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レーヴァティン

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第七十七話 八丈島その五

「ワインは」
「嫌いではないっちゃが」
「飲んでへんか」
「ウイスキーはロックでも美味しいっちゃね」 
「ワインはやな」
「氷を入れるとっちゃ」
 つまりロックにすればというのだ、実際ワインにもこうした飲み方は存在している。
「あまり美味しくないっちゃ」
「ワインのロックな」
「うちはロック派っちゃからな」
 それ故にというのだ。
「だからワインはっちゃ」
「ロックやと今一つやからか」
「あまり飲まないっちゃ」
 そうだというのだ。
「そうしてるっちゃ」
「成程な」
「そしてっちゃ」
 さらに話す愛実だった。
「この世界でも観ての通りっちゃ」
「術で氷出してか」
「それで飲んでるっちゃ」
 その氷を酒に入れてというのだ、この世界独特のロックである。
「日本酒はこれでもいけるっちゃ」
「それは長屋王の飲み方ですね」
 紅葉は日本酒にも氷を入れるその飲み方についてだ、こう愛実に述べた。
「奈良時代の」
「あの人もそうして飲んでいたっちゃ」
「そう言われています」
 歴史書にもそう書かれているのだ。
「そのお話を思い出しました」
「そうだっちゃ」
「そしてです」
「そして?」
「この世界では氷は夏でも術で出せますので」
 その為にというのだ。
「あの頃よりも容易にです」
「氷入りのお酒が飲めるっちゃね」
「本来は最近になってです」
「ロックも飲める様になったっちゃな」
「普通に」
「そうだったっちゃな」
「そうです、氷は長い間非常に贅沢なものでした」
 このことは歴史にもある、とかく最近まで氷というものは非常に贅沢な代物であり続けたのである。
「そして長屋王もです」
「あっ、皇族の方でもだったっちゃ」
「相当な権勢を持っていた方でした」
 その邸宅が発掘されたが敷地面積だけでも相当なものでありその建物は相当に立派なものであったという。
「ですから」
「氷入りのお酒もっちゃな」
「楽しめたのです」
「この世界ではわからないものっちゃな」
「そうですね」
「術で出そうと思えば出せるっちゃ」
 それも簡単にだ。
「そうしたものっちゃ」
「そこはこの世界ならではですね」
「まことにそうだっちゃな」
「いいことだと思います」
「川魚も一気に冷凍してや」
 耕平がまた言った。
「中の虫を殺してな」
「そうしてですね」
「生でも食べられるしな」
「それもいいことです」
「川魚は怖いからな」
「はい、本来は」 
 実はこのことは烏賊でも同じだ、アニサキスというかなり悪質な寄生虫がその中にいるので実は生は危険なのだ。冷凍しているなら別だが獲れたては危険だ。 
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