファイストスよ。そしてこの子は私の眷属(こども)のヴェルフよ」

ヘファイストスがベルに自己紹介し、ヴェルフはベルへと目を向ける。

「お前が魔剣使いか？」
「あまりその名前を口にして欲しくないんですけど。そうです。僕が魔剣使いです」
「俺はお前に聞きたいことがある。っと、その前にきちんと自己紹介しておかないとな。俺はヴェルフ。ヴェルフ・クロッゾだ」
「クロッゾって、魔剣貴族」
「ああ、お前の想像通りだよ」

クロッゾまたの名を魔剣貴族。それは魔剣使いよりは憎まれてはいないとはいえエルフの一族から嫌われている名である。

「僕はベル、ベル・クラネルです。よろしく、ヴェルフさん」
「ヴェルフで良いぜ。俺もベルって呼ぶから」

二人は握手を交わす。その様子を見守る神(おや)。

「それで聞きたいことというのは？」
「ああ、それはな」
『大変だー！モンスターが逃げ出したっ！』

その言葉が響き渡る。

「モンスターが逃げ出しただって！ガネーシャがそんなへまをするわけ」
「ええ、そうね。でも、実際逃げ出したと言うことは誰かが故意に出したか、モンスターが檻を壊したかのどちらかよ」
「神様…」
「はぁー、分かったよ。行っておいで。でも、魔剣はなるべく」
「ヒトがいないところで喚び出しますので大丈夫です！」

そのままベルが去ろうとする。

「待ちなさい。そのままだとまた噂になっちゃうわよ。しかも、今度は正体がバレバレの状態で」
「あっ」
「これを被っていきなさい」

ヘファイストスに呼び止められ、渡されたのは狐の面だった。

「ヘファイストス、君いつのまにそんなものを買ったんだい？」
「貴女を待ってる間によ。これなら身元がばれることはないでしょ」
「でも、鍵を使えば」
「それはダメだ！ベル君、また数日間意識を失ったらどうするんだい！？」

鍵という言葉にヘファイストスとヴェルフは首をかしげているが、ヘスティアのあまりの剣幕に長い付き合いのヘファイストスは少し驚いていた。

「良いかい。絶対に鍵は使っちゃダメだかね！」
「…分かりました。ヘファイストス様、これはありがたく使わせてもらいます」

ベルはそのまま走り去っていった。

「ボクたちは避難しようか」
「そうね。それにしても勇敢ね」
「まあ、ベル君はお人好しだからね」
「うふふ、ヴェルフ私たちも行くわよ」
「は、はい」

そのまま三人は避難していった。