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嗚呼海軍婆ちゃん

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第七章

 学問の道にさらに目覚め保守系の新鋭の学者として知られる様になった、その背骨には祖母が教えてくれた海軍精神があると常に言っていた。幼い頃から叩き込まれたと言っていいそれがあってこそ今の自分があると。そして智美はそんな孫について言うのだった。
「立派になってよかったよ」
「はい、実はどうなるかと思ってましたけれど」
 稲穂はその智美に応えていつもこう返した。
「けれどですね」
「そう、海軍精神はね」
「本当に素晴らしいんですね」
「悪いものじゃないの」
「耕平みたいに心を律するものですね」
「そうだよ、古いとか軍国主義とか言われたけれど」 
 智美は若い頃実際に言われていた。
「いいものなんだよ」
「ですね、自分を律する教えですからね」
「悪いものじゃないんだよ、私はお父さんに言われて」
 予科練にいた父にというのだ。
「いいと思ってね」
「主人にもですね」
「あの子の妹にもね」
 彼女も立派に育ち今では立派な妻に母親になっている。
「教えてきてね」
「耕平にもだね」
「教えてきてそれがね」
「よかったですね」
「稲穂さんもそう思うね」
「はい、今はそう思います」
 稲穂は義母に笑顔で答えた。
「海軍精神は素晴らしいものですね」
「そうだよ、だから周平達も育ってね」
「耕平もですね」
「そうなったんだよ、あの子に子供が出来たら」
 耕平、彼にというのだ。
「その子にも教えていきたいと思ってるよ」
「そうですね、いいものですから」
「教えていきたいよ」 
 智美は笑顔で言った、そしてすっかり年老いた夫にカレーライスを作る為に台所に向かった。稲穂もその母に従い二人でカレーライスを作った。海軍伝統のそれを。


嗚呼海軍婆ちゃん   完


                    2018・2・19 
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