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八条学園騒動記

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第四百八十六話 双子の閃きその一

                双子の閃き
 アルフレドはこの時家、双子の妹であるビアンカと一緒に住んでいるその家の中で漫画を読んでいた。
 そしてだ、こう妹に言った。
「今俺が読んでいる漫画だがな」
「どうしたの、兄さん」
「いや、このざわざわという音がな」
 漫画の中での効果音だ。
「何か妙に面白いな」
「ああ、その漫画ね」
 ビアンカはそのざわざわという言葉からすぐに察した。
「日本の漫画よね」
「元々は二十世紀にはじまったんだったな」
「ええ、凄い漫画家さんがはじめたのよ」
 そのシリーズををだ。
「それでね」
「今もやっているんだな」
「そうよ、それでね」
 ビアンカはさらに話した。
「そのざわざわという効果音もね」
「今もやっているんだな」
「そうよ、ギャンブルの漫画というか」
「これギャグ漫画だな」
「そう思ってる人多いわよ」
 ビアンカは兄に返した。
「だって演出がね」
「このざわざわとかな」
「もう登場人物達が必死なのはね」
「笑えるな」
「追い詰められてね」
 これは敵役も同じだ、最初は余裕で出て来ても次第にそうなっていって焦り狼狽しだしたりするのだ。
「それでね」
「主に悪い奴がな」
「そう、いいキャラはね」
 即ち主人公側のキャラクター達はというと。
「必死に考えてね」
「そうしてピンチを乗り越えていってな」
「悪役はね」
「最初余裕風を吹かして傲慢に振る舞ってな」
「次第に追い詰められてね」
 主人公達に逆にだ、そうなっていくのだ。
「必死になっていって」
「そうなっていくのを笑う漫画か」
「悪役に対してざまを見ろってね」
「自業自得、因果応報か」
「そうした漫画なんでしょ」
「ギャンブル漫画じゃないか、俺はギャンブルはな」 
 アルフレドは妹に自分のギャンブルへの見方も話した。
「一切興味がないがな」
「そうね、兄さんはね」
「あんなものをしてもな」
「お金の無駄ね」
「そうでしかない」
 こう言うのだった。
「あんなものをしてもな、お金だけじゃなくてな」
「時間もなのね」
「無駄だ」
 価値なぞない、そう言い切った返事だった。
「そう思っている」
「だから実はね」
「俺がこの人の漫画を読んでいることはか」
「意外に思ったけれど」
「たまたま目を通したらな」
「ギャンブルの要素はいいとして」
「作品として面白くてな」
 面白い漫画はそのジャンルに捉われない、かつて流行しないと言われた剣道やラグビーの漫画も作品の出来がよくて人気作になったこともある。
「読んでみたが」
「ざわざわがなのね」
「気になった、それでだ」
「今言ってるの」
「そうだ、しかし悪役の最初の余裕と必死さはな」
 その展開はというと。
「やはりギャグだな」
「黒いギャグよね」
「そうだな、主人公側にとっては痛快だがな」
 痛快、それに至るまでは苦難の道でもだ。長い苦難の道は一瞬の痛快によって晴れやかなものに一変することもあるのだ。 
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