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戦国異伝供書

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第十六話 天下の大戦その十二

「だからな」
「そのこともあってか」
「決してじゃ」
 それこそというのだ。
「許さぬからな」
「そうか」
「全く、お主はな」
 まことにとだ、呆れた様に言う加藤だった。
「酒癖が悪くて困るわ、佐吉の様にじゃ」
「飲んでもか」
「乱れぬ様になればのう」
「虎之介の言う通りじゃ」
 信長もこう福島に言った。
「市松の酒癖はあまりにも悪い」
「左様ですな」
「それでは何時かしでかすぞ」
 加藤に応えつつ福島に告げた。
「まことにな」
「だからですか」
「酒乱には気をつけよ、潰れる様なら」
 酒、それにだ。
「水を飲め、そうしてじゃ」
「酔いをですか」
「醒ませ」
「何なら頭から水を被せるぞ」
 また加藤が福島に言った。
「そうしてじゃ」
「酔いをか」
「醒ましてやるわ」
「わしが許す」
 加藤のそのことをだ、福島も話した。
「だからな」
「はい、こ奴が乱れそうならば」
「水をかけてやれ」
 頭からというのだ。
「よいな」
「そうします」
「ではな」
「ううむ、そこまでされるとは」
「せねばならんからだ」
 また加藤が福島に言った。
「わしも言うのだ」
「そうじゃ、お主の酒癖は悪過ぎる」
 信長もまた福島に言う。
「わしは酒は飲めぬからあれこれ言えぬが」
「それでもですか」
「酒癖は見てわかる」
「そういえば大殿は」
 加藤は信長の父信秀の話をした。
「酒のことも」
「あったと思う」
 その死にはというのだ。
「父上は随分飲まれていたからな」
「だからですか」
「わしはそうも思っておる」
 信秀の死には酒が関わっているとだ。
「だから言うのじゃ」
「そうなのですか」
「それでじゃが」
 さらに言う信長だった。
「市松、お主もな」
「これからはですな」
「酒には注意せよ」
「そうしてですか」
「大名にもなった、それだけにな」
「大名に相応しくですか」
「酒は考えて飲むのじゃ」
 こう言ってだ、信長自身は茶を飲んだ。そうして今度は毛利家との戦に向かうのだった。


第十六話   完


                   2018・9・1 
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