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戦国異伝供書

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第十二話 苦闘の中でその七

 攻められなかった、それで言うのだった。
「これよりな」
「では、ですか」
「一旦兵達を戻し休ませ」
「我等もですか」
「休むべきですか」
「そうじゃ、まだ武田や上杉があるのじゃ」
 この諸大名達がというのだ。
「だからな」
「ここはですか」
「兵を退かせ」
「次はですね」
「英気を養ったうえで」
「攻めますか」
「そうしますか」
「そうしようぞ」
 こう言ってだった、信長は兵を退かせた。本願寺とは一時的にしろ和議が成った。そして織田家はこの度の戦で新たにだった。
 加賀と紀伊を手に入れていた、岐阜に戻った信長は彼自身暫し休んでからこの二国の政のことを話した。
「加賀と紀伊じゃが」
「あの二国もですな」
「これより治めていく」
「そうしていきますな」
「うむ」
 その通りと答えるのだった。
「門徒達は降した、ならばな」
「これで、ですな」
「政もしやすい」
「だからですな」
「早速政に入りますか」
「そうする、そしてじゃ」
 信長はさらに話した。
「検地を行い堤や道を築いてじゃ」
「国を定め」
「無論田畑も街も整え」
「そして米以外のものもどんどん作らせ」
「国も民も豊かにしていきますな」
「そうする、加賀も紀伊も豊かになる」
 二国共、というのだ。
「だからな」
「是非ですな」
「二国共他の国と同じく治めていく」
「そうしますな」
「そうじゃ。近畿では紀伊だけは領国にしていなかったが」
 織田家は東海と近畿、四国の殆どの国を治めているがというのだ。そしてその国々の富がそのまま織田家の強さになっているのだ。
「しかしな」
「これを機にですな」
「紀伊も治め」
「そしてそのうえで」
「豊かにしていくのですな」
「うむ、そして加賀はな」
 信長はこの国についてはやや強い顔になりこう言った。
「やることがある」
「上杉家ですな」
「あの家に備える」
「そうせねばなりませんな」
「越前に北ノ庄城を築いておるが」
 相当に大きな城だ、柴田に縄張りをさせて城を築かせており彼を城主にすることが既に決められている。
「しかしな」
「加賀にもですな」
「あの国にも確かな城を築き」
「そうして上杉家への備えとしますか」
「金沢に築きたい」
 加賀の城はというのだ。
「そしてじゃ」
「金沢城で、ですな」
「出来れば上杉家を食い止める」
「そうしますか」
「うむ、しかし手取川から南を確かに治めたい」
 加賀の中でもというのだ。 
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