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リュカ伝の外伝

作者:あちゃ
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人の事を笑ってる場合じゃ無いんだぜ

 
前書き
ちょっと時間を遡ったエピソード。
ウルフが正式に宰相へ就任する1日前の話。 

 
(グランバニア城)
ユニSIDE

明日から遂に私の上司が宰相へと出世する。
それに伴いオジロン大臣が現役を退く。
そして大臣の下に居た部下が、全員ウルフ殿の部下になる。

なので、明日からオフィスが変わる。
今までは秘書官のウルフ殿と私を含む3人の補佐官だけだったので、こぢんまりとした部屋で仕事をしていた……が、いきなり人数が増えると言う事で、オフィス移転が決定した。

その為にデスクやら棚やらを元のオフィスから運び、新たなオフィスへ配置している。
だが考えてもらいたい。元国務大臣のオフィスと元主席秘書官のオフィスが合併し、その引っ越しをするのだ……重要機密書類の類いがどちらにも山盛りなのだ。

更に言えば、主席秘書官の職務には王家のプライベートな事とかも豊富に盛り沢山。
滅多やたらな人物に引っ越しを手伝わせるわけにいかない。
なので……引っ越し人員は、私・オジロン元大臣・ウルフ新宰相となる。

秘書官補佐には私以外にも、軍事担当のプロムと政務担当のリックが居るが、王家のプライベートには深く関わっていなかったので、除外されてしまった。
たった3人で、しかも期限は本日のみ……こりゃ地獄だと予想してたのだが、とある人物が手助けをしてくれると申し出てくれた!

「えぇ! いいよぉ……気を遣うよぉ……引っ込んでろよぉ~」
気を遣う者の台詞では無い。
ウルフ殿からは立候補者へ、手厳しい言葉が浴びせられる。

「でもホラ……一応さぁ僕ってば君等の上司じゃん。手伝わないわけにもいかないよ」
普通の職場であればその通りなのでしょうけども、ここは普通じゃない。
ここは国家の中枢……しかも最も奇抜なグランバニア王国の中枢なのだ。
決して地位を誇示しないリュカ様は、笑顔で手伝ってくれるのです……強引に。

そして始まった引っ越し作業。
通常であれば、棚の中身を取り出し軽くしてから移動をするのだけど、そうなると手間が倍以上に増える。書類等を取り出す作業と仕舞う作業、更には棚とは別に運ぶ作業が加わって面倒な事この上ない。

だがお優しいリュカ様は「面倒だし一回で終わらせようぜ」と言い、重い書類等が入ったままで棚を持ち上げ移動させてしまう。
「わぁ本当だぁ……すぐに終わったぁ。……って、そんな事出来るのお前だけだ!」

的確かつ無礼なウルフ新宰相のツッコミを全員で聞き流し、ある人(1名)は中身入りで棚を動かし、ある人等(他2名)は中身を取り出す作業に勤しんだ。
口ばっかり動かしてないで、お前も早く手伝え!



棚も書類もデスクも……兎にも角にも荷物が多く、しばらくは皆無言で作業に没頭。
しかし飽きてきたのか何処からか鼻歌が聞こえてきた。
まさかウルフ殿じゃ無いだろうなと思い、睨むように視線を向けたが、先方も同じ様な顔でこちらを見てきたので、真犯人が居る事を察知。そしてそれが誰なのかも察知。

えぇ、まぁ……リュカ様なんですけどね。
作業の手は緩める事無く、鼻歌交じりで空の段ボール箱を持ち上げるように引っ越しを続ける。
深く考えず私も作業に没頭せねば……



少しの間、リュカ様の鼻歌をBGMに作業していたが、気が付けばボソボソと歌詞らしき物が聞こえてきた。
最初の内は「♫僕の名前はヤン坊♪」って感じだったんですけど、何か探り探りな感じで歌を紡いでいくリュカ様。

如何やら引っ越し作業をしながら作詞作曲をしていたみたいです。
遂に全ての歌詞が出来上がると、徐に大きな声で歌い始めました。


♫僕の名前はオジロン 君の名前はマオ・イアン♪
♫二人コソコソ イチャイチャ ラブ♪
♫君と僕とで イチャイチャ ラブ♪
♫大きな声では言えないけれども♪
♫毎日囁く アイ ラブ ユー とね♪

♫君は私のペット 私はただの泥棒♪
♫二人の仲に ラブは無い♪
♫君は私の 情報源♪
♫小さな事から 大きなネタまで♪
♫つぶさに聞き出す 情報収集♪


「リュ、リュカぁぁぁ!!! もう許してくれよぉぉぉ!!」
リュカ様に歌われたオジロン元大臣は、顔を汚く乱しながら涙を流してしがみつく。
うん、泣く。こんな歌を歌われたら、私だって泣く。

同じ人物に騙された者として、私はこの歌に笑えない。
だが、お腹を抱えて笑う人物が一人居る……えぇウルフ新宰相閣下です。
他人(ひと)の不幸を笑うのは、性格が捻曲がっているウルフ宰相閣下なのです!

「笑い事じゃ無いぞウルフ! お前もこんな歌を歌われてみろ……」
「はぁ? 俺は歌にされるようなアホなエピソードねーし」
そんな訳無いだろ。叩けば埃の一つや二つ、出てくる間抜けな青二才だろ。

私はソッとリュカ様に目で訴える。
私と目が合ったリュカ様は、少し首を傾げてブツブツと作詞作曲を開始する。
「う~ん……♫天才宰相 ウ~ルポンポン♪……かなぁ?」

何そのキャッチーなフレーズは!?
耳に馴染むし、歌いやすそう。
これは出来上がったら是非とも世間に広めないと……

「今度マリーに相談してみるか。アイツならアニソン得意そうだし」
“アニソン”が何なのか解らないし、マリーさんに作詞作曲が出来るとも思えないけど、ベソをかくオジロン元大臣を嘲笑ってるウルフ宰相閣下には、リュカ様の呟きは聞こえてない様子。

是非とも奴には内密に制作して、気付く前に世の中に広めてしまおう。
私はリュカ様にだけ見える様に、小さくサムズアップして今後に期待する。
オジロン閣下を笑ってられるのも今の内だと思い知れ!

ユニSIDE END



 
 

 
後書き
歌のタイトルは『オジロン・マオ 恋予報』です。
昔よくあったデュエットソングのように、
前半は男性パート、後半は女性パートとして歌って下さい。


ある意味、この歌が先駆け的なものですね。
しかも結局の所、やっぱりリュカさん発信です。
まぁリュカ伝ですからね。
ある意味、諸悪の根源ですよ。

後日相談されたマリーは、
9割リュカの作詞曲を城内で何気なく歌っていたのでしょう。
そしてそれを待っていたとある人物によって、
メイド等を中心に世間に広まりました……とさ。
めでたしめでたし。 
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