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嗚呼海軍婆ちゃん

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第六章

「いいこと言ってるしね」
「いい教育してるだろ」
「海軍精神ね」
「そうだよ、海軍は確かに問題もあったがな」
「それでもなのね」
「いいものが一杯あったんだ」
 その教育、そしてあり方自体にだ。
「だから祖父さんもその精神を持ったままで自衛隊にいてな」
「そのお義祖父さんの教育を受けて」
「お袋は海軍にずっと憧れて尊敬しててな」
 そうしていてというのだ。
「その教育を僕にも妹にもしてな」
「それでなのね」
「親父も海上自衛官だったしな」
 今は定年してもだ。
「江田島にだっていたしな」
「兵学校があった」
「今は幹部候補生学校な」
 そこにいたこともあったというのだ。
「それで耕平にも教えただろ」
「ものごころつく前からね」
「軍歌だって教えてな」
「本当にびっくりしたわよ、ずっと」 
 稲穂にとっては全てが驚くべきことだった、智美の海軍そのままの生活にしても教育にしても。
「同期の桜とか耕平に教えるし」
「ラバウル小唄とかな」
「びっくりしたけれど」
「耕平はまっすぐに育ってるよな」
「これ以上はない位にね」
 勉学にもスポーツにも熱心で曲がったことが嫌いな生真面目な少年になっている、それでいて人付き合いもいい。仲間思いでも有名だ。
「そうなってるわ」
「だから海軍精神でいいんだよ」
「お義母さんみたいに」
「そうさ、だからああしてな」
「旭日旗の良さを言うのも」
「いいんだよ、というかああしたことはどんどん言わないとな」
「変なことになるわね」
 稲穂も納得した。
「じゃあ耕平もね」
「言えばいいんだ、少なくとも海軍のいい部分を出してくとな」
 智美そして耕平の様にだ。
「悪いことはないさ」
「これからもなのね」
「ああ、あのままでいいさ」
 周平は妻に笑って言った、そして稲穂も夫のその言葉を受けてだった。
 自分の息子と義父母達が言うことに何も言わなかった、耕平達のこの主張は多くの日本人の共感を呼んだ。
 耕平は高校にも入り海上自衛隊に入隊しようと思って受験した防衛大学はその日の体調が悪く落ちて別の大学に進みそこで立派な先生と会ってだった。 
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