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普通だった少年の憑依&転移転生物語

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【魔法先生ネギま!】編
  246 唯一の転生者


SIDE OTHER


――パチッ


夜半の【麻帆良学園女子中等部】は学園長室で小気味の良い音が響いている。懲りずに近右衛門がエヴァンジェリンと将棋を指していた。盤上の優劣は云わずもがな、いつぞやと同様エヴァンジェリンの優勢である。

これでも10年以上顔を合わせていた二人である。無聊(ぶりょう)を慰める為にひたすらに指す時もあるのだが、今日に()いては違う。

「……して、どうかな〝彼〟は?」

「〝ナギ以上の魔力容量(キャパシティ)〟、〝その気になれば〝あの〟筋肉馬鹿(ジャック・ラカン)へ迫れる〝練気〟〟〝タカミチ以上の“咸卦法”〟──〝現状〟でも間違いなく〝最強(ほんもの)クラス〟に身体半分くらいは突っ込んでいるな」

「ひょっ!?」

「やつが未だに隠している〝切り(ジョーカー)〟次第ではこの私も瞬殺される公算が高い」

「ひょひょっ!!?」

真がエヴァンジェリンの〝別荘〟に入ってから二百日弱。……そろそろ〝期日〟を迎える今日この頃。近右衛門が〝真君は〝使える〟ようになったのか?〟とエヴァンジェリンへ多少ぼかしながら()くと、真への予想以上すぎる高評価を聞き驚愕する。

〝吸血鬼はプライドが高い〟と云う定説があるが、エヴァンジェリンもその例に洩れないのを知っている近右衛門からしたら十分に驚くべきことであった。

だがしかし、近右衛門とてこの【麻帆良学園都市】の責任者であり──(やが)て近右衛門は落ち着きを取り戻す。

エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルが──600年を越える歳月を生きてきた、今も自分を将棋でフルボッコにしてくれている少女が人を誉めたのは確かに驚くべきことではあるが、その戦力をたった一回だが好きに使えるのだ。近右衛門としてはとりあえず僥倖(ぎょうこう)としておいた。

しかし気になるところがあるとすれば…

「……タカミチ君以上か…。しかし、そうなると儂の方が〝貰いすぎ〟になってしまうの」

「ふん…。私が思うにヤツみたいな人間はそこら辺の価値観には無頓着な人間で約束事はキチンと守るタイプだ。気楽に〝宝くじで100万当たった、ラッキー〟とでも思っておけ」

「そうは言うがの…」

「貴様とヤツで話は着いているのだ。まず約束や契約の(たぐ)いは反故(ほご)にせん。精々日数分はコキ使ってやるがいいさ」

エヴァンジェリンはそこに「それに恐らく、ヤツは〝自分のプライベートな時間〟と云うモノにはそう頓着していないだろうしな」と、どことなく同情の念を滲ませながら付け加える。

……実を云うと、そのエヴァンジェリンのその推論は(あなが)ち間違っていない。真は〝ロン・ウィーズリー〟であった【ハリー・ポッター】な世界線に居る時に“逆転時計(タイム・ターナー)”を幾らかくすねていたので、常人の何倍もの時間を自由に出来るのだから。

閑話休題。


――パチッ

「ぬっ…」


エヴァンジェリンの妙手に、近右衛門はここらで(かね)てより気になっていた事を()いてみる。真の話をしていて、ふと〝もしや〟と思い付いたのだ。

「ところで、エヴァ──真君も〝指せる〟のかの?」

「まぁな。500歳と云うのは伊達ではなかった。……ふん」

「ほう…」

エヴァンジェリンのどことなく不機嫌な態度から勝率について近右衛門は()かなかった。〝勘の働き〟と云うものが〝経験則のショートカット〟だとするのなら、その勘の良さは正に年の功であった。

……ちなみに真とエヴァンジェリンの〝全体的な〟勝敗割合は7:3くらいだったりする。やはり≪妖怪の賢者≫とも(うた)われている八雲紫と同等に指せるだけあって、将棋──だけではなく、おおよそボードゲームでは真の方に一日(いちじつ)の長があった。例外が有るとすればそれはエヴァンジェリンがクラブ活動の一環としてたしなんでいる囲碁くらいなものだろう。

閑話休題。

「それなら学業の方もできそうじゃの…」

「まあ、高卒認定くらいだったら片手間で取れるだろうな」

「ふむ…」

近右衛門は〝普段の真の処遇〟について頭を悩ませていたが、ぼんやりと定まってきた。当たり前の事だが〝教師〟と云う職業はしなければならない事が沢山ある。エヴァンジェリンのその言葉が正しいのなら、タカミチの苦労を僅かながらだが減らせるかもしれない、と近右衛門は考えた。

そして近右衛門は決意する。

SIDE END

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

SIDE ???

(……っ…。漸く──漸くだ…っ)

燃え盛る〝今生での〟故郷を小高い丘から睥睨(へいげい)しながら俺は脳内で浮かんだ、たった今流れこんで来た〝経験〟に、口の両端がつり上がりそうになるのを何とか我慢する。

漸く──漸く、〝原作主人公(ネギ・スプリングフィールド)〟の殺害に成功せしめ、主人公の座を〝原作主人公(ネギ・スプリングフィールド)〟から奪ってやれたのだ。俺の喜びも一入(ひとしお)だった。

俺の名前はシュン・スプリングフィールド。〝さわり〟を云えば、【魔法先生ネギま!】の主人公であるネギ・スプリングフィールドの兄として転生した転生者だ。前世での死因は交通事故で──詳しい話は割愛だ。今更あのクソみたいな人生の事なんか思い出したくもない。

〝転生〟と一言にいっても色々あるのだが、俺の場合は〝神様転生〟に当たる。〝神様転生〟とは云わずもがな〝神〟から〝転生特典(チート)〟を貰ってから転生することで、俺は運良く最高数である6個の〝特典〟を貰ってこの【魔法先生ネギま!】の世界に転生してきた。

〝特典〟は以下である。

1.〝転生先を〝他の転生者が居ない〟【魔法先生ネギま!】の世界とする〟

転生先を〝ネギま〟にしたのは好きなキャラクターが一番多いから。〝他の転生者が居ない〟と云う設定付けについては詳しく語るまでも無いだろう。


2.〝〝原作主人公(ネギ・スプリングフィールド)〟の一卵性双生児の兄として転生〟

〝それなら〝〝原作主人公(ネギ・スプリングフィールド)〟への転生〟でも良いのでは?〟と思うかも知れないが〝ネギ〟と呼ばれるのは嫌だった。1と纏めたかったが話はそう上手く出来ていなかった。


3.〝【NARUTO】の〝〝血継限界〟の忍術を除く〟忍術全部〟

出来れば〝血継限界〟の術も欲しかったが、俺を転生させた神はそう位が高い神ではなかったらしく、〝“写輪眼”でコピー出来る忍術〟に限られてしまったが、神から不興を買いたく無かったので承諾。

ちなみに消費されるエネルギーは魔力とかではなく〝チャクラ〟にするように言ってある。


4.〝十尾並みのチャクラ量〟

チャクラは〝身体エネルギー〟と〝精神エネルギー〟の融合エネルギーである。〝〝ネギま〟の世界でもそう通れば良いな〟と云う博打だ。忍術があれば十分チートだと云うこともあった。

……まぁ、結論から述べてしまえば俺の希望的観測通り、〝身体エネルギー〟は〝氣〟に──〝精神エネルギー〟は〝魔力〟と云う扱いになった。儲け儲け。


5.〝自分の能力を100%使いこなせる様に〟

忍術の場合は印や練り込むチャクラなど──使いたい能力の使い方が脳裏に浮かぶ様な感じにしてくれと神に頼んだ。特典に振り回されるなんて転生者の名折れである。


6.〝〝何度でも再利用〟出来る“空白の才”〟

知る人ぞ知る【うえきの法則】のマストアイテム。“空白の才”は蒲鉾の板みたいになっていて、細い面の一つに一つのボタンがあり、それを押せば書いた才能が消せる仕組みだ。

……ちなみにこの“空白の才”は、現存していなくて〝書き換え〟等は俺の脳内で行われる。


(これは絶対に見せられない記憶だな…)


――〝解放(エーミッタム)〟:“眠りの霧(ネブラ・ヒュプノーティカ)”


ヘルマン含む下級悪魔どもが今生での父親であるナギ・スプリングフィールドに鏖殺(おうさつ)されていくのを見ながら俺はそんな事を頭の端で考えつつ、埋め込んでおいた〝眠りの霧〟で自らを眠らせた。

……もちろん、〝“空白の才”を[魔法の才]から[演技の才]と書き換え〟るのも忘れない。

こうして〝原作〟に()ける〝ネギ・スプリングフィールドの故郷襲撃事件〟は、ネカネやアアーニャが死ぬこともなく〝俺の筋書き通り〟幕を下ろしたのであった。

そう、予想外な出来事は何も起きなかったのだ──数年後、魔法学校を卒業するまでは…。

SIDE END 
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