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八条学園騒動記

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第四百八十六話 双子の閃きその五

「歌舞伎でもしないしね」
「歌舞伎は結構色々するがな」
「あっちはあっちでやりたい放題よ」
 歌舞伎の演出もというのだ。
「宙吊りとかするしね」
「ああ、あれだな」
「幽霊とか狐がお空飛ぶのよ」
 これは二十世紀後半のある歌舞伎役者が復活させたのだ、家庭では問題を起こしそのことで言われるが役者そして演出家としての評価はこの時代でも高い。
「他にも海老反りで後ろに跳んでね」
「体操みたいだな」
「そこから鬼女になって出るとかね」
「そうした演出もあるんだな」
「そうなの、とにかくね」
「歌舞伎も色々か」
「けれどそういうのはしないわね」
 ざわざわや舞台の下の列はというのだ。
「実はいるけれどいないことになっている人はいても」
「黒子か」
「あと幽霊もふんだんに出るし」
「骸骨も出るな」
「上から糸を垂らして操るのよ」
 骸骨、それはというのだ。
「そうした演出もあるのよね」
「歌舞伎もフリーダムだな」
「日本の文化だからね」
 ビアンカはこのことから話した。
「だからね」
「自由か」
「そうなのよ」
 歌舞伎、これもというのだ。
「これがね」
「そうなんだな」
「こっちもかなり面白いわよ」
「俺は歌舞伎の時代考証が気になるがな」
「滅茶苦茶だっていうのね」
「鎌倉時代の作品で服や家が江戸時代だな」
「それ普通だから」
 歌舞伎においてはとだ、ビアンカも答えた。
「歌舞伎だとね」
「普通か」
「ええ、忠臣蔵は江戸時代だけれど」
 江戸時代前期将軍で言うと五代将軍綱吉の時代のことだ。
「歌舞伎だと室町時代でね」
「あの時代の話にしているか」
「強引にね」
「強引にか」
「そう言えば幕府も認めるしかないから」
 忠臣蔵は浅野内匠頭を刃傷沙汰を起こしたその日に大名である彼を屋外で切腹させたことも問題になっている、大名は本来は屋内で切腹するものとされているからだ。これは江戸城でしかも自身の母が朝廷から官位を授かることで朝廷の使者を迎える儀において不始末を犯した内匠頭に将軍綱吉が激怒した結果だ。彼にしてみれば切腹させるだけ有り難いと思えと思ったのかも知れないがこれが批判材料になったのだ。
「幾ら屋内での切腹になっていてもね」
「ああ、あの切腹か。大名だからな」
 アルフレドもその事情は理解していて言うのだった。
「だからな」
「あれを江戸時代にせずにな」
「室町時代にしたらいいか」
「どんなに丸わかりでもね」
 実は江戸時代の話だとだ。
「歌舞伎では時代が違うってことで」
「幕府も許してくれたか」
「それで済んだから」
「許す幕府も凄いな」
「そんな政権だったのよ」
 徳川幕府はだ。
「実はね」72
「器が大きいな」
「あからさまな批判もね」
「時代が違う、別人の話とか」
「言うだけでね」
「許したのか」
「よりによって家康批判の作品もあるけれど」
 こちらは近松門左衛門が書いている。 
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